映画『お父さんと伊藤さん』が、2016年に全国で公開される。
同作は、『第8回小説現代長編新人賞』を受賞した中澤日菜子の同名小説が原作。書店のアルバイト店員・彩と、離婚経験がある20歳年上の恋人・伊藤さんが同棲しているアパートに彩の父が転がり込んできたことから、3人の共同生活が始まるというあらすじだ。
定職に着かず気ままに暮らす34歳の彩を演じるのは上野樹里。給食センターでのアルバイトで生計を立てる伊藤さん役をリリー・フランキー、伊藤さんの存在に驚きながら、彩たちの家に住むと言い張る父役を藤竜也が演じる。メガホンを取ったのは、『ふがいない僕は空を見た』『四十九日のレシピ』『ロマンス』などの監督作で知られるタナダユキ。脚本は『四十九日のレシピ』『海のふた』などの黒沢久子が手掛けている。
■上野樹里のコメント
脚本を頂いた時、登場人物たちのセリフの掛け合いがとても面白く感じました。
34歳と54歳の20歳差の恋愛をしている二人のところに、実の父親が転がり込んでくる…という特殊な設定ですが、凄くリアリティを感じました。結婚はせずに、年上の男性と心地よい距離を保ちながら、付き合っている人が年々増えてきていたり、30代半ばで老いた父親の将来を意識する年齢に差し掛かってきている人も多い世の中で、共感できる作品だと思います。私が演じた彩というキャラクターは、キラキラした単純なヒロインではなく、自分の価値をそこまであげず、彼女なりに現実を見据えて生きている等身大の女性です。リリー・フランキーさん演じる伊藤さんとの互いに自立した恋人関係や、藤竜也さん演じるどこか憎めない愛らしいお父さんとのコミカルな掛け合いを楽しんでいただけたら嬉しいです。
■リリー・フランキーのコメント
私が演じた伊藤さんというキャラクターは50代にして定職につかず、20歳も年の離れた彼女がいる、という設定ですが、私の周りでは伊藤さんよりダメな人間はたくさんいますね(笑)。僕も同じような年齢ですが、ちゃんとしていない50代が若い人と付き合うとまわりはどよめくんだと、今回演じてみて改めて身につまされる気がしました(笑)。
すごくユーモアがある作品になりそうで楽しみですし、理想的な存在になれない人間を描き出すのがタナダユキ監督の魅力だと思います。父、娘、彼氏、彼女..それぞれ周囲が望んでいる存在になり切れないキャラクターたちの姿は、どなたにとっても遠くない存在として、感情移入して楽しんで頂けると思います。
■藤竜也のコメント
今回演じたお父さんというキャラクターは、すぐキレるし、言いたい放題の頑固親父ですが、決して嫌な人物として描かれていない。子供の前では偉そうに強がるけれど、一歩外に出れば小さく背中を丸めて歩く。すごく人間らしい人物ですね。監督は細かな言葉のニュアンスをとても大事に演出をしてくれるので完成が楽しみです。上野樹里さんはとても感受性とこだわりが強く、一生懸命な方で、リリー・フランキーさんはすごくチャーミングなので、今回の役どころは彼のバックグラウンドが効いてきそうですね。それぞれのキャラクターがとても魅力的で、タナダ作品ならではの映画になると思うので、期待していてください。
■タナダユキ監督のコメント
原作を読んだ時、主人公・彩の「人の好き嫌い(おもに嫌い)が激しい」という自己分析に、この人は信用できるなと思いました(笑)。上野さん演じる彩という女性は決して立派な人間ではありません。親との関係も良好だったわけではない。けれど、居場所を無くし老いていく父に対して、空回りながらも彼女なりに生真面目に向き合おうとする、そんな彩という人物を私は尊敬しています。どの役者さんもみなさん真摯に役に向き合ってくださり、今回のスタッフ、キャストとともに、映画という、決して正解のない中での正解を探す作業は、とても贅沢な時間だったと思います。
上野樹里さん、リリー・フランキーさん、藤竜也さん、この3人がひとつの画面にいるだけで、すごく魅力的で面白いものになると思いますので、頑張って完成へ導きたいと思います。