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個人宅の駐車場を貸し出す新サービスも 日本に「シェアリング・エコノミー」の波が来た

2015年10月13日 06:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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いま米国では、個人や法人が所有しているものを一時的に別の人に貸し出す(シェアする)ことによってお金を得る「シェアリング・エコノミー」というビジネスが急速に伸張しているが、その波が日本にも及び始めている。

個人宅を観光客に貸し出すAirbnbや、自分がマイカーを運転してお客を目的地まで運ぶUberなど、既存の業界を脅かすサービスも出ている。このような形態のビジネスの可能性は、世の中にまだまだ多く潜んでいるに違いない。

10月6日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、「アキッパ」という空き駐車場の仲介システムを紹介していた。阪神甲子園球場まで徒歩5分の場所に暮らすKさんは、玄関先の空きスペースを1台分の駐車場として貸し出している。試合がある日には常に需要があり、月2~3万円の小遣い稼ぎになるとのことだ。

来客が駐車しきれない丸亀製麺が個人宅を利用

アキッパでは、駐車利用者はインターネットで10日前から予約でき、値段もコインパーキングの約半額。利用者が払う金額の6割がレンタル料としてKさんに入るしくみだ。運営するのは、2014年4月に創業した大阪市のベンチャー企業だ。

現在、駐車スペースは全国に3400か所、利用者数は3万4000人にものぼる。高齢で運転しなくなった人が車を手放し、駐車スペースの空きが増えているのもスペース増加の一因だ。社長の金谷元気さん(30歳)は「今までデットスペースは、何か置くか空いたままにしておくしかなかったのが、多い人では月4~5万円稼ぐ人も出ている」と話す。

アキッパが契約しているスペースは、これまで個人ばかりだったが、今年9月に初めて法人契約を結んだ。讃岐うどんチェーンの丸亀製麺を運営するトリドールだ。東京・江戸川区の丸亀製麺一之江店では、週末に駐車待ちの車が長蛇の列をつくる。店内は空いているのに、ピーク時の客をすべて迎えられないのが悩みの種だった。

トリドールは、店舗の駐車場探しを「店から徒歩2分圏内で10台分」とアキッパに依頼。渋滞解消の大役を任された駐車場開拓チームの菅田安利沙さん(24歳)は、朝から店舗近くの住宅地を回った。

冬の閑散期の島を丸ごと借りるサービスも

しかしスペース確保は容易ではない。空いていると思っても出勤に使っていると言われたり、インターホン越しに断られたりを繰り返す。菅田さんは「こうやって地道に集めていかないと。『縁の下の力持ち』という言葉もあるので、頑張らないと」と交渉を続け、夜の9時まで25軒訪ね歩いたが、契約は1件も取れず。

4日目にして広い駐車スペースのあるお宅と月極駐車場のオーナーを口説き、7台分を確保。契約者は「機械も付けずに空きスペースを使える。こちらとしても理想的なプチビジネス」と満足そうだ。菅田さんは自ら作った案内用の地図を駐車場係員に渡し、客の誘導を確認。渋滞が解消された店は、いつもより売り上げがアップしたという。

番組ではこのほか、様々なスペースを使われていない時間帯に貸し出す「スペースマーケット」を紹介した。寺の敷地内にある古民家をベンチャー企業の会議用に貸し出した実績がある。夏の観光スポットである神奈川・横須賀の猿島を冬の閑散期に丸ごと借りることもできた。ろう人形館やプラネタリウムは現在交渉中とのこと。

ネットビジネスは一見目新しくはあるが、誰かの代わりに面倒なことを引き受けるという、昔からある商売の一面をもっているのだと感じた。なかでも1軒1軒訪ね歩き丁寧に説明を繰り返していたアキッパの菅田さんの誠実な働きぶりが印象的だった。(ライター:okei)

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