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WEC富士特集:今日から開幕! WEC日本ラウンドの見所は?

2015年10月09日 20:01  AUTOSPORT web

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WEC第6戦富士 2号車トヨタTS040ハイブリッド
いよいよ開幕した、FIA世界耐久選手権(WEC)の日本ラウンド。その最大の注目ポイントがLMP1-Hクラスの3つのワークスチームによる、総合優勝争いである。

 今季のLMP1-Hクラスで強さを誇っているのは、ポルシェ・チームである。ポルシェは919ハイブリッドを擁して、昨年からWECに参戦。初年度から速さを見せていたものの、信頼性不足に苦しみ、8戦中4回ものポールポジションを奪ったものの、優勝は最終戦の1回のみに終わっていた。そのポルシェは、919ハイブリッドと名前は同じながらも、昨年モデルからの大幅アップデートを敢行。開幕前テストから速さを見せつつ、高い信頼性も確保してきた。

 彼らは序盤2戦を落としたものの、6月のル・マン24時間レースでスポット参戦の19号車(ニコ・ヒュルケンベルグ/アール・バンバー/ニック・タンディ組)が優勝を飾ると、その後のニュルブルクリンクとオースティンのレースを17号車(ティモ・ベルンハルト/マーク・ウェーバー/ブレンダン・ハートレー組)が連勝。ドライバーズランキングトップとの差を僅か10ポイントに縮めた。

 特筆すべきはその速さだ。彼らポルシェは、レース中にペナルティや多少のトラブルあったとしても、ライバルに対して十分に挽回できるだけの速さを現時点では備えており、まさにノリに乗っている状態。さらにポルシェ919ハイブリッドは、直線スピードに定評があるため、長いメインストレートを有する富士では有利と言える。たとえコーナリングで離されても、直線の加速で一気に逆転する……そんなレースを我々に見せてくれそうである。当然連勝中の17号車が優勝候補最有力であるが、18号車(マルク・リーブ/ニール・ジャニ/ロマン・デュマ組)もランキングこそ3位であるものの、ここまで3戦連続ポールポジション。こちらも速さは折り紙付きであり、富士でトップチェッカーを受けても、決しておかしくはなく。

 その速さは、WEC富士初日でいかんなく発揮された。FP1、FP2ともに上位につけたのはもちろん、これまでのレコードタイムを2秒ほど短縮する、圧倒的な速さだったのだ。ポルシェにとっては、WEC富士の初日を、非常に良い形で滑り出すことができたと言えるだろう。


 一方のアウディは、高い信頼性を誇るR18 e-トロン・クアトロを武器に、打倒ポルシェに挑む。特に7号車(アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ/マルセル・ファスラー組)は開幕2連勝した後も堅実のレースを続け、5戦中4レースで表彰台を確保している。

 昨年、トヨタにWECチャンピオンの座を奪われてしまったアウディは、R18 e-トロン・クアトロを改良。特にパワーユニットに徹底的に手を入れ、燃費性能と出力向上を実現した。前述の通り、そのアップデートが功を奏してシルバーストンとスパ・フランコルシャンを連勝したものの、その後は向上著しいポルシェの前に遅れ始め、現時点では1周あたり約1%程度、そのポルシェに遅れを取る格好となっている。正直、真っ向勝負を挑んでも勝ち目は少なく、代わりに高い信頼性と、幾多の耐久レースを制してきた経験を基にした戦略を組み立てることで、ポルシェとの差をどこまで詰めてくることができるか……。もちろん、富士スピードウェイでの経験豊富な“日本出身”のドライバーたち(ロッテラー、トレルイエ、ロイック・デュバル)の手腕にも注目である。

 アウディもポルシェ同様、初日にレコードタイムを上回る速さを見せており、ここ最近はポルシェに屈していたものの、一気に挽回してくる……という可能性もある。特に、まだ路面が出来上がっていない段階で、ロッテラーが叩き出した1分24秒台のラップは、特筆すべきもの。アウディ対ポルシェ、がっぷり四つの戦いを期待してしまう。

 昨年のWEC王者であるトヨタは、今季は厳しい戦いを強いられている。昨年は8戦中5勝を挙げたトヨタも、今季ここまで0勝。エンジン+モーターで1000馬力以上とも言われる出力を発揮し、空力やサスペンション、重量などが見直されたTS040ハイブリッドだが、ライバルたちの進化の方が勝っていた感がある。ただ、トヨタは新生WEC施行後、富士スピードウェイでのレースは全て制しており、地の利をいかんなく発揮している。さて、今年はどうか? アンソニー・デイビッドソンやセバスチャン・ブエミは、「今季は少々厳しいけど、救われるとすれば富士の天候」と口を揃える。実際、日曜日には雨の予報が出ており、それがトヨタにとっての“神風”となるか? そしてもちろん、TS040ハイブリッドに乗る日本人のエース、中嶋一貴のドライビングも目に焼き付けておきたい。


 そして、LMP2クラスとLM-GTEクラスは、LMP1以上に大接戦となりそうだ。前戦オースティンでは、LMP2クラスは6時間走って1位26号車G-ドライブ・レーシングと2位47号車KCMGが同一周回、6台が1周遅れ以内でフィニッシュし、LM-GTEクラスではポルシェ・チーム・マンタイ2台と71号車AFコルセのトップ3が同一周回でゴールするという僅差の戦いが繰り広げられた。ここから想像するに、富士でも同様の接近戦が再現される可能性が高く、まさに一時も目を離すことができそうもない。

 LMP1-Hの頂上決戦に注目が集まるのはもちろんだが、LMP2、そしてLM-GTEクラスの争いにも目が離せない、そんな6時間レースは、10月11日(日)に決勝レースを迎える。