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財務省提案の軽減税率「還付方式」を税理士が批判「事務コストを増やす要素は排除を」

2015年10月01日 11:01  弁護士ドットコム

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消費税率の10%に引き上げに合わせて導入が検討されてきた、生活必需品の税率を低く抑える「軽減税率制度」のあり方について、自民、公明両党の間で議論になっている。


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財務省の案は、来年1月に始まる「マイナンバー」のカードに購入履歴を記録する形で、消費者が会計するときに10%分の消費税を支払い、後日に2%分の還付が受けられるかたちが示されていた。



自民党はこの案を容認しているが、公明党はマイナンバーを使用する点や、消費者の手続きが面倒になることなどを理由に反対。モノを買う時点で税率が安くなる方式を導入することを主張している。財務省の示した案について、山本邦人税理士に聞いた。



●財務省案は、消費者にとって負担が大きい


「飲食料品の税率だけを8%に抑えるいわゆる『軽減税率制度』ですが、この制度の問題点として、そもそも対象品目の選定の難しさが挙げられます。



また商品ごとに税率が異なる場合、請求書に商品ごとの税率を示す必要があります。システムの更新費用がかかったり、経理事務の手間が増えます」



山本税理士はこのように述べる。



「財務省の案では、購入の際にマイナンバーカードを提示し、後で消費税の軽減分の還付を受けることとなっています。



買い物のたびにカードをかざして軽減分のポイントをためる仕組みだと、カードがなければ負担は軽減されず、還付申請も必要になります」



公明党が主張するように、消費者にとって負担になる形式ということだろうか。



「そうですね。特に、高齢者や認知症の人にとっては負担が重い形式だと思います。



また常にマイナンバーカードを持ち歩くことになるため、紛失による住所などの個人情報の漏洩や、詐欺などの消費者被害につながる恐れもあります。



さらにカードリーダーの設置費やシステムの維持管理費、給付金の振込手数料、担当職員の人件費など、多大なコストがかかることも想定されます」



山本税理士は「消費税という課税方法のメリットは、徴税コストが安く、ごまかしがききにくいことにあります。そのメリットを最大限に活かすには、軽減税率や還付金といった、制度を複雑にして、事務コストを増やすような要素はできるだけ避けてほしいところです」と述べていた。



【取材協力税理士】


山本 邦人(やまもと・くにと)税理士


監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。現在は中小企業を中心に160件を超えるクライアントの財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。


事務所名:山本公認会計士・税理士事務所


事務所URL:http://accg.jp


(弁護士ドットコムニュース)