2015年10月09日 11:21 弁護士ドットコム
漫画家の東村アキコさんの新連載「ヒモザイル」が話題をよんでいる。結婚願望のある稼ぎのよいアラサー女性と、夢みるダメ男とをカップルにして、ダメ男を専業主夫ならぬ「ヒモザイル」(ヒモ)にしようと試みる実録プロジェクトだ。
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「ヒモザイル」というネーミングは、登山に使うロープの「ザイル」から。単なるヒモではなく、ザイルのように、困ったときでも愛する女性と支え合える関係であるという意味でつけたようだ。
育児や家事は主に担うものの、あいた時間は自分自身の夢のために時間を使うという「ヒモザイル」。稼ぎは良いものの仕事が忙しい女性にしてみれば、育児や家事を担う存在は心強いだろう。両者の合意があるならば、理想的な結婚生活になりそうだ。
さらに、ヒモザイルの「夢」が少しでも実現すれば、わずかであっても収入があるかもしれない。そうなると、気になるのは、ヒモザイルをめぐる「お金」の話だ。所得税の配偶者控除や健康保険、年金などにおいて、ヒモザイルには、どのような権利と義務があるのだろうか。また、結婚せずに同棲をするだけの場合はどうか。三宅伸税理士に聞いた。
「少子高齢化の進展や国内経済活動の成熟化など、我が国の社会経済情勢の急速な変化に対応していく上で、男女共同参画社会の実現は、緊要な課題となっています。
これからの社会を生き抜いていくためには、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できることが必要でしょう。
そうなるように、法整備も進んできています。2010年には、父子家庭にも児童扶養手当が支給されるようになりました。2014年4月には、遺族基礎年金の支給要件の男女間の差異が、解消されています」
そんな中で、「ヒモザイル」は、自然な流れなのかもしれない。
「そうですね。そもそも、主夫だから配偶者控除を受けられないとか、健康保険の被扶養者になれないということはありません。ただ、まだ全ての制度が、完全に男女平等であるとは言えません。
特に配偶者を亡くした際、女性に有利な制度が残っています。税制面では寡婦控除は寡夫控除より、適用要件において優遇されている部分があります。寡婦加算についても女性が優遇されています」
「家庭に入る」という点では、まだ女性優遇の面が少しあるようだ。また、三宅税理士はもう一つ、ヒモザイルが気をつけるべき点として、「事実婚」をあげる。
「ヒモザイルが婚姻届を出さない関係だとすると、ほかの課題も出てきます。
これは、ヒモザイルだから、ではありません。事実婚は現在の法制度上、民法上の夫婦と同じような法的措置が受けられない場合が多くあるのです。たとえば、内縁の夫または妻は、民法上の配偶者ではありませんから、配偶者控除の対象とはなりません。
また、内縁の夫または妻の子は、養子縁組をしなければ親族関係は生じないことから、扶養控除の対象とはなりません。
社会保険についても、民法上の婚姻関係がなければ扶養関係はない、とされているのが現状です。国の社会経済情勢の急速な変化に対応していく上でも、現状に即した制度の迅速な整備が望まれます」
三宅税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
三宅 伸 (みやけ・しん)税理士
大阪府立大学経済学部卒業。大手リース会社勤務。仕事、育児、勉強を両立しながら大阪の税理士法人に勤務。平成26年11月堂島で三宅伸税理士事務所を開業。誠実であること素直であることをモットーに、常にお客様の立場に立って考えることを大切にし、お客様と共に成長していきたいと考えています。
事務所名 : 三宅伸税理士事務所事務所URL: http://miyake-tax.jp
(弁護士ドットコムニュース)