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乃木坂46の13th選抜に見る“清々しい攻めの姿勢”とは? 各ポジションの配置意図を読み解く

2015年09月29日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

乃木坂46

 すでに発表から1カ月が経った乃木坂46の13thシングル『今、話したい誰かがいる』の歌唱選抜メンバー。8月30日深夜放送の『乃木坂工事中』で解禁された20時間後には、明治神宮野球場で実施された全国ツアー『真夏の全国ツアー2015』の千秋楽で同曲を初お披露目するなど、有無を言わせぬスピード感で今回の新選抜体制をアピールした。


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 今回の選抜メンバーは、ここ2作続いていた18人編成から当初の16人編成へと縮小。もっとも、18人編成というのは、当時SKE48からの交換留学生としてグループに参加していた松井玲奈が加わることを考慮し、なおかつ「これ以上落とすには勿体ないメンバーが増えた」結果だったと個人的には考えているので、その風習を今一度見直して元に戻しただけではないかと受け取ることができる。そのへんについては以前のコラム(乃木坂46の今後を3つの観点で予想 新選抜メンバーに期待されることは?http://realsound.jp/2015/01/post-2284.html)に書いているので、ご確認いただきたい。


 さて、12thシングル『太陽ノック』選抜メンバーから2人減った今回の新選抜だが、実はそれほどメンツが代わり映えしていないことに不満を漏らすファンも多いと聞く。事実、前回の選抜から斉藤優里と新内眞衣を外しただけで、あとはポジションに変化があったのみ。これまではアンダーからの昇格や2期生の新規投入といったサプライズも用意されていたが、それも今回は皆無だ。なぜか? 実はこれが2015年後半から2016年初頭にかけての戦略なのではないかと、個人的には考えている。


 先述した今年1月のコラムで、私は11thシングル『命は美しい』で西野七瀬が3度目のセンターを務めることについて「西野を生駒や白石と同じくらい、世間に通用するメンバーにしたい」のではないかという運営の思惑について書いた(もちろんこれも私の勝手な想像に過ぎないが)。ご存知の通り、西野はその後WOWOWでオンエアされたドラマ『連続ドラマW 天使のナイフ』に出演したほか、4月からはピザハットのCMに単独出演。そしてに7月から9月にかけてオンエアされた乃木坂46主演ドラマ『初森ベマーズ』では、主人公と呼んで差し支えないポジションを務めたばかり。さらに2月には初のソロ写真集『普段着』を発表し、この春からは女性ファッション誌『non-no』の専属モデルとしても活躍するなど、西野の露出量はこの半年で一気に増えた。グループ内での人気は言うまでもなかったが、これを機に乃木坂46にあまり詳しくない層にも「あの可愛い子、誰?」とアピールしたのではないだろうか。


 そんな下地作りを経て、間に“乃木坂46の象徴”と呼ぶにふさわしい生駒里奈のセンター復帰というドラマを挟む。グループとしても勢いに乗っている時期、そしてAKB48との兼任解除というタイミングでのセンター復帰など、話題は揃っている。ドラマ出演やセブン-イレブンとの大型タイアップなども用意され、実際『太陽ノック』は過去最大のセールスを記録した。そうなった後で、グループに何が必要になるのか。そして年末シーズンを見据えた展開をどうすればいいのか。その答えが、今回の「鉄壁な布陣」なのではないかと予想している。『太陽ノック』で成功した布陣をあまり動かすことなく、フロントの見栄えを変える。中心には生駒と並んで“乃木坂46の顔”である白石麻衣と、着実に知名度を上げつつある西野という2強を据えた。これはもう年末のさまざまな催しに向けての「守り」というよりは、ひたすら豪速球を続ける「攻め」みたいなものではないだろうか。正直、ここまで清々しい「攻め」はないと思う。


 そして、白石&西野の両サイドを衛藤美彩、深川麻衣という年長組が固める。2人は初期こそアンダーからのスタートだったが、今では選抜に欠かせない人材だ。アンダーからフロントへと上り詰めたという事実も素晴らしいが、アイドル自体が若年齢化へと向かう中、それに逆行するかのように20歳超えの“大人メンバー”が並ぶ絵面も強いものがある。さらに2列目には初十福神入りとなった齋藤飛鳥、久しぶりの十福神復帰となった星野みなみがいることも忘れてはならない。フロントからスタートしてアンダーまで落ち、再び選抜へと返り咲いた星野と、初期こそ何度か選抜入りしたものの、昨年1年間はアンダーで活動してアンダーライブで地道な経験を積んだ齋藤という“次世代組”を投入するバランス感を取りつつも、秋元真夏、生田絵梨花、高山一実、橋本奈々未という安定メンバーも残す。選抜メンバー自体は前作からほぼ代わり映えしないものの、駒の位置を変えることで新鮮さを保つ。さらにそこには何かしらの意味を含ませつつ。


 となると生駒や、キャプテン桜井玲香が3列目に下がったことにも意味があるはずだ。センターからいきなり3列目へと“下げられた”と受け取れば、きっと生駒にとってはショックな出来事だったに違いない。しかし、もはや生駒にとっては立ち位置は問題ではないのではないかと考えている。どこに行っても輝けることをAKB48との兼任で証明した彼女は、今回の戦略で前回フォワードを務めた人間(生駒)がグループを指揮する人間(桜井)と一緒に最後列に回ることで、バックを固める。さらに同じ列には若月佑美、松村沙友理といった心強いメンバーや、井上小百合や伊藤万理華というアンダーライブからの叩き上げもいる。個人的には史上最強の「バック6」だと考えるのだが、いかがだろうか。


 と、ここまで読んで気付いた方もいるかもしれないが、乃木坂46の選抜メンバーは試合ごとに変わるサッカーのフォーメーションに似ている気がする。先日とあるインタビューで衛藤や深川と話した際にも同じ話題になったばかりで、メンバーもそのようなことを考えながら毎回それぞれのポジションで自身の役割に徹しているのかと納得したものだ。新たな可能性を感じさせつつも、ガチで年末のアレ……大晦日の国民的音楽番組に出演するというリベンジを果たすため、彼女たちは攻めなければならないのだ。


 選抜メンバーばかりに気を取られてしまったが、アンダーメンバーについても触れておきたい。選抜が16人編成に減少された理由の1つには、実はアンダーライブの強化も含まれているではないかと考える。12thシングル『太陽ノッック』のリリースタイミングはドラマ『初森ベマーズ』の撮影や『真夏の全国ツアー2015』があったことから、残念ながらアンダーライブを行う余裕が一切なかった。しかし、13thシングル『今、話したい誰かがいる』では選抜メンバーにほぼ動きがないことから、アンダーメンバーも変わらない。そんな中、10月中旬からアンダーライブがスタートし、年末には日本武道館での単独公演も決定している。これら一連の活動はアンダーメンバーにとっても正念場といえるだろう。そこに昨年のアンダーライブで中心的活躍をした斉藤優里と、一度選抜メンバーを経験した新内眞衣が復帰することで、新たな化学反応が起こるかもしれない。確変を迎えつつある中元日芽香、「センターデビューから今はアンダー」という経験を経てさらに一皮剥けそうな堀未央奈など、選抜と引けを取らない彼女たちは、すでに完成の域に達しつつある。だからこそ、アンダーメンバーにも新たな起爆剤が必要なのだ。斉藤や新内がアンダーにもたらすもの、そして武道館単独ライブへ向けた士気の高め方。彼女たちの躍進は、間違いなく2016年以降の乃木坂46に大きな影響を与えるはずだ。


 10月1日からは13thシングル選抜メンバーの3列目6人と斉藤&新内の計8人が出演する舞台『すべての犬は天国へ行く』が、AiiA 2.5 Theater Tokyoで上演される。そして10月15日からは同会場で『アンダーライブ 4thシーズン』がスタート。10月28日の13thシングル発売までも数々のスケジュールが組み込まれている。1年前と比べれば明らかに忙しさが尋常ではないだろうが、これを乗り越えた先に何が待っているのか。今から楽しみでならない。(西廣智一)