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NHKの集金スタッフは「労働者」 都労委が「団体交渉」に応じるようNHKに命令

2015年10月01日 19:11  弁護士ドットコム

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東京都労働委員会(都労委)は10月1日、NHKの集金スタッフで作る「組合」との団体交渉に、NHKが不当な理由で応じなかったと認定し、今後は応じるよう命じた。


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事件の最大の争点は、NHKと業務委託契約を結ぶ「地域スタッフ」が、「労働組合法上の労働者」にあたるかどうかだったが、都労委はこれを認めた。



労働組合「全日本放送受信料労働組合(全受労)」と弁護団は同日午後、東京・霞が関の厚生労働省で記者会見を開いた。勝木吐夢・全受労書記長は「働き方の実態を見たうえで、労組法上の労働者にあたると認定していただいた」と決定を歓迎した。



一方、NHK広報局は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「不当な命令であり、再審査や訴訟の手続を取ることになります」とコメントした。



●告知文書の「提示」も


都労委の命令書によると、発端は2011年6月、全受労の名古屋駅前支部がNHKに対して、「名古屋駅前の営業センター長が組合を敵視する発言をした」として、団体交渉を申し入れたこと。NHKが、組合の中央執行委員が出席することを理由に、団体交渉を拒否したため、組合が労働委員会に救済を申し立てていた。



都労委は、このNHKの対応が「不当労働行為」にあたると指摘し、NHKに対し、今後このような行為をやめることと、「今後、このような行為を繰り返さないよう留意します」などと記した告知文を、NHK名古屋放送局名古屋駅前営業センターの従業員の見やすい場所に、10日間提示することを命じた。



一方で、もともとの問題発言の存在は認めなかった。



●携帯端末「ナビタン」でNHKに業務報告


この事件の大きな論点は、NHKと業務委託契約を結んで、集金業務を行う「地域スタッフ」が、労働組合法上の労働者といえるかどうかだった。



都労委は、地域スタッフについて次のように判断し、「協会との関係で労組法上の労働者に当たる」と認めた。



(1)業務遂行に不可欠・枢要な労働力として、NHKの地形組織に組み入れられている


(2)NHKが労働条件・労務内容を一方的・定型的に決定している


(3)報酬は労務への対価


(4)NHKからの依頼に基本的に応ぜざるを得ない関係にある


(5)広い意味で協会の指揮監督の下にある


(6)顕著な事業者性が認められない



代理人の三浦佑哉弁護士は「地域スタッフは、全国統一のマニュアルに沿って仕事をしている。どこの地区を受け持つかも、NHK側が決める」などと指摘した。



勝木氏によると、地域スタッフは「ナビタン」という携帯端末を持たされており、それによって、何時にどこでどんな対応をしたかなどの行動情報が、NHK側に逐一伝わるようになっているそうだ。



●法人委託に切り替える動き


なお、地域スタッフは過去は全体で6000人程度いたが、現在は法人委託への切り替えが進み、その数は2000人程度に減っているそうだ。全受労のメンバーは約100人で、組合としては「労働基準法上も労働者だ」と主張していく方針だという。



代理人の鷲見賢一郎弁護士によると、同労組は20年以上前にも、中央労働委員会から「労働法上の労働組合だ」と認められたことがあったという。ただ、裁判所の判断はまだ存在しないという。鷲見弁護士は「今回は最高裁まで行くことになるかもしれない」と話していた。


(弁護士ドットコムニュース)