途上国など諸外国の青年を受け入れ、働きながら技能を身に付けてもらう「外国人技能実習制度」。厚生労働省によると、2014年末で全国には16万7641人の外国人技能実習生がいる。
ただし彼らの労働環境は、決して整っているとはいえないようだ。9月30日に公表された資料によると、2014年は全国の実習実施機関のうち3918事業場で労働基準監督署の監督指導を実施したが、このうち76.0%にあたる2977事業場で法令違反が認められたという。
月額5万円で契約締結し、それすら支払わない会社も
違反内容で最多だったのは「違法な時間外労働など労働時間関係」で25.8%。ある会社では日本人労働者には36協定どおり時間外労働の上限を月80時間としていたが、実習生には恒常的に月100時間超の時間外労働を行わせ、120時間に達していた人もいた。
このほか違反内容としては、「安全措置が講じられていない機械を使用させていたなど安全基準関係」(23.5%)、「賃金不払残業など割増賃金の支払関係」(17.8%)などが続いている。
また実習生たちからは、賃金の不払いをどうにかして欲しいという訴えが特に多かったようだ。労基署などに対し実習生からなされた申告138件のうち、131件は「賃金や割増賃金の不払い」だった。
実習生であっても最低賃金や割増賃金などが適用され、それを下回る条件で契約を結んでいても無効になる。しかし申告事例を見ると、基本給を月額5万円に設定したうえに、それさえ払われていないケースがあった。
この会社では時間外労働の割増賃金も、始めの1時間だけ適正に支払うが、それ以降は時給500円としていた。労基署の是正勧告により、最終的に実習生11名に対し総額約4200万円が支払われたが、事業主は当初こんな言い訳をしていたということだ。
「技能実習生がやりたいと言うから時間外労働をさせていた」
「時間外労働の割増賃金をまともに支払っていたら元が取れない」
垣間見られる「日本人より安い労働力」扱い
時給換算で290円から404円しか支払っていなかった事業場でも、是正勧告が行われた結果、11人の実習生に約3200万円が支払われた。この事業所はすでに母国に帰国した技能実習生にも、外国送金によって不払い分の賃金全額が支払ったという。
事業主の「元が取れない」というコメントからは、実習生を安い労働力として使っている実態が垣間見られる。せっかく技能を教えているのだから、安く長く働いてもらわないと困るという言い分だろうが、どう見ても健全な状態ではない。そうでもしなければ中小企業がやっていけないほど低単価で発注している発注側にも、責任があるのかもしれない。
こういった劣悪な労働環境は、国のイメージ低下にも直結している。龍谷大の学生がベトナム人実習生に取ったアンケートでは、来日前は97%の人が「日本の印象が良い」と思っていたのに対し、来日後は48%に低下している。
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