2015年10月18日 11:41 弁護士ドットコム
ブラック企業は、最後までブラック企業――。20代半ばで不動産会社を退職したヒロコさんは、預金通帳を目にして、そう感じたそうだ。営業職として東京中を駆け回る日々を送っていたが、激務に心と身体が耐えられず、退職を決めた。
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「私が会社を辞めたのは、2月22日。毎月25日が締め日だったので、当然、1月26日から2月22日までの給料が、翌月の振込日に『日割り』で支払われると思っていました」
しかし、待てど暮らせど給料は振り込まれない。ヒロコさんは3日に一度は銀行で口座の残高をチェックしていたが、数字はぴくりとも動かなかった。
「結局、給料は1円も振り込まれませんでした。次の仕事が決まっていない状態で辞めたので、『少ない貯金でどうやって生きていけば・・・』と呆然としましたね。ただ、もう会社と関わりたくなくて、悔しかったけど請求はしませんでした」
給料の基準日の3日前に退職したというだけで、その月の給料を丸ごと支払わない会社のやり方は、違法ではないのだろうか。また、未払いの給料を会社に請求できるのだろうか。企業法務に詳しい高島秀行弁護士に聞いた。
「ヒロコさんの勤務していた会社では、給料の計算を毎月25日で締めて、翌月支払うことになっていたようですね。
ヒロコさんの場合、退職前月の1月26日から2月25日のうち、1月26日から2月22日までの期間、会社は従業員から労務の提供を受けています。したがって、その対価である給料を、少なくとも日割りで支払う義務があります。給料を支払わないことは違法です」
高島弁護士はこのように説明する。支払ってもらえなかった給料を会社に請求できるのだろうか?
「もちろん、従業員は会社に対し、雇用契約に基づき未払いの給料を請求することが可能です。
会社には、民事上、給料の支払義務があるだけではありません。給料を支払わないことは労働基準法上でも違法となり、30万円以下の罰金が科せられます」
未払いの給料を請求するには、どうすればいいのだろうか?
「労働基準監督署に相談することをおすすめします。労働基準監督署は、給料未払いの事実を確認して、支払わない場合は支払うよう行政指導します。それでも支払わない場合は、刑事告発をし、会社に罰金が科せられることとなります。
なお、未払い給料にも時効があり、2年と短いので、早めに請求することが必要となります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高島 秀行(たかしま・ひでゆき)弁護士
「ビジネス弁護士2011」(日経BP社)にも掲載され、「企業のための民暴撃退マニュアル」「訴えられたらどうする」「相続遺産分割する前に読む本」(以上、税務経理協会)等の著作がある。ブログ「資産を守り残す法律」を連載中。http://takashimalawoffice.blog.fc2.com/
事務所名:高島総合法律事務所
事務所URL:http://www.takashimalaw.com