いま世間では「テレビがつまらない」という声が多く、「テレビをほとんど、あるいはまったく見ない」人は5年前の倍近くに及ぶという調査結果もあります。そんな中、演出家のテリー伊藤さんが10月3日放送の「田勢康弘の週刊ニュース新書」(テレビ東京)にゲスト出演。テレビ業界の現場に檄を飛ばしていました。
「ワニをエリマキトカゲに」で驚異的な視聴率
番組ホストの田勢康弘さんが「野球や政治など世の中がつまらなくなったのでは」と話を振ると、テリーさんは時代によって皆が追うものは違うが、見方を変えれば面白いという話をした後、テレビへの想いを語りました。
「自分が分からなくなると、つまらないと言うけれど、いつの時代もテレビには影響力があるし、面白いと思います」
「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」や「ねるとん紅鯨団」など、数々のヒット番組を手がけたテリーさん。番組ではテレビ東京が過去に放送した、テリーさんが関わった番組を振り返っていました。
ワニをエリマキトカゲにしよう!と、命がけで大型のワニにエリマキを装着させたり、当時36歳のヨネスケさんのおしりに生け花を指して近所を移動(袴は着てました)、生け花の先生に評価をもらったりなど、今でも思わず噴き出してしまいます。
この2つの回は15.9%と、当時「テレビ番外地」と言われたテレビ東京では驚異的な視聴率。破天荒な番組が評判となり、やりすぎで出入り禁止になっていた日本テレビから再びお呼びがかかったといいます。
日本人の国民性を「たった1度の勝利でブーム起きる」と評す
数々の武勇伝を披露しながら、テリーさんも「あの頃はコンプライアンスなかったですね」と、時代がユルかったことに同意。当時でもクレームはガンガン受けていたそうですが、その表情に反省の色はなく、面白いことをやって「勝ち逃げした」という笑顔でした。
しかし現在はテリーさんの黄金期とは違い、規制が強化されている上にインターネットをはじめ娯楽が多様化。テレビを見ない人の割合は、20代では5年前の8%から16%へと確実に増えています(NHK放送文化研究所調べ)。
テリーさんもこの点について「世の中の流れ」と認めた上で、「ひとつの産業として見ると(盛り上がりは)20~30年。逆に落ち着いてきたのでは」と余裕の表情で、どこか他人事のような調子も感じました。
さらにテリーさんは、「コンプライアンスのせいにしたくない」「キャッチーなものをつくる力をテレビマンが持っていれば」と持論を展開。又吉直樹さんの「火花」やラグビー日本代表にも言及し、日本人の国民性を、
「たった1度の勝利でブームが起きる。なにかひとつ面白いものがあれば、そっち側にグーンと行く」
と評し、「それを見つけることをテレビマンが常に考えていれば、いつの時代でも面白い(ものは作れる)」と断言しました。
「くだらないもの」以外に活路があるのでは
例としてテレビ東京の「孤独のグルメ」を、グルメ番組の中で一番面白いと絶賛し、「価値観の違いだけであんなに面白くしている。そんな難しいことではい。ちょっとした努力」と作り手の姿勢を説きました。
続けて「だからテレビマンは、世の中やネット、何のせいにしてもいけない」と檄を飛ばし、テレビマンたちに「テレビという人に夢を与える幸せな仕事をさせてもらっているんだから、その中で頑張っていけよ」とエールを送りました。
過去のテリーさん番組を見ると、若手芸人に無茶をさせる手法はここからずっと続いているのだなと感じます。これでは飽きもするし、ひたすらエスカレートしていかざるを得ません。どの局も「くだらなさ」を競っている印象が強くなれば、テレビ離れは進むでしょう。
とはいえ全体では8割前後の人たちは見ていて、ネットでテレビコンテンツを視聴する人もいるのも事実。テレビの影響力はまだまだ大きいです。個人的には「みんなくだらないものが大好き」という思い込みを捨て、テリーさんの既定路線を離れたところに何か活路があるような気もするのですが。(文・篠原みつき)
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