ロシアGPでは、イタリアGP以来3戦ぶりにホンダが新型パワーユニットを投入した。フェルナンド・アロンソ車のみに投入された新パワーユニットは、6つのコンポーネントすべてが新しく、ICEは今季の残り4トークンをすべて使用した改良版となっている。
「トークンは排気系と燃焼系に使用した」(新井康久ホンダ総責任者)という新しいICEは、今シーズン初めての10基目となる。
なぜ、アロンソだけにトークンを使用した新しいICEを用意したのだろうか。新井総責任者は次のように説明している。
「製造の時間の問題で、ひとつしか用意できませんでした。なぜアロンソのマシンに搭載したのかというと、アロンソ車に搭載されていたICEのほうが多くのマイレージを走っていたので、順番として、そうなっただけです」
ところが、そのブランニュー・パッケージを、ホンダはフリー走行1回目が終了したあと、アロンソのマシンから下ろした。積み替えたパワーユニットには、10基目となるターボチャージャーとMGU-Hが搭載されており、すでに10月6日に申請されている。この2つのコンポーネントは、トークンは使用していないが、レギュレーションで許される範囲内で改良された最新スペックである。
その最新のターボチャージャーとMGU-Hが搭載されているICEは、日本GP金曜日のフリー走行1回目で使用し、その後データ上に不安な数値が出たためにフリー走行2回目以降は使用しなかったものである。つまり、今回のパワーユニット交換は「今シーズン残りのグランプリを見据えた戦略的な判断」(新井総責任者)なのだ。
ロシアGP初日は、フリー走行1回目で路面に清掃車のディーゼル燃料が漏れたことによってセッションが30分間短縮されるというハプニングで幕を開けた。2回目のフリー走行は雨に見舞われ、ウエットコンディションに。そのため「新しいICEを走らせ、問題がないと確認できたことはよかった」と新井総責任者は安堵の表情を浮かべていたものの、「予定していたプログラムを消化できなかったので、土曜は忙しい一日になるでしょう」と厳しい顔つきで会見を締めくくった。
土曜のソチの天気予報は、晴れ時々曇り。フリー走行3回目の1時間でレースに向けた対応をしながら、どこまで予選への準備をできるか。ロシアGPの本格的なスタートが、いよいよ切られる。
(尾張正博)