ロシアGPを9位と10位でフィニッシュしたマクラーレン・ホンダ。しかしレース後、フェルナンド・アロンソが「16コーナーをカットしていた」として5秒加算ペナルティを受けて11位に降格、ハンガリーGPに続くダブル入賞はならなかった。
だが、レース後の新井康久ホンダF1総責任者のコメントには、現時点でやれることはやったという達成感のようなものを感じた。
「セーフティカーが2回入ってレースが荒れた。運に恵まれた部分もあるが、ここは我々のパワーユニットにとって難しいサーキットだったのでポイントを取れたことは素直に良かったと思う」
確かにレース中の最速タイムはジェンソン・バトンが13番手、アロンソ15番手と決して速くない。しかし、レースでは単純にラップタイムを速くすることに意味はなく、パワーユニットの設定を相手とバトルする状況を考えてデプロイするモードに切り替えていることも関係している。予選後、新井総責任者はレースに向けて、こう話していた。
「デプロイは予選ではタイム感度が重要ですが、レースではオーバーテイクされないというのが重要になってくるので、デプロイの設定も全然変わってくる。レースではラップタイムを犠牲にしても、抜かれない設定にしないと勝負にならない。そのためには、どこでデプロイを使うかをある程度ドライバーの判断に任せる部分を残しておかないといけない」
つまり、レースではオーバーテイクされそうもないコーナーの立ち上がりなどでデプロイの使用を抑えて、そのぶんストレートで使うというようなことだ。それがロシアGPでは、うまく機能していた。一例が、日本GPではストレートで簡単にオーバーテイクされたマックス・フェルスタッペンをレース終盤アロンソが抑えていたことだ。マシンの仕様は、ほとんど何も変わっていない。変わったのはデプロイの設定だけ。もちろん、ドライバーの冷静な判断によるところも大きい。
「ふたりともレース終盤はタイヤがとても厳しい状況だったと思いますが、無線が壊れてしまったのかと思うくらい、何も言わずにレースに集中していました。本当にレース運びが上手です」
そして最後に、こう語った。「走行時間が短いなか、ある程度きちんとまとめられたとは思う。だからといって我々の課題が克服できたわけではなく、課題を理解した上で、できるだけサーキットに合わせることができた。でも、きちんと2台そろって完走したことはチーム全体にとって励みになったし、いい方向へつながると思う」
バトンの9位で得た、2ポイント。チームとして、小さいけれど、確実に前進していることを感じたロシアGPだった。
(尾張正博)