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超絶進化を遂げるLMP1。レコード2秒短縮:WEC富士初日レポート

2015年10月09日 19:10  AUTOSPORT web

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WEC第6戦富士 フリー走行2回目でトップタイムを記録した、17号車ポルシェ919ハイブリッド
いよいよ開幕した、FIA世界耐久選手権(WEC)第6戦富士6時間レース。その初日は、LMP1の進化の度合いを、まざまざと見せつけられる結果となった。

 午前中に行われたフリー走行1回目は、7号車アウディR18 e-トロン・クワトロがトップタイム。アンドレ・ロッテラーがドライブし、1分24秒497というとんでもない速さを披露したのだ。

 2012年から開催されているWEC富士ラウンド。今年で4回目の開催となるが、過去3年間のLMP1クラスの最速タイムは1分26秒577。これは2013年のアウディが記録したタイムである。しかし今季は、その最初の走行セッションであるFP1から、あっさりとこのレコードを更新。しかも、今までよりラップタイムを2秒も短縮してしまったのである。

 このラップタイムがいかに速いか? F1のレコードには7秒及ばないものの、スーパーフォーミュラのレコードの2秒落ち……しかも今年の7月に行われたスーパーフォーミュラ第3戦のファステストラップよりも速いのである。クローズドボディのマシンでこのタイムというのは、実に驚異的と言えよう。そして、何も7号車アウディだけが飛び抜けていたわけではない。2番手の18号車ポルシェ919ハイブリッド、3番手の8号車アウディR18 e-トロン・クワトロ、そして4番手の17号車ポルシェ919ハイブリッドまでもが、これまでのレコードを更新してみせたのだ。ロッテラー曰く「あのペースで走れるのは1周だけ。タイヤがもたない」とのこと。それでも、LMP1全体のレベルが、間違いなく向上している結果だと言えよう。

 なおポルシェは午前中、17号車にローダウンフォース仕様、18号車にハイダウンフォース仕様のエアロパーツを取り付け、比較テストを行っている。また、トヨタは今回エンジンにアップデートを加えているが、上位との差が詰まった印象は見られない。

 LMP2は36号車シグナテック・アルピーヌが首位につけ、LM-GTEのプロクラスは92号車のポルシェ・チーム・マンタイが、LM-GTEアマクラスは50号車ラルブル・コンペティションが首位となっている。ただ、いずれのクラスもタイム差は非常に接近しているのが印象的だ(LMP2が5台、LM-GTEプロクラスは全7台、LM-GTEアマクラスは6台が、クラストップから1秒以内での差で続いた)。

 午後15時半からは、フリー走行2回目が実施。日が高いうちは暖かく、汗ばむほどの気温だったが、少し日が傾くと、富士の気温は一気に下がり、肌寒さすら感じる。セッション中にもどんどん下がっていき、開始時は21度だったものが、最終的には18度になった。

 このセッションでも、各車が速さを見せた。ここでトップに立ったのは、17号車ポルシェ919ハイブリッド。午前中のアウディのタイムをさらに更新し、1分24秒460まで刻んでみせた。ここでも、ポルシェ-アウディ-ポルシェ-アウディと2チームが僅差でトップ4を形成している。トヨタは1号車が5番手。順位こそ5番手ではあるが、そのタイムも、上位4台には1.7秒離されたものの、昨年までのレコードよりも速いものだ。

 ただ、そのトヨタをトラブルが襲う。残り20分というところで、アンソニー・デイビッドソンがドライブ中、マシンは駆動力を失ったような形でスローダウン。ゆるゆるとピットを目指すことになった。現時点はその原因は不明だが、翌日以降に不安を残す格好となった。

 トヨタのトラブル続き、エクストリーム・スピード・モータースポーツの2台が相次いでストップ。まずは31号車がヘアピンでスピン。なんとかコース復帰を果たすが、続けて30号車もほとんど同じような所で止まってしまう。しかし、30号車は自力で動くことができず、セッション中断の原因となってしまう。

 そのエクストリーム・スピード・モータースポーツが入るLMP2クラスは、今度は26号車G-ドライブ・レーシングが首位。2番手に47号車KCMG、3番手に28号車G-ドライブ・レーシングと、タイトルを争う3位が上位を占めた。タイムから見ても、この3台が抜きん出ている印象である。

 LM-GTEに目を転じてみると、プロクラスではAFコルセが51号車、71号車の順でトップ2を独占。ただ、95号車アストン・マーチン・レーシングや2台のポルシェ・チーム・マンタイなどが僅差でセッションを終えており、まだまだ勢力図は分からない状況だ。アマクラスは最速がアストン・マーチンの96号車。午前中も速さを見せた50号車ラルブル・コンペティションが0.028秒差の2番手に続き、3番手にはハリウッド俳優のパトリック・デンプシーが率いるデンプシー-プロトン・レーシングが入っている。

 初日の結果から判断するに、LMP1はポルシェとアウディによる激戦が展開されそうな予感だ。そして、そこに母国レースとなるトヨタ勢がどこまで迫っていくことができるだろうか? その他のクラスも非常に接戦であり、予選・決勝は実に見応えあるものとなりそうだ。ただ、富士スピードウェイが位置する小山町は、この先天気が下り坂の予報。土曜日は曇る程度で済みそうだが、日曜日には降雨も予想されている。この富士の変わりやすい天候が、レース結果をどう左右するのだろうか?