2015年10月17日 12:02 弁護士ドットコム
秋の行楽シーズン。自前のカメラを持って観光地に出かけるという人も多いだろう。最近では、スマートフォンや小型カメラを先端につけて自分を撮影する「自撮り棒」を使っている人もよく見かける。しかし、撮影に夢中になって周囲の人にぶつかるなど、トラブルも起きている。
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JR西日本は9月中旬、管轄地域のすべての駅で、自撮り棒の使用を禁止した。その理由について、JR西日本は「自撮り棒を伸ばして使用されることにより、周りのお客さまのご迷惑になるだけでなく、列車との接触や架線に近づくことによる感電などの危険性があるため」としている。
ネット上では、こうした禁止の動きについて、「(自撮り棒の使用は)邪魔だし、滑稽だ」などとして、歓迎する声も多く見られるが、自撮り棒の使用は「法的な問題」になるのだろうか。さらに、法律でも規制すべきだろうか。福本洋一弁護士に聞いた。
「まず、自撮り棒を使用する際に、設備や周囲の人の物を壊したり、ケガをさせた場合、民事上は、不法行為にもとづく損害賠償責任を負う可能性があります。
また、仮に過失によるものであったとしても、人にケガをさせた場合、刑事上は、過失致傷罪の責任を問われるおそれもあります」
たとえば、JR西日本の「自撮り棒禁止」のルールを破った場合はどうなるのだろうか。
「JR西日本のように、施設管理者は、施設内における秩序を維持する目的で、利用者に対して、一定の行為を禁止することが可能です。自撮り棒の使用も禁止することができます。
このような管理者のルールに違反して、自撮り棒を使用した場合、管理権にもとづいて、退去させられるおそれがあります」
今回の「自撮り棒禁止」ルールをどう見るのだろうか。
「民間施設において、利用者に対して、施設内で一定の行為を禁止することについては、管理者に広く裁量が認められています。
また、公共施設においても、法律や条令によって、施設の規律や秩序を害する場合などに利用を拒否できるような制約が設けられていることが多くあります。自撮り棒の使用禁止については、管理者の判断に委ねても支障はないと思います」
では、さらに進んで、法律によって、「自撮り棒の使用」を規制するべきだろうか。
「危険行為や迷惑行為は多様なものが想定されます。ことさらに自撮り棒の使用だけを取り出して、刑事罰等の厳しい制裁を行わなければならない要請があるとまでは思われません。
施設管理者において、施設の利用状況にあった規制を行うのが適切でしょう」
福本弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
福本 洋一(ふくもと・よういち)弁護士
弁護士法人第一法律事務所パートナー弁護士、システム監査技術者。2002年同志社大学大学院修了、03年弁護士登録。IT関連・情報セキュリティ、企業秘密・個人情報・マイナンバー等の情報管理・漏洩対応等を取り扱っている。
事務所名:弁護士法人第一法律事務所
事務所URL:http://www.daiichi-law.jp/