2015年10月15日 19:41 弁護士ドットコム
わいせつ物公然陳列罪などで起訴されている芸術家「ろくでなし子」こと五十嵐恵被告人(43)の第4回公判が10月15日、東京地裁(田辺三保子裁判長)で開かれ、弁護側の冒頭陳述が行われた。弁護側は冒頭陳述で、これら作品やデータが「わいせつではない」などとして、改めて無罪を主張した。
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五十嵐被告人は、自らの女性器をスキャンして作った3Dプリンタ用データを不特定多数に送信したり、女性器をかたどった作品「デコまん」を展示をしたとして、わいせつ電磁的記録送信やわいせつ物公然陳列などの罪で逮捕・起訴された。
弁護団の山口貴士弁護士は、問題とされた作品やデータについて、「好色的興味に訴えるために作ったものではないし、性欲を刺激することもない」と強調。性行為や性愛的といった要素、いわゆる「エロ」の要素が一切ないものだとした。
弁護側の説明によると、問題とされた3つの作品はいずれも「デコまん」という名で、女性器をかたどって作ってはいるものの、実際の女性器とはかけ離れていているという。
1つは、全体が濃い水色で、回りにファーが付いている。もう1つは、白地に銀色の縞模様で「MAX」という文字と、黄色いスマイルマークが付いている。残る1つは、濃いチョコレート色に星形のデコレーションを施したものだという。
山口弁護士は「このような形状・色彩の女性器はなく、専門家も認めるアートであり、性欲を刺激することはない」とした。
また、3Dデータについても、創作活動(アートプロジェクト)の一環として作られたもので、「データをパソコン画面に映したものや、それを出力した物体には、皮膚の質感がなく、精密さや生々しさがない。一見して女性器にすら見えない」と主張した。
これら作品・データに接する人は芸術的な観点から接するため、性的刺激は緩和されるはずだとした。
山口弁護士は、最高裁の判例を引用しつつ、「何がわいせつか」は、社会通念によって決まるとしたうえで、次のような主張を展開した。
まず、現在、税関職員が使っているガイドラインでは、「人間の肌の色以外の色彩等を施したもの」や「現実感に欠けるもの」は、わいせつ物として取り扱われていないという。
また、今は、セックスの場面を写したアダルトビデオが無修正作品を除いて普通に販売されているほか、男性が自慰行為に使うための「オナホール」の中には、実際の女性器に極めて近い形状のものがあるし、男性器に極めて近い形状の「バイブレーター」もあるが、それらはもはや性秩序や性風俗に対する脅威とはみなされず、社会的に許容されていると強調した。
これらに比べ、ろくでなし子作品やデータは、性行為や性愛といった文脈から切り離されたもので、性欲を刺激することはなく、「わいせつ」ではないと、山口弁護士は訴えた。
さらに弁護団は、ろくでなし子作品は、国内外の評論家らからフェミニズムアートとして受け止められており、それらを刑法175条で取り締まれば、表現の自由の不当な制約になり、憲法に反するなどとして、「被告人は無罪だ」と改めて主張した。
次回の第5回公判は、11月2日に予定されている。
(弁護士ドットコムニュース)