2012年にスタートし、年々盛り上がりを見せている世界耐久選手権(通称“WEC”)。総合優勝を争うとともに、トヨタ、アウディ、そしてポルシェという巨大メーカーが威信をかけて戦うLMP1-Hに注目が集まりがちだが、ご存じの通り、このWECはLMP1、LMP2、LM-GTEプロクラス/アマクラスの混走で争われており、各クラスで熾烈なバトルが繰り広げられている。10月9日~11日に富士スピードウェイで開催される第6戦に向けて、各クラスの勢力図、そして有力チームを簡単にご紹介しよう。
LMP1クラスは、プライベーターチームはハイブリッドシステムを搭載していなくても参戦が可能(搭載することも可能)。現在は2チーム計3台がプライベーターとしてLMP1を戦っている。まず、スイスチームのレベリオン・レーシングは、オリジナルマシンのR-OneにAER製のエンジンを搭載し、2台体制を敷く。ドライバーとしては、アラン・プロストの息子であるニコラ・プロストなどが名を連ねている。
同じくプライベーターとしてLMP1を戦っているのが、チーム・バイコレス。その名前から推察できる通り、2014年のF1ではケータハムの買収でも話題となったコリン・コレスが率いるチームだ。一昨年まではロータスとしてLMP2クラスを戦っていたが、昨年途中からLMP1にステップアップを果たし、オリジナルマシンのP1/01にAERエンジンを搭載して戦っている。
LMP2クラスもプライベーター向けのカテゴリーだが、こちらは厳格なコストキャップが設けられ、基本的に開発も許されていない。イコールコンディションのもとで、各チームが僅差の戦いを繰り広げているのが特徴だ。また、現在は4クラス中最多の参戦台数を誇っている。
今シーズンは、ロシアのG-ドライブ・レーシングと香港のKCMGが毎戦上位争いを展開している。G-ドライブとは、ロシアの石油会社ガスプロムのブランドだ。昨年は最終戦まで王座争いを繰り広げながら王座を逃しており、今シーズンこそ戴冠を狙う。クローズドボディのリジェJS P2にニッサンエンジンを搭載した2台のマシンを投入している。
一方のKCMGは、日本でもスーパーフォーミュラや全日本F3選手権に参戦していることでもおなじみのチームだ。チーム監督もスーパーフォーミュラと同じく土居隆二氏となっている。マシンは、オレカが今季に向けて開発したクローズド車のオレカ05に、こちらもニッサンエンジンを採用している。
また今年からは、北米の強豪チームのエクストリーム・スピード・モータースポーツもWECへのフル参戦を開始している。本来はHPD(北米ホンダ)が今季に向けて開発したクローズド車両のARX-04bを採用する予定だったが、ホモロゲーションの取得を前に開発を更に進めるため、今年はリジェJS P2を採用し、HPD製エンジンを搭載してシリーズを戦っている。彼らも2台のマシンを走らせる。
今季途中までは童夢とともに開発したストラッカ童夢S103を採用していたストラッカ・レーシングは、LMP1参戦に向けた開発を進めるため、童夢S103は開発用に転用。実戦にはギブソン015Sをニュルブルクリンクから採用している。また、日本のサードとのジョイントプログラムを展開しているチーム-サード・モランドや、そして昨年のヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)王者のシグナテック・アルピーヌも名を連ねるなど、まさしく激戦区といえる盛り上がりを見せているのがLMP2だ。
GTカーで争われるLM-GTEはプロクラスとアマクラスに分類されている。プロクラスでは、フェラーリ(AFコルセ)、アストンマーチン(アストンマーチン・レーシング)、そしてポルシェ(ポルシェ・チームマンタイ)のワークス格のチームが参戦。フェラーリとポルシェはそれぞれ2台、アストンマーチンは3台を投入している。各車の性能はBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)で均衡が保たれており、ドライバーも元F1ドライバーなどの精鋭が揃う。そのため、最後まで秒差の首位争いが展開されることが多いのも特徴のひとつだ。
アマクラスでは、ドライバーラインナップに制限があるほか、マシンも1年以上古いマシンを使用する必要がある。注目チームのひとつは、ラルブル・コンペティションだ。ヨーロッパの名門チームで、2013年まではシボレー・コルベットC6.RでWECに参戦。今季は、コルベットC7.Rでシリーズを戦っている。ほかにも、デンプシー-プロトン・レーシングは、その名の通りハリウッドスターのパトリック・デンプシーが率いるチーム。デンプシー自身も今季はWECにフル参戦しており、富士で姿を見ることができそうだ。