働く意欲があっても、なかなか働きに出にくい人たちがいる。その代表格といえるのが「主婦」だろう。手がかかる小さな子どもがいる女性や、子育てはひと段落したもののブランクが長過ぎて腰が重くなっている女性など。しかし今、そんな女性らの「主婦力」に注目する企業が広がっているという。
10月5日の「ニュース シブ5時」(NHK)で紹介された草野さんは、現在55歳の主婦。2人の子どもを育てながら家事に追われる毎日を送っているが、夫の定年退職を機にもう一度働こうと奮起した。(文:みゆくらけん)
足立区の支援プログラムは8割以上が正社員で就職
もともと信用金庫で正社員として勤務していた草野さんは、簿記の資格を生かして経理や秘書として働いていたが、出産を機に30歳で退職。その後は専業主婦をしていたため、ブランクは25年にもなるという。
かつて現役の頃に行っていた仕事内容と現在では、同じ簿記でもやり方が全く違うと嘆く草野さん。昔はほぼ全ての業務を手書きで行っていたが、今はそのほとんどがシステム化され、パソコンを使ったものになっているからだ。
慣れないパソコンに苦戦する草野さんだが、東京・足立区が設ける主婦のための5か月間の「再就職講座」に参加することになった。この講座では、平日朝9時から夕方5時までフルタイムで勉強し、パソコンを使った事務スキルを2か月間で取得する。
3か月目からは足立区内の企業で職場実習が始まり、給与も支給される。草野さんは「この講座を受けたことで働くことの不安が解消してきた。面接でも自信を持って自分のことを話せた」と話している。
足立区のねらいは区内の人手不足の中小企業に就職してもらうことだが、卒業生の働きが評価されて求人は増え続けているという。昨年度は講座を受けた約30名が100%就職し、うち83%を占める25名は正社員となったのだとか。
「もともと能力が高く優秀な人たち。もったいない」
2人の小さな子どもを持つ33歳の中山さんは、東京・多摩市の託児所を併設するコールセンターで働いている。すぐ隣の部屋に子どもがいるため、何かあった時もすぐに対応できるのが特徴だ。
勤務形態も「子どもの幼稚園の予定に合わせて出勤日を選ぶ」など自由で融通が効き、子育て中のママが無理なく働けるシステムとなっている。運営会社代表の藤代さんは、このような環境を整備した趣旨をこう説明する。
「もともと能力が高く優秀な人たちが『働きたいのに働けない』ということがもったいない。今のお母さんたちが実力を発揮するためにはこういうしくみが最適」
やる気や能力があるのにブランクや子どもの問題で働けない女性にとって、このような企業の受け皿があるのは大変ありがたい。企業にとっても人手不足を補え、街も活性するという素晴らしいシステムである。
現在、主婦の再就職を支援する取り組みは広がっており、エステや花屋、日本語教師など主婦向けインターンも登場しているという。結婚しても子どもができても夫が定年退職しても、意欲さえあれば働ける。そんな社会が「日本のスタンダード」になることに期待!
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