イオンモール木更津敷地内にある木更津サーキットで、佐藤琢磨が主宰する復興地応援プロジェクト“With you Japan”のカートイベント「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE 2015」が行われ、多くの子供たちが集まり、カートの走行を満喫した。
「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」は、東日本大震災の復興支援として立ち上げられたイベント。これまでは、被災地の子供たちがカートを体験できるよう、主に東北地方を中心に開催されてきた。今回は初の試みとして、首都圏でのイベント開催が実現。その収益金の一部が、被災地の支援に充てられた。
この日の参加者は、今年の5月31日~9月30日の間に、木更津サーキットでタイムアタックをしたうち、ベスト50のタイムを記録した子供たち。普段からレーシングカートに取り組んでいる子供から、レースはしたことないという子供まで、小学1年生~6年生、そして男女問わず、非常に幅広い参加者を集めた。
佐藤琢磨がレーシングカートを始めたのは、19歳の頃。国内外問わず、トップドライバーとしては非常に遅いカートデビューである。しかしそれでも、自らの信念を貫き、そしてF1に辿り着き、インディで優勝を果たすまでになった。この日参加した子供たちはまだ小学生だ。
「僕が子供の頃にこういう企画があったら、毎日でも通っちゃうよね」
そう主催者自らが羨やむ、至極のイベントである。
午前中にはまず、佐藤琢磨自らが手を取り足を取り、カートへの乗り込み方からライン取りまで、直接教え込んだ。”琢磨ファン”の親御さんからすれば、願っても無い至福の時だっただろう。そして、50人の子供を相手に、佐藤琢磨はひとりひとり実に丁寧に教え、そして先導走行まで行った。さぞかし疲れているのでは……と思ったが「全然! 逆にパワーをもらってますよ」と琢磨。琢磨の教えを受けた子供たちは、ドライビングにさらに磨きをかけ、自らのラップタイムをどんどん更新していく。
昼休みには、千葉県限定のヒーロー”千葉ットマン”によるトライクそしてレーシングカートのデモ走行が行われ、こちらも注目を集めていた。さらに、佐藤琢磨が”レーシングドライバー”という夢を実現させた過程について話すトークショーや、被災地の子供たちに向けた手紙を書くワークショップも行われ、ワークショップでは琢磨も子供たちの輪の中に入り、一緒に文面を考える姿も見られた。
午後には、予選タイムアタックセッションが行われ、上位のタイムを記録した5人による決勝進出を目指し、子供たちが走行を行った。午前中に琢磨から教えられた走行術を活かし、各人がこれまでの自らのベストタイムを大きく更新するラップを実施。佐藤琢磨も驚く、ハイレベルの争いとなった。
そして迎えた決勝レース。すべてのドライバーが初体験というグリッドスタート方式に、それぞれが戸惑いを見せつつも、各車素晴らしいスタートを決める。そして、ポールポジションからスタートした井草璃空くんがそのまま逃げ切り、見事にトップチェッカーを受けた。2位には橋間隼くん、3位には今関涼介くんが入っている。
参加した全ての子供たちが、それぞれ成長を遂げたこの日のイベント。琢磨も非常に満足そうな顔だった。そして最後には、琢磨自身によるレーシングカートのデモ走行を披露。当初は駐車場内の特設コースだけの予定だったが、「自分たちが走ったコースを、レーシングカートで走ったらこうなる……というのを、感じて欲しかったんです」と言うように、本人の願いにより、カートコースでのデモ走行が実現。子供たちが35~38秒台で走ったコースを、20秒台で走ってみせ、場内を響めかせた。
「グリコさん、木更津サーキットさん、そして全てのスタッフのおかげでこんなに素晴らしいイベントができて、大満足です。最後のレースではプロさながらの走りを見せてくれたし、自分も感化されました。今後は可能性を模索しつつ、東北を支援していきたいと思います。そして、朝早くから夕方まで、最後までお付き合いいただいて、感謝しています」と、ほとんど休みもなく駆け回った琢磨は、疲れの表情も見せずに、この日のイベントを振り返った。
なお、この日参加した子供たちには、イベントに協賛するグリコのデモカー”グリコワゴン”が運んできたお菓子の詰め合わせが配られ、それぞれが小躍りするよう喜んでいた。
11月23日(月曜/祝日)には、SUGOのカートコースを使い、「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」が行われる。このイベントには、木更津でのイベント参加者の他、被災地の子供たちも参加する予定だ。