2015年09月29日 21:21 弁護士ドットコム
アダルトビデオへの出演を断った20代の女性が、所属していた芸能プロダクションから2460万円もの違約金を請求されていた裁判について、東京地裁が9月9日、プロダクション側の請求を棄却する判決を下した。女性の弁護団と支援団体が9月29日、東京・霞が関の弁護士会館で記者会見を開いて、明らかにした。プロダクション側から控訴がなかったため、判決はすでに確定している。
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弁護団などによると、女性は高校生のころ、スカウトマンに「タレントにならないか?」と声をかけられて、プロダクションに所属することになった。プロダクションと契約を結んだ当初は「普通のタレントして売りだしてもらえる」と考えていたという。
ところが、未成年のうちは露出度の高いグラビア撮影に従事させられた。成年になると、アダルトビデオへ出演させられるようになったため、女性は「タレント活動をやめたい」と申し出たが、プロダクションは「やめれば100万円の違約金が発生する」などと脅して、出演を強制してきたという。
あまりに過激な撮影内容だったことから、屈辱と恐怖をおぼえた女性が「やめさせてほしい」と再度求めたところ、プロダクションは「あと9本撮影しないとやめられない」「違約金は1000万円にのぼる」などと回答してきた。女性が支援団体を通じて、契約の解除を伝えると、プロダクションから2014年10月に提訴された。
伊藤和子弁護士によると、女性とプロダクションが結んだ契約には、違約金に関する条項があったが、金額は明示されていなかった。また、契約解除については「合意の上解除することが出来る」「本契約に違反した場合」とだけ規定されていたという。
弁護団は会見で、判決文の一部を明らかにした。それによると、東京地裁は、この契約について「プロダクションの指示で、アダルトビデオに出演させる内容の『雇用類似』の契約」だったと認定。そのうえで、「『やむを得ない事由』があるときは契約の解除ができる」と判断した。
そして、東京地裁は「アダルトビデオへの出演は、本人の意に反して従事させることが許されないもの」「(原告は)莫大な違約金がかかることを告げて、アダルトビデオの撮影に従事させようとした」として、契約を解除できる「やむを得ない事由」があったとした。
女性の支援団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」は会見で、女性の手記を公開した。そこには、「一度でもグーグルの検索結果やネットの動画サイトに流れたものはなかなか消えません。忘れたくてもわすれることができないのです。私にとって一生つきあっていく問題です。いつ、どこで、誰に知られてしまうのか、わかりません。それに怯えて生きるのは苦痛です」と書かれていた。
今回の判決の意義について、伊藤弁護士は「強要された性的行為が一般に流布して、一生消えないという実態を考えたうえで、今回の判決に至ったと思う。裁判所は、本人の意に反して性行為させることが今後成り立っていかないことを示した」と語った。そのうえで、「今回のような悪質な強要や、違約金の脅しをなくさせるために、きちんとした法的規制が必要ではないか」と述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)