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キスマイ玉森裕太、『青春探偵ハルヤ』のアクションに見るストイックな役者魂

2015年10月18日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 若手ジャニーズタレントの中で、俳優としての飛躍がいま最も期待される人物のひとりが、Kis-My-Ft2の玉森裕太だろう。


 Kis-My-Ft2は、設定されたお題に対し、各メンバーが自ら考えた脚本で、自分が最も“カッコイイ”と思うシチュエーションを演出し、彼らのファンではない一般女性100人にその評価をランキングしてもらうという深夜バラエティ『キスマイBUSAIKU!?』(フジテレビ)で、人気に火が着き、いまや男女を問わず支持されているグループだ。そのジャニーズらしからぬ体当たりな企画は、ときに各メンバーの恥ずかしい一面さえも露わにしてしまうのだが、だからこそ視聴者は彼らの姿に笑いつつも、我が身を振り返って身悶え、共感し、心の中で密かに応援もしてきたのだ。


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 玉森裕太は、藤ヶ谷太輔や北山宏光とともに前列のイケメングループに属していて、『キスマイBUSAIKU!?』で披露する演技は比較的、高い評価を得てきた。イノセンスな性格ゆえか、あまり計算高い演出は得意ではないものの、とにかく女性の母性をくすぐるのが上手で、セクシーかつ紳士的に相手をリードする藤ヶ谷太輔と人気を二分する存在となっていった。しかしながら、少し天然なところもあるため、ときに理解しがたい不思議な演出を手がけて、一般女性から不評を買うこともしばしばあった。それはそれでチャーミングではあるのだが、各メンバーができるだけかっこよく100メートルを全力疾走するという企画では、非常にナヨナヨとした走りを披露し、一般女性から「前髪を気にして走る女子みたい」と評されるなど、苦笑を禁じ得ない部分もあった。


 そんな玉森が、10月15日から放送開始したドラマ『青春探偵ハルヤ~大人の悪を許さない!~』(読売テレビ)で、主役の浅木晴也を演じている。同作は、キャンパス内ではアイドル的な存在ではあるものの、貧乏でいつもアルバイトに明け暮れている大学生・浅木晴也が、バイト感覚で危険な探偵まがいの仕事を引き受けるという青春ミステリだ。これまで玉森は、『美男ですね』や『信長のシェフ』などで、そのイケメンぶりを発揮してきたが、本作もまた、彼のイケメンぶりを堪能できる作品といって良いだろう。普段はクールだが実は正義感に厚く、年の離れた妹を大事にする優しい性格の持ち主というキャラクターは、まさに女子の理想を絵に描いたようである。


 しかしながら、本作にはほかの出演作と比較して大きく異なる部分がある。玉森のアクションシーン、とりわけ“玉森ダッシュ”が、実に頻繁に確認できるのだ。そう、あの「前髪を気にして走る女子みたい」と評された走りだ。本人も『キスマイBUSAIKU!?』で、「よくドラマの撮影で『もっとかっこよく走ってください』って言われるんですよね」と、ネタにしていた部分である。ところが本作では、その走りはアクションスターのようにかっこいいとは言い難いものの、決して笑うほどのものではない。少なくとも、『キスマイBUSAIKU!?』のときよりは、ずっとたくましい印象だ。格闘シーンの身のさばきが、さすがはジャニーズと称えたくなる軽やかさのため、より運動神経が良く見えるのかもしれない。


 思えば玉森は、舞台『DREAM BOYS』に2004年から出演し続け、2013年からは座長として主演を務めるほどになった役者だ。滝沢秀明や亀梨和也といった先輩たちの背中を追い、ジャニー喜多川が描いたその物語を、厳しい稽古によって自らのものにしてきた。『DREAM BOYS 2014』では、ソリッドに鍛え上げた肉体を披露し、同じグループでダンスの名手として知られる千賀健永と、手に汗握るボクシングシーンを繰り広げた。そう、玉森はかわいいだけの役者では決してない。その涼しげな表情の裏にある、熱いストイズムこそが、彼の色気であり、真価ではないか。


「将来的には、どんな役でもこなせる人になりたいけど……でもそれってたぶん、計り知れない程の努力が必要だと思う。それこそ、天才じゃないオレは一生努力しないといけない」(『QLAP!』10月号より)


 11月21日に公開される『レインツリーの国』では、念願の映画初出演を果たす玉森裕太。甘くも切ない恋愛映画である同作が披露されるまで、まずは『青春探偵ハルヤ~大人の悪を許さない!~』で努力の人・玉森の磨きのかかったアクションシーンを堪能し、役者としての幅の広がりに期待しようではないか。(松下博夫)