今年6月に文部科学省が発表した調査によると、就活生の52.6%が「インターンシップに参加した」と答えています。17年卒の就活生も同様に、半数以上が経験することでしょう。
日本におけるインターンシップのタテマエは、経団連の指針にある「産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するために実施するもの」であって、
「その実施にあたっては、採用選考活動(広報活動・選考活動)とは一切関係ないことを明確にして行うこととする」
とされています。しかし実態は、明らかに採用活動の一環であることはもはや周知の事実です。(文:河合浩司)
よほど余裕のある会社でなければタダで「人材育成」なんてできない
わざわざここで書く必要すらないことかもしれませんが、企業は早い段階から学生との接点を持ちたくてインターンシップを実施しています。就業体験よりも、会社説明会の母集団形成を図るのが目的になっているのです。
「いやいや、インターンは指針に基づいて人材育成に専念するべきだ」
そういう人もいるかもしれませんが、よっぽど余裕のある会社でなければそんなことはできません。人件費というコストを使って教育サービスを無償提供し続けていては、会社が傾いてしまいます。「タダで教育機会を与えろ」というのは土台無理な話なのです。
結果的に数時間や1日で終わるインターンシップという名の「会社説明会」が乱立しています。これを見て「こんなもんインターンじゃない」と目くじらを立てる人もいますが、むしろこれは就活生にとって必要なプロセスだと私は思っています。
就活を始めた当初は、自分がどんな仕事に興味関心があるのか、適性があるのかなど何も分かっていない人が大半でしょう。それらを考えるヒントを得るために、企業との接点を持つこと自体が学びになるはずです。
社会人と早めに知り合え。「あの業界は危ない」くらいは知っている
就活を始める学生に大事なのは、いろいろな社会人を知ることです。「社会人と話したことは、親とバイト先の社員くらいしかない」という学生も少なくありません。世間知らずのまま就職先が決まってしまって、不本意な就職になってしまう人も少なくないでしょう。
社会人なら「○○業界は基本的に危ない」と当たり前に知っていることでも、学生は知らないことも多々あります。こればかりは致し方ないことで、実際に社会人になってみないと、分からないことはあるものです。
ただ、学生が「社会人と出会おう」と思っても、異業種交流会や朝会などに参加するくらいしか思いつかないでしょう。やろうと思えばフェイスブックなどのSNSを使って知り合うこともできるでしょうが、なかなかハードルが高いものです。
「いろいろな企業や仕事・社会人を知りたい」という学生と「就活生と早い段階から接点を持ちたい」という企業の双方の利害が一致するわけですから、学生も思う存分に広報目的のインターンを活用すればいいのです。
禁止されているのは採用であって「学生の就職活動」ではない
インターンシップが終わってからも、学生さんから個人的に社会人とつながりを持つことは、何の問題もありません。経団連の倫理憲章には、あくまで「企業の採用活動」の記載があるだけです。「学生の就職活動」を禁止する内容は一切ありません。
学生から企業へ働きかける動きを規制するものは、何一つないわけですから、自由に接点を作り、企業や仕事のことを知っていけばいいのです。大人たちの実態を伴わないタテマエで若人を惑わすよりも、態度を明らかにした方がお互いのためになると思うのは私だけでしょうか。
あわせてよみたい:休日は「ブラック企業の面接」でストレス発散?