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NHKが「ネット生中継な人たち」をアンコール放送 「誰かとつながる可能性」に賭ける若者たち

2015年10月04日 11:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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何かひとつのことに3日間密着するNHK総合の「ドキュメント72時間」。9月25日は100回記念のアンコールで、2013年に放送した「ネット生中継な人たち」を放送した。普通の人々が1日に発信する動画は10万、視聴者も10万人はいるという。

番組は、ニコニコ生放送を発信する「放送主」たちが一堂に会するイベント「ニコニコ超会議」に潜入。若者たちの異様な熱気に包まれた千葉・幕張メッセは、仮装やモノマネなどで知名度を上げようとする人たちが目に付く。人気の放送主は、生放送の魅力をこう語っていた。

「特技がなくても、ちょっとした工夫をすれば人気が出る。有名人っぽくなれる」

ひとり釣りをする様子を4000人が視聴

では生中継する目的は「人気者になりたい」ということなのか。番組が全国に放送主を訪ねてみると、実に様々な人たちが「自分」を生中継していた。

ひとりで釣りをしている様子をひたすら中継していた青年・ひげかへるさんは、「他の人とも会話しながら共有できるのがホント楽しくて」と語る。彼の放送の視聴者は4000人以上。ささいなことでも報告すると、すぐに反応が返ってくる。釣り以上に、ネットでの一体感を楽しんでいるように見えた。

まったく無表情でしゃべらない男性もいた。「雑談したい」だけで、ひたすら待ちに徹し、12時間以上待つことも。1人2人でも話し相手が見つかればいいという。ある若い女性の放送主は、「友だち同士だとお互い気を使わなきゃいけない。ネットだと気を使わなくていい」とネットの気軽さを語る。

ネット生中継の特徴は、誰に許しを得ずとも好きなことを発信できる自由さと、それを見た人から瞬時に反応が返ってくる双方向性だ。デジタル放送が始まって双方向などと言われても、ネットの瞬発力はテレビの比ではない。

生放送の人気で仕事を頑張れた独身男性も

女装でブレイクしたプロテインさんは、顔はどう見ても可愛いらしい女の子なのに、首から下は筋肉ムキムキ。ギャップを喜んだ視聴者から、「かわい~!www」「筋肉!www」などとコメントが画面上に次々に流れ、熱狂的に盛り上がっている様子が伝わってきた。

プロテインさんの素顔は、独身の若手ビジネスマン。ワンルームにひとり暮らしする小柄で人の好さそうな青年だ。放送を始めたのは社会人になりたての毎日が不安だったころ。けれど生放送を始めて人気が出たことで仕事を頑張れるようになった、と親に打ち明けた。

「仕事が辛いとき、(放送のおかげで)辞めなくて済んだと言ったら、すごくよかったねと。今は応援してくれてます」

プロテインさんは放送を見に来てくれた1人ひとりにお礼を言い、視聴者との関係をとても大切にしている様子がうかがえた。

番組は、かつて人気放送主だったものの心の病を患い引きこもりがちになった青年が、姉の励ましで再び生中継をして生き生きとした表情を取り戻す場面のほか、頚椎損傷で全身麻痺になり人生が一変してしまったというヤマダさんの初放送も捉えていた。

ネットは万能ではないが、できることもある

ひきこもりがちだったヤマダさんは、家族や友人の助けを借りながら「笑える話」を集めて準備。初放送の視聴者は12人で、反応はひとこと「がんばれ!!!」だけ。それでもヤマダさんは、ほっとしたように笑みを浮かべて「ありがとうございます!」と返していた。たった一人の反響が、とても大事な記念の一歩になった。

生放送に限らず、いまでは誰もが気軽に情報を発信できる手段がある。それがあることで、孤独に悶々と過ごすしかなかったかもしれない人たちが、救われた気持ちになることもあるのだ。

番組に登場した人たちはほんの一部に過ぎないけれど、顔も知らない相手から圧倒的に支持されるという快感は、一度経験したらやめられないのではないか。たとえ1人だけでも肯定的な反応をもらえれば嬉しくないはずがない。

人とのつながりが希薄になったと言われる昨今でも、根底にはつながりたいという気持ちがあることを強く印象づけられた。番組ナレーションが「ネットは万能ではない。ただ、誰かとつながる可能性に賭けることはできる」と語ったように。(ライター:okei)

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