ふだんは目にすることのできないディープな世界を、爆笑問題が紹介する番組「探検バクモン」(NHK総合)。9月23日の放送は「日本最大の日雇い労働者の街」といわれる大阪あいりん地区、通称「釜ヶ崎」とその周辺を訪れた。
「ニッポン労働ブルース~人情編~」と題された今放送、爆問とサヘル・ローズが釜ヶ崎育ちのラッパー・SHINGO☆西成さんや、釜ヶ崎の生き字引・水野阿修羅さんと探索した。ネット上ではこんな驚きの声があがっていた。
「撮影禁止のこの街をNHKで見られるとは」
消費期限の怪しい30円ジュースを田中が飲む
前週の「浪花節編」に続く釜ヶ崎探検。人気漫画「じゃりン子チエ」の舞台にもなったこの地のソウルフードはホルモン焼き。店では一皿140円のホルモン焼きをお供に、昼間からすっかりできあがったおじさんたちで超満員だった。
名物ロードなる商店街では、タイガー顔プリントのシャツを着たおばちゃんが弁当を販売。おにぎり2つで100円、お弁当が200円と激安で、朝が早い労働者たちのために早朝4時から開けているという。
激安は釜ヶ崎では普通らしく、自動販売機を見れば50円や30円は当たり前。消費期限が怪しいと聞いて、30円のジュースを田中が恐る恐る飲む場面もあった。
昭和の佇まいが残る入り組んだ路地裏は、SHINGO☆西成さんが幼いころから遊んでいた場所。周囲に暮らす人たちは、何かと気にかけて声をかけてくれるような温かさがあったという。
さらに路地を巡ると、小さな神社の境内に「猫塚」が現れた。この周辺は戦前から戦後にかけて「てんのじ村」と呼ばれ、芸人が多く暮らしていた。旅芸人は三味線を使うため、皮に使われる猫の供養塔があるのだ。
「しゃべったらあかん人」の思い出語るSHINGO☆西成
かつて吉原とならぶ遊郭として名を馳せた「飛田新地」も訪れた。大正時代に造られ、2000人を超す女性が働いていた。大通りには「大門跡」という、巨大な石の柱が道路の両側に残っている。いまは大きな扉はないが、かつて遊郭は塀で囲まれ、この門だけが外の世界とをつないだ唯一の出入り口。遊女たちの厳しい境遇を偲ばせる。
現在は170軒の「料亭」として営業しており、戦災を免れた建物は当時の面影が残る。いまも飛田新地では、様々な事情を抱えた女性たちが働いているそうだ。
SHINGO☆西成さんにとっては、この界隈は小学校の通学路。働いている女性も、近所でいつも愛想よくあいさつしてくれるおねえちゃんだった。しかし高学年になれば何をしている街か分かるもの。ある時から、
「しゃべったらあかん人たちや」
と気付いて閉ざしてまった。そのとき、一瞬寂しそうな顔をされたのを覚えている、としんみり。それでも、ちゃんと見てもらえたら人情があってええ街やというのは分かってもらえるはずと、この地に対する熱い思いを語っていた。
太田光は「その日暮らし」の生き方を肯定
太田光は街ゆく人の気さくさや、日雇い暮らしで生きてきたおじいさんを挙げて、釜ヶ崎の人々の生き方を肯定していた。
「やっぱり性分ってあるよね。その日のカネがあれば、その日一日、それでオッケー。そういう生き方だってある」
日本一の高層ビル、「あべのハルカス」から1キロほどの地区にあるとは思えないほど、忘れられたように昭和初期の雰囲気を残した街だった。0.3平方キロメートルほどの小さなその地区には、哀しみや生きづらさを抱えながらも人情でつながる人たちが暮らしていた。(ライター:okei)
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