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「女性が教育を受ければ、乳幼児死亡率が下げられる」池上彰さんが途上国の現状を報告

2015年10月13日 12:31  弁護士ドットコム

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10月11日は国連が定めた「国際ガールズデー」。「女の子だから」という理由で、学校に通えないなど不利益を受けている途上国の少女を支援する目的で、2012年に制定された。この日、東京・渋谷の国連大学ビルでは「羽ばたけ!世界の女の子」と題されたシンポジウム(主催:公益財団法人プラン・ジャパン)が開かれた。


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シンポジウムでは、2014年にノーベル平和賞を受賞したパキスタン生まれの女性活動家、マララ・ユスフザイさん(18歳)の半生を描いたドキュメンタリー映画の特別試写が行われたあと、ジャーナリストの池上彰さんらによるトークセッションが開かれた。池上さんは「親が読み書きできるようになると、それを子どもにも伝えようと思う。そこから良い循環が始まる」と、教育の大切さを強調していた。



●「電気料金の請求書が読めるようになった」


パキスタン生まれのマララ・ユスフザイさんは、女子教育を禁止するタリバン政権を批判したために、15歳の時に銃撃され、瀕死の重傷を負った。パキスタンの教育に関する話題として、池上さんは、2014年にパキスタンで、学校に行けない女性たちのための教育機関を取材した際の経験を話した。



「女性たちが読み書きができるようになって、最初に何が起きたか、というと、電気料金の請求書の内容が読めるようになった。それまでは、近所の読み書きができる人の所に行って、いくら払えばいいのか教えてもらっていたんです。



読み書きできるようになると『家計をどうすればいいのか』が分かり、それぞれの家の生活が変わってくることを実感する。その変化を近所の人に話すことで噂が広まり、『娘を通わせるといいことがあるらしい』というので、おそるおそる通わせるようになっていくんです」



女の子が教育を受けることのメリットとして、池上さんは「乳幼児死亡率を下げられる」点も指摘した。途上国の乳幼児死亡率の高さの背景には「読み書きができないから、衛生観念が身に付かない」という事情があるからだ。



「たとえば、先進国から粉ミルクをもらっても、その缶に書いてある文字が読めないと、粉ミルクを溶かすために水たまりの水を使ってしまう。そうすると、子どもが下痢を起こして死んでしまうということが、実際に起きる」



女性たちが初歩的な小学校レベルの教育を受けることで、衛生観念が身に付き、子どもたちが無事に育つようになると、池上さんは話す。さらに、親が読み書きできるようになることで、それを子どもにも伝えようとし、そこから良い循環が始まるという。



●日本人は「英語で語るべきもの」を持っていない


会場となった国連大学ビルのウ・タントホールには、約300人が集まり、10代、20代の若者の姿も多く見られた。池上さんは、若者たちに向けて「日本国内で生きづらさを感じていたり、いろいろな悩みを持っている人が海外に行くと、自分が必要とされていることがわかる」とメッセージを伝えた。



「ダライラマにインタビューしたとき、『日本の若者はいろいろな悩みを持っていたり、どうやって生きていけばいいのか分からず自殺してしまう人もいる。一言メッセージをお願いします』と質問したところ、『世界には困っている人がいるから、そこに助けに行けばいいじゃないか。そうすれば、自分が世界で必要とされていることが分かる』と言われました。



海外に行くことで、私たちがいかに恵まれた生活をしていることに気づいていないか、が分かる。そこで初めて、自分がどのような生き方をすればいいのか分かるのではないか。『とりあえず見に行く』ことが大切。短期間でも全然かまわない」



また、日本人が国際人になるためには「英語で語るべきものを持つこと」が大事だと話す。



「国際会議などの立食パーティーでも、日本人は語るべきことを持っていない。そして、ついつい昼間の会議の話や仕事の話を持ち出して嫌がられて、相手から『美術とかオペラの話をしようよ』と言われてしまう。学生時代、受験勉強しかしていなかったがために、語るべきことを持っておらず、絶句するということがよく起きるのではないでしょうか。



英語がしゃべれないのではなく、英語で語るべきものをもっていない。若い人にはぜひ、今のうちから、英語で語るべきことを身につけてほしいと思います」



池上さんはこう語っていた。



シンポジウムで試写されたマララ・ユスフザイさんのドキュメンタリー映画「わたしはマララ」は、12月11日から全国で順次公開される。


(弁護士ドットコムニュース)