飲食産業の市場規模は1997年のピークに比べて16%も減少し、苦境に立たされている。9月21日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、飲食店で休まず働くロボットたちを紹介していた。
東京・錦糸町にある「刀削麺(とうしょうめん)荘 唐家」の店頭で麺を削っているのは、マネキン人形のような上半身を持つ刀削麺ロボットの「康 真寧(やす・まねい)君」だ。
麺の品質も安定。1か月の売上は3割アップ
康君は調理場で料理人にまじり、正面を見据えてひたすら麺を削り続ける。その名のとおり、朝から晩まで1日中休まず稼動する。単純作業に疲れることも、飽きることもない。
中国で開発され、価格は税別で150万円。4年前に同番組で紹介されており、見ていた店の関係者が急いで中国に買いに行ったそうだ。当時は全身シルバーに塗られた見覚えのある風貌、まるでウルトラマンのようなロボットだった。
導入後の職人たちは、仕事を奪われて嘆くどころか大喜び。重さが2キロ以上ある麺を持ち続ける重労働のため、けんしょう炎になりやすかった。刀削麺職人の王さんは「重い、疲れる、手が痛い」と、その過酷さを語った。
刀削麺づくりから解放された王さんはチャーハンづくりに転向し、いまも店で腕をふるっている。職人がつくると麺に長さや太さにバラつきが出るが、やすまねい君がつくると均一な仕上がりで客の評判もいい。1か月の売上は3割アップしたという。
店のマスコット的存在になるロボットも
番組では神奈川・茅ヶ崎市で使われているギョーザの自動皮巻きロボット「餃子革命」(128万円・税別)も紹介。ミキサーに似た機械にギョーザの中身を入れると、下で待ち受ける皮に絶妙な力加減でふんわりと巻いていく。手作業に比べると作業効率は10倍。月当たりの売上はおよそ1.3倍上がった。
この機械を製造する「東亜工業」(静岡・浜松市)は、国内シェア6割の餃子製造機械の専門メーカー。職人が手作業で削り出すギョーザの金型が評判を呼び、国内外問わず注文が殺到している。
現在日本で働くやすまねい君は、中華の料理人風の人形だ。麺を削るだけなら顔かたちなど不要ではないのかと一瞬は考えた。
しかしカウンター越しに見える調理場で働く姿は、シュールな中にどこかユーモアも感じさせ、お客がスマホで写真撮影する。どうやら作業ロボットとしてだけでなく、店のマスコット的な存在にもなっているようだ。
単純作業をロボットに任せて人間は何をするのか
それにしても、中国で造られたというやすまねい君のネーミングは誰が考えたのだろうか。「休まない従業員」として無敵の労働者だとアピールされているようで、若干複雑な思いがよぎる。
しかし店からすれば、単純作業をロボットに任せて人間は調理や新開発に力を入れられるのだ。とくに従業員を雇う余裕のない小規模店舗に重宝がられるのもうなずける。
そもそも食器洗い機や寿司製造機など、すでに多くの飲食店で単純作業は機械化されている。「ヒト型」に驚きはするが、機械化はもはや当たり前。ニンゲンとしては、機械にできない仕事のスキルを高めていくしかなさそうだ。
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