無用な混乱を起こしただけと思えるような、就職活動の後ろ倒し。すでに経団連会長自身が、来年のスケジュールの見直しをほのめかしています。
とはいえ今から大幅に変えてしまうと、さすがに苦情が出るだけですから、せいぜい時期の小幅修正くらいでしょう。ただし17年卒の学生は、早めに就活の準備をしておくことを強くオススメします。(文:河合浩司)
8月1日時点の内定率が65%という事実
今年は後ろ倒し初年度で、他社がどのように動くのか様子見をしていた企業が多いでしょう。かくいう私も採用活動を進めながら、他社の情報を集めてきました。
そのように進んできた今期の就職・採用活動ですが、各社の調査で「採用選考に関する企業の倫理憲章」が明らかに軽視されていることが数字からも明らかになっています。
マイナビが実施した2016年卒の大学生就職内定率調査によると、7月末時点の内々定率が57.0%。リクルートキャリアの発表では、8月1日時点での就職内定率が65.3%です。
もちろん倫理憲章に直接拘束されるのは、経団連加盟企業のみ。他の会社は関係ありませんが、これまでは横並びで意識してきた会社も多かったのです。
しかし今回のデータから、多くの会社が倫理憲章を無視して採用活動に動いたことは明らか。経団連企業でも、水面下で内々定を出した会社があったといわれます。「倫理憲章に従う気はないよ」という企業の意思表示となっているのではないでしょうか。
無理なスケジュールが倫理憲章の骨抜きを招いた
調査結果を見た一人の採用担当者としては、「なんだ、やっぱりほとんど誰も従わないんじゃないか」というのが素直な本音です。そして来期の17年卒採用は「もはや意味のない憲章に気を遣う必要はないな」とまで思えています。
公に開示することはなくとも、本音では私と同じように考えている採用担当者も多いのではないでしょうか。むしろ今回の無理なスケジュール設定は、倫理憲章の骨抜きを密かにねらったのではないかと思うくらいです。
スケジュール以外の課題としては、「面談という名の選考」と「リクルーターの活用」が有効であると実感した会社も多いことでしょう。「キャリア教育」という名目で、学生と接点を作ることも十分に可能です。
来期も倫理憲章が存在するならば、これらの手法が繰り返されることになり、その結果、なし崩し的に就活の時期が早くなっていくことは十分に予想できます。そもそも学生のことを考えれば、就活は後ろ倒しではなく早期決着を図ったうえで、余裕を持って最後の学生生活を思う存分味わってもらうのも一案ではないでしょうか。
「自己分析」以外は今から着手しよう
17年卒の就活生は、先輩たちが翻弄された様子を見ているので、「就活は3月から」などとは悠長なことを思う人は少ないかもしれません。先輩たちの動きよりも早め早めに準備しておくくらいの気持ちでちょうどいいのです。
冬休みになると、就活関連で忙しくなるでしょうから、時間に余裕がある今のうちにSPIなどの筆記試験対策は始めておいた方がいいでしょう。就活準備の手始めに、自己PR文を試しに書いてみることも。自己分析は時間の無駄なのでする必要はありませんが、できることはたくさんあるので今のうちに動き始めることを強くオススメします。
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