米ニューヨーク市の男性職員であるロナルド・ディラン氏が、自分の仕事であるヘルプデスクでの電話応対業務を自作のAI(人工知能)プログラムに代行させていたのが分かり、20日間の停職処分になったと「BusinessNewsline」という日本語媒体が紹介している。
事の是非は別とすれば、人間との会話をスムーズに行える人工知能の登場は画期的といえるだろう。ネットにはロナルド氏の能力を褒め称える声が相次いだ。
「役所が天才に追いつけない」
「有能なナマケモノ凄いw」
「むしろ研究費与えてそのプログラムを完璧にする仕事与えるべきだろw」
市役所職員のロナルド氏の元に、アップルやグーグルといった先進的なハイテク企業から声がかかるのではないかと推測する人も。しかし残念ながらこのニュース、最終的には誤報の可能性が高いようだ。
「ロボットの声真似をしていただけ」という報道も
まず「BusinessNewsline」の記事は、海外ニュースサイトの翻訳に見えるもののソースは明記されていない。ブログ「本の虫」を運営する江添亮氏は、2014年10月31日の「DNAinfo NEW YORK」がロナルド・ディラン氏について報じている記事ではないかと指摘する。
「長年保健局で勤務していた職員が、カスタマーサービスの電話にロボットのような声で答えていたために20日間の無給の停職処分になった」
この英文記事には上記のように書かれており、人間がコンピュータ音声のマネをして応えていただけというガッカリの内容になっている。さらにロナルド氏は、上司がその対応をやめるよう指示したのにもかかわらず、従わなかったとのこと。
ロナルド氏自身は、顧客対応をする際に上司から指示されたマニュアルをゆっくりと読み上げただけだと主張しているという。その理由は彼が早口で、またブルックリン訛りがあったため、相手が聞き取れないことがあったからだということだ。
「人は信じたいこと信じちゃうよね」と残念がる声も
市役所のヘルプデスクと言えば、市民からの問い合わせやクレームなど、ときには快いとは言えない電話にも対応しなければならない。それを人工知能にやらせることができたなら、どんなに仕事が楽になるかと想像した人は多いに違いない。
このような期待もあってか、事実が全く異なっていたことを知ったネットユーザーからは、「釣られたー」「人は信じたいこと信じちゃうよね」と残念がる声があがった。
ちなみに2015年9月29日のDNAinfo NEW YORKによると、ロナルド氏はこの件で一度20日間の停職処分を受けたにもかかわらず、再びロボット声で応対して30日間の処分を受けたと報じられている。
一方、誤訳の可能性を指摘されたBusinessNewslineは、ロナルド氏はやはり人工知能を使っていた可能性があると追記。米Timeの記者が2013年に実際にAIから電話を受けたとする記事を書いていることを根拠のひとつにあげ、
「人間を完全に模することができる電話応答のAIシステムは、公にはされてはいないが確かに存在しているということになるだろう」
と述べている。いずれにしても今回の騒動は、面倒な仕事をコンピュータに引き受けて欲しいという人間の期待がいかに高いかということを表したものと言っていいだろう。
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