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メディアミックス映画の最終形態!? 『図書館戦争 THE LAST MISSION』が初登場1位

2015年10月14日 19:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『図書館戦争 THE LAST MISSION』公式サイト

 3連休となった先週末の動員ランキングで初登場1位となったのは、岡田准一主演の『図書館戦争 THE LAST MISSION』。土日2日間で動員24万6395人、興収3億2946万2700円という成績は、2年半前の前作『図書館戦争』から動員で150.1%、興収で152.0%と大幅にアップしたもの。続編作品としては理想的な展開となった。


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 有川浩原作の『図書館戦争』は、今から約10年前の2006年2月にメディアワークス(アスキーと合併した後、現在はKADOKAWA傘下のブランドカンパニー)から最初のシリーズが刊行された、いわゆる「ラノベ」作品。


 その後、第2巻『図書館内乱』作中のエピソードを発展させたスピンオフとして、有川浩自身による恋愛小説『レインツリーの国』が新潮社から刊行。これは2007年にNHK FMでラジオドラマ化され、今年11月にはショーゲート配給、Kis-My-Ft2の玉森裕太、西内まりや主演で、同名の映画化作品の公開も控えている。


 2008年に再びスピンオフ小説『別冊 図書館戦争』を刊行(全2巻)。それと並行して、2007年から白泉社の少女漫画雑誌『LaLa』でコミック版『図書館戦争 LOVE&WAR』の連載がスタート。コミック版は2014年に一回完結(単行本全15巻)した後、現在も『図書館戦争 LOVE&WAR 別冊編』として連載が続いている。また、2007年にはそれとは別のスピンオフ・コミック作品『図書館戦争 SPITFIRE!』の連載が『月刊コミック電撃大王』で開始されたものの、こちらは中断された(単行本全1巻)。


 まだまだ続きますよ。


 2008年にはフジテレビ系の深夜アニメ、ノイタミナ枠で『図書館戦争』としてテレビアニメ化(全12話)。そして、2012年にはテレビアニメとほぼ同じスタッフで角川映画配給の劇場アニメとして『図書館戦争 革命のつばさ』が公開。2008年、2012年にはそれぞれ連動してWEBラジオ『関東図書基地 広報課』も配信された。


 そしてようやくです。


 本作の前作となる実写映画版『図書館戦争』が東宝の配給で公開されたのが2013年4月。今回の続編『図書館戦争 THE LAST MISSION』が公開される直前の10月5日には、同時期に製作されていたテレビドラマ版『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』がTBS系で放送された。


 ラノベ、一般小説、コミック、ラジオドラマ、WEBラジオ、アニメ映画、テレビドラマ、実写映画。およそ考えられる限りの多様なメディアと、複数の同業会社を横断して、約10年にわたってコスりにコスられ続けてきた『図書館戦争』というコンテンツ。今回の前作初動を大きく上回るヒットの直接的な要因としては、直前にテレビで放送された前作、及び完全な新作となったテレビドラマ版の宣伝効果や、2年前の前作と比較してのキャストの知名度アップ(福士蒼汰ほか)や新キャスト(松坂桃李ほか)の効果なども考えられるが、思い出すのは80年代角川映画の大規模なメディアミックスのこと(『図書館戦争』の文庫の現在の版元はKADOKAWAだし)。2015年においても、さらに規模を拡大して当時と同じような戦略が可能だと証明してみせたのが『図書館戦争』と言っていいのではないだろうか。近年の日本のメディアミックス映画のお約束のように今作のタイトルにも「LAST」の文字が躍っているが、今回のヒットを受けて、まだまだそう簡単には終わりそうにない気配である。


先週末のランキングで他に注目すべきは、初登場3位の『マイ・インターン』。土日2日間で動員13万771人、興収1億7808万2900円という成績はハリウッドのラブコメ作品としては大健闘。このところ大人向きの作品が手薄だったので、その公開時期も功を奏したか。また、公開前に監督と映画会社のトラブルが明るみに出るなどして本国アメリカで批評面でも興行面でも大惨敗してしまった『ファンタスティック・フォー』(先週末6位)は、639スクリーンで公開されたにもかかわらず土日2日間で興収1億にも満たず、同じ(?)SF作品である172スクリーンで公開された大川隆法製作総指揮の『UFO学園の秘密』(先週末5位)の後塵を拝してしまった。(宇野維正)