働く女性は正社員でも育児休業が取りにくく、半数以上の人が妊娠・出産を理由に職場を去っているという。さらに非正規社員の場合には、法律の定めや会社の「マタニティハラスメント」によって、さらに育休が取りにくくなっているのが現状だ。
10月15日、このような嫌がらせの被害者を支援するNPO団体「マタハラNet」が、非正規社員が育児休業を取りにくい状況を改善するよう厚生労働省に要望。記者会見の様子を各メディアが報じている。
あまりにも高すぎる「育休取得の3要件」
厚労省によると女性の育休取得率は正社員の43%に対し、非正規社員はわずか4%。マタハラNet代表理事の小酒部さやかさんは、企業が非正規に産休・育休の制度がないと思い込んでいる実態があると説明し、こう訴えた。
「女性活躍推進、1億総活躍と政府が掲げ出しております。非正規のようなボトムの問題に目を向けずして活躍はあり得ないのでは?」
育児介護休業法では、労働者が仕事と育児・介護を両立できるよう、雇用を継続したまま一定期間の休暇を与える事を義務付けている。しかし女性が育休を取るには、復帰などに関し、次の3つの要件が必要だ。
・同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
・子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること
・子の2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと
これをすべて満たさなければならないという規定が、非正規の育休取得に大きな障壁となっている。この要件を緩和するよう、マタハラNetではインターネットなどで集めた7000人以上の賛同署名とともに厚労省に訴え、賛同署名を募っている。
「それ考えると養える収入の男性とじゃないと子ども産めないし」
一般的にもこの3要件は知らなかった人は少なくなく、ネットには驚きの声もある。ツイッターには、職場の派遣社員の様子を踏まえて「これが少子化の原因じゃなくて何なのか」と指摘する人の投稿が見られた。
「派遣はだいたい妊娠したら契約切られるし、産後(に)職を求めるには保育園に入れる必要があるけど職が決まってないと保育園に入れられないし、それ考えると養える収入の男性とじゃないと子ども産めないし」
要するに男性が平均未満の収入で、女性が非正規の場合、子どもを産み育てる環境が極めて確保しにくいというのだ。「収入が少なくても非正規でも、愛があれば」という人もいるが、それは無責任というものだろう。
こうした声は、子どもが欲しくても最初から「無理だね」と諦めている人たちが大勢いる現実を感じさせる。もともと非正規は「会社の都合のいいように雇用されている労働者」という意識が労使ともにある。その中で諦めずに声をあげた人たちは、勇気があるし尊敬に値する。
厚労省は育休の制度見直しについて、年内にとりまとめる予定だ。能力があっても仕方なく非正規という人も多い中で、国も無視してはいられないはず。少子化を問題視し、「女性が輝く社会」や「1億総活躍社会」をうたうのであれば、国も企業もこの訴えに真摯に向き合ってもらいたいと願う。(ライター:okei)
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