赤堀雅秋監督の新作映画『葛城事件』が2016年に公開される。
赤堀が作・演出を手掛ける劇団「THE SHAMPOO HAT」が2013年に上演した同名舞台をもとにした同作は、8人を殺傷する無差別殺人事件を起こした21歳の男・葛城稔とその家族たちを描いた作品。赤堀にとっては2012年公開の映画『その夜の侍』に続く、2作目の監督作品となる。
息子の稔が死刑囚となったことで自責の念に苛まれ、「事件を起こす前に自らの手で息子の息の根を止めるべきだったのか」とまで考える父・葛城清役には三浦友和。徐々に精神を病んでいく稔の母・伸子役に南果歩、稔の兄・保役には舞台版で稔役を演じた新井浩文、稔役にはオーディションで選ばれた若葉竜也がキャスティングされている。死刑制度反対の立場から稔と獄中結婚をする女・星野役のキャストは後日発表される。
■三浦友和のコメント
最初に脚本を読んでみて素直に面白いなと、こういう作品はなかなかないと思いますし、出演している全員のキャラクターの個性がはっきりとしていて、それぞれがみんな何かを抱えていて、そういうところが一番面白かったです。撮影期間も短く、時間のないなかで演じていくには相当キツイ仕事になるのではないかと、少し躊躇はしてしまいましたが、これをやらないと後悔することになるし、この役を他の人が演じるということを想像したくなかったので、やらせていただきました。
演じてみてすごく難しかったです。監督の頭の中ではイメージが明確に固まっていました。そこに近づけなければいけなかったですし、そのイメージに到達するまで時間がかかりました。 自分としては悔いが残るシーンがいくつかあったりはしますが、監督がOKを出してくれたので、そこを信じたいなと今は思います。
(清という人物は)ありがちな父親像ですね、特別な人格でもない。ちょっと間違えるとこういうかたちになるだろうし、少しだけ歯車が狂ってしまった、そういう家庭です。
親ってどうやって子供に対して愛情を注いだら正解なのかは、永遠のテーマでしょうね。
赤堀監督はものすごく想いが強いです。貪欲ですし、現場でも何度もテイクを重ねて、後で「何回もすみません」と謝りに来てくれましたが、現場で躊躇しない監督の姿が好きでした。
それに答えられたかどうかはわかりませんが、素敵な監督でした。
■南果歩のコメント
葛城家のなかで過ごす時間は、息をするのも辛くなる場面が沢山ありました。“家族”という、一番身近な人間関係をどう作っていくかという部分では、家族の危うさや、恐ろしさ、やるせなさ、そしてそこにある人肌を感じながら、「身近にいる家族とは一体何なのか」ということをずっと考え続けた時間でした。
演じたどのシーンも印象的で、全て難しかったです。赤堀監督の、人間の心を単色で表現することはできないと言う誠実で挑戦的な演出は、今後の私の仕事の中でもずっと生き続けることになると思います。この役を演じることができて、現場に呼んで頂いて感謝しています。
■新井浩文のコメント
舞台とは別の役をもらって演じる。俳優っぽいなーと思ってました。
■若葉竜也のコメント
こんなにも不器用で、目を背けたくなるほど生々しく、笑ってしまうほどカッコ悪い人間達。圧倒的な脚本の面白さに興奮しました。それと同時に《葛城稔という人間を、理解できるんだろうか》とプレッシャーと不安を感じました。何度も何度も何度も監督に『違う。そうじゃない。』『まだ頭で考えてる』と言われながら自分を徹底的に崩壊させて1カット1カット挑みました。
『OK!』と監督が声をあげるテイクは必ず、《記憶がすっ飛んでいる》という不思議体験もしました。
魂の篭った映画になっています。是非たくさんの方々に観ていただきたい作品です。
■赤堀雅秋監督のコメント
この物語は、対岸の火事ではなく、我々の地続きにある。ある家族の話。無様に、愚かに、それでも必死に生きる人間の姿。観客の心を強く揺さぶる作品になるという自負があります。
極めておこがましい言い草ですが、これは三浦友和さんの代表作になると、僕自身は勝手にそう思ってます。強くそう思ってます。