2015年10月14日 06:01 弁護士ドットコム
(弁護士ドットコムの法律相談コーナー「みんなの法律相談」に寄せられた相談をもとに編集部が作成しました)
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テレビやネットで「ゴミ屋敷」を見れば、その隣家やご近所さんたちに同情してしまうものです。でも、本当に大変なのは「異臭」のようです。犬のフンまで溜め込んだ隣家に、どう対抗できるのか、藤田 城治弁護士に聞きました。
Q. どうしたら片付けてもらえるのでしょうか?
隣家がすさまじいゴミ屋敷です。
生ゴミ、カセットコンロなどの不燃ゴミ、ペットのフンなども溜め込んでいるので、雨が降ったあとは、すさまじい異臭がしています。
フンは、5匹分にもなるので、けっこうな量です・・・。隣人に文句を言っても、まったく改めてくれません。
相手が掃除が苦手なら、私が片付けてあげても良いと思っています。 私は何ができるのでしょうか?
A. 第三者には「ゴミ」でも勝手に捨てることはできません
第三者からみて、明らかに「ゴミ」であったとしても、法的には、隣家の住民に「所有権」がある「財物」となります。
第三者にとっては「ゴミ」であっても、勝手に処分したり、隣家の敷地に無断で立ち入った場合には、相談者側が法的な責任を追及される恐れがあり、注意が必要です。
隣人の「財物」である以上、撤去を求めても応じてくれない場合は、きちんとした手続を踏む必要があります。
まず、自分自身で対応する場合には、裁判所の民事調停のほか、都道府県で実施している「公害審査会」での調停・あっせんを利用することが可能です。そのほか、悪臭を理由にした損害賠償請求をすることも考えられるでしょう。
また、ご相談者が自宅の土地・建物の所有者である場合、所有権に基づく「妨害の予防」を求める訴えによって、可燃物(カセットボンベ)の撤去を求めることも考えられます。隣家が火災を起こすことによって、土地・建物の所有権が「妨害」されることを予防するための請求です。
悪臭については、単に「臭い」というだけではなく、受忍限度を超える必要がありますし、隣家の「ゴミ」によって危険が及ぶことの証明が必要で、なかなかハードルが高いです。
勝訴した場合には、業者に依頼して「ゴミ」を撤去し、その費用を隣家に請求する方法もあります。しかし、「ゴミ屋敷」の所有者の場合、なかなか、お金を払えない可能性もあるでしょう。
現実的な選択肢としては、行政に対応を求めることです。しかし、行政が行うにせよ、「所有権」の問題があります。持ち主に対して、自発的に撤去するよう説得することから始めることになります。
「ゴミ屋敷」問題の難しいところは、法的な手続によって、ゴミが撤去されたとしても、家主の心のケアや生活状況の見直しをしないと、再び繰り返されてしまうところです。民間の福祉団体と市が連携して、家主のケアも含めたゴミの片付けを実施している例もあり、こういった動きが広まることが期待されます。
【取材協力弁護士】
藤田 城治(ふじた・じょうじ)弁護士
第二東京弁護士会・環境保全委員会、関東弁護士会連合会・環境保全委員会委員。
個人・企業を対象とした各種民事・刑事事件を扱っているほか、事務所の弁護士各自が野生動物・自然環境の保護にも取り組み、イリオモテヤマネコ等の保護活動を行っている認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金(http://www.jtef.jp/)をサポートしている。
事務所名:森の風法律事務所
事務所URL:http://morinokaze-law-office.com/index.html