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SCANDALがワールドツアーで見せた瞬間の輝きとはーーバンド初のドキュメンタリー映画を観る

2015年10月19日 15:11  リアルサウンド

リアルサウンド

SCANDAL『Documentary film「HELLO WORLD」』

 SCANDALが、初のワールドツアー海外8カ国10公演の模様をドキュメンタリー映画化した『Documentary film「HELLO WORLD」』を10月17日より全国の映画館で期間限定公開し、また、公開初日となる10月17日、ユナイテッド・シネマ豊洲で舞台挨拶付きの上映が行われた。


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 本作を観てまず驚いたことは、SCANDALの海外での活躍、人気ぶりだ。


 2016年の結成10周年を目前にするSCANDALが、日本国内でガールズロックバンドとしての地位を確立し、CDリリースでもライブでも多くの実績を残していることは周知の事実である。しかし、ここまで日本と変わらない、もしくは日本以上に熱狂的な多くの海外ファンがいるということを、筆者はこの作品を観るまで情報として知ってはいたものの実感として持つことができていなかった、と今回改めて思った。


 海外進出は、出演する会場さえ決まれば、どんなバンドでもできることではある。しかし、SCANDALには会場を満員にする、彼女たちを待ちわびるファンが各国に存在しているのだ。SCANDALはデビュー前から足繁く各地のライブイベントに出演し、海外での知名度を上げてきた。現地のファンや海外スタッフへのインタビューでは「80年代以降こんなガールズロックバンドはいなかった」「ポップとロックの音楽性がすごい」など、彼女たちの音楽性やバンドを評価する声が多く聞こえた。各国で堂々と披露される激しいライブパフォーマンスからもわかるように、彼女たちが“日本を代表するガールズバンド”と呼ばれるに相応しいバンドであることを実証する作品となっている。


 劇中では、ドキュメンタリータッチで彼女たちの素顔が多く映し出されており、それぞれのメンバーのキャラクターが色濃く描かれているのも本作の見どころのひとつ。あまり感情を表に出さないが、メンバーひとりひとりをよく理解し、バンドを引っ張るHARUNA(Vo.&Gt.)、自由奔放でマイペースだが、バンドの“今”を曲で表現する豊かな感受性を持つMAMI(Gt.&Vo.)、おっとりした性格で、それぞれのメンバーのテンションを感じ取りながら、その場の空気を穏やかにするTOMOMI(Ba.&Vo.)、メンバーの中で一番のしっかり者、はっきりと感情を表現し、問題提議をしていくRINA(Dr.&Vo.)というさまざまな個性が揃った4人だ。


 今回、メンバー同士のやりとりなどを多く映像に反映した経緯を、舞台挨拶のコメントでRINAは「今までだったらカットしているような部分も入れました。どういうことがあって、どういうライブになったかを見てもらいたかった」と語った。彼女たち4人の関係性のすべては音楽活動に直結しており、まさにSCANDALは、彼女たち4人の“人生”そのものなのであろう。ただの仲良しだけではない、お互いをリスペクトした上で成り立つ関係性であることも強く感じられる。


 また、今回のワールドツアーが彼女たちの関係をより強固なものにし、現在の楽曲づくりに影響を与えているという。映画主題歌として発表された「ちいさなほのお」はまさにワールドツアーを経て完成した新曲。そのときに感じた思いを鮮度の高いうちに歌詞にして、曲をつけるという方法で制作された。今後発表されるSCANDALの楽曲も、よりバンドの“今”を反映した内容になっていくのかもしれない。


 随所に、各メンバーが今後に対する思いを吐露する場面がある。国内外でこれだけ多くのファンに認められ、楽しくツアーをまわっている間、彼女たちは「いつまで続くかわからない」その瞬間瞬間に尊さを感じているようだった。そんな瞬間に対する尊さを炎のあかりに重ね合わせたのが新曲「ちいさなほのお」だ。「ちいさなほのお」は現在、楽曲をダウンロードできるカードが映画館のみで限定配布されている。彼女たちのターニングポイントとなった今回のワールドツアーとこの楽曲は、今後の彼女たちの活動を語る上で欠かせないものとなったことは間違いないだろう。(久蔵千恵)