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BONNIE PINK、20年のキャリアと新たな始まり アニバーサリーライブをレポート

2015年09月28日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

BONNIE PINK

 BONNIE PINKが、デビュー記念日の9月21日(月・祝)にデビュー20周年アニバーサリーイヤーの幕開けとしてのライブ『BONNIE PINK 20th Anniversary Live “Glorious Kitchen“』を渋谷公会堂にて開催した。


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 会場にはオープニングSEと共にステージ上にあるスクリーンに20周年の「20」から「19」「18」……とカウントダウンが始まる。カウントが「0」に近づくと、ステージには“PINK”のドレスを纏ったBONNIE PINKとバンドメンバーが登場。記念すべき20周年のライブのオープニングを華々しく飾ったのは「So Wonderful」だ。BONNIE PINKはアコースティックギターを弾き、突き抜ける様な歌声が会場に開放的な空間を作っていく。「こんばんは! BONNIE PINKです! ついに始まりました! 盛り上がって行こう!」と会場のファンに告げると、ギターをタンバリンに持ち替え「Bad Bad Boy」へ。歌詞がスクリーンに映し出されるユニークな演出もあるこの曲は、BONNIE PINKが従える同ライブのバンド、鈴木正人(Ba.)、奥野真哉(key.)、八橋義幸(Gt.)、白根賢一(Dr.)をメンバーとした「Bad Bad Boys」のモチーフとなっている曲でもある。


 最初のMCでBONNIE PINKは「(デビューして)20歳になりました。この日ぐらいはいいかなと思って全身ピンクにしてきました。今日はいろんな曲を用意してきたので、知ってる人は楽しんで、知らない人は知ってるふりをして(笑)いっぱい楽しんでもらえたらと思います」と話すと会場は期待に満ちた歓声が上がった。続けて、シングル曲「カイト」を披露し、「5 More Minutes」ではサビの歌詞で会場にマイクを向けて一体感を作り出した。


 「20年活動しているといろんな時代の曲があって、3年間赤毛の時代があったんですが、そんな時代の曲を」と言って始まったのは、「かなわないこと」を皮切りとした「It’s Gonna Rain!」「Silence」「犬と月」のメドレーだ。彼女が赤毛のビジュアルで1997年に世に送ったセカンドアルバム『Heaven's Kitchen』にその多くが収められているが、滅多にライブで披露されることはなく、とても貴重なセットリストだ。


 「懐かしいね。いろんな曲があったな。プロデューサーのトーレ・ヨハンソンはスウェーデンにスタジオがあって。(プロデューサーとの関係は)必ずしも仲良し子良しじゃなくて、冷戦時代もあったりしてね。スウェーデンの景色が蘇るーー次の曲もそんな曲です」そう言って始まったのは赤毛時代の名曲「金魚」だ。トーレ・ヨハンソンをプロデューサーに迎えた曲たちは、ローファイかつエッジの効いたサウンド構成という特色を持つ。特に「金魚」は顕著にそれが現れていると言えるだろう。スクリーンには“金魚”が泳ぐ幻想的な映像が色濃く映える。ロックバンドとも思える激しいバンドサウンドから、一音のギターノイズが会場に暫く鳴り響くと、赤毛時代の代表曲と言える「Heaven's Kitchen」へ。“赤毛時代”という一つの物語の完結を見た会場のファンからは惜しみない拍手が贈られた。


 ライブ中盤、BONNIE PINKは「今年(作品を)出したかったんだけど、まだ煮込んでて。気長に待っててほしいなと。ライブはかかさず続けていこうと思ってますし、ツアーもこのメンバーでやっていこうかと思ってますので」とメンバーを紹介すると「Forget Me Not」を歌唱。すると、ステージ袖からゲストのtofubeatsが登場し用意されていたターンテーブルの前に立つと、スクラッチ音でバンド参加するサプライズもあった。


 そのままBONNIE PINKとバンドメンバーがステージからいなくなると、tofubeatsのBONNIE PINK live mixがプレイされた。BONNIE PINKの曲がマッシュアップされたそのミックスは「A Perfect Sky」から始まり、「Gimme a beat」「Tonight, the Night」「Last Kiss」と繋ぎ、2014年にBONNIE PINKをフィーチャリングとして迎えたtofubeatsの楽曲「衣替え」へ。メロウな雰囲気の中、ステージ袖からはピンクのドレスから白のシャツに“衣替え”をしたBONNIE PINKという何とも粋な登場の仕方だ。両者は宇多田ヒカル15周年記念アルバムに“tofubeats with BONNIE PINK”で参加しコラボを実現してきたが、ライブでは今回が初共演となった。共演を終えたtofubeatsは「ワーナーミュージックに入る3年前から作っていたものを今日はやりました。やっと陽の目を見ました」と笑いながらコメントしていた。後に、tofubeatsはTwitterで「年一の緊張で臨んでしまいました」とステージでの心境を明かしていた。


 tofubeatsがステージからいなくなると、BONNIE PINKは「BONNIEの曲を愛してくれて、いろんな視点で料理してくれるのは新鮮です。曲の途中でみんなも飛んでくれてその情熱が嬉しい。まだ行けますか!?」と会場のファンに問いかけ「You Got Me Good」を届け、BONNIE PINKの代表曲「A Perfect Sky」では観客席に巨大な赤、青のゴム風船が現れ、20周年のアニバーサリーとライブ終盤のハイライトを彩った。


 ライブ終盤、BONNIE PINKは「ファンと一緒の時代を共有してるっていいなって思ったんです。みんなでまだまだ高めて行けるぞって。30年、40年とかで終わってる場合じゃないので、これからも応援してもらえればいいなと思います」とこれからの抱負を述べると、続けて「最後は初期の曲。まだピアノで曲を書いてた頃の曲なんですけど、私を産んで育ててくれた父と母に捧げたいと思います」と告げ、セカンドシングルの「Surprise!」を熱唱しライブ本編を締めくくった。


 アンコールでBONNIE PINKは、「ギターで新曲を書いてるんですけども、ここで新曲をやろうかと思います。『Spin Big』。でっかく(Big)回転(Big)。人生で行き詰まったり悩んだりすることもあるけど、大逆転して明日はころっとやっていけるんだって。後ろ向きだったのが前向きに変わるような。そう考えていれば楽しくやっていけると思う」と新曲「Spin Big」へ込めた想いを語ると、ファンに向けて初披露した。3年2ヶ月振りとなる新曲「Spin Big」は、プロデュースに「A Perfect Sky」等も手がけたスウェーデンのプロデューサーチーム、盟友Burning Chickenが担当していることもあり、爽やかな楽曲だ。そして、ラストの<年齢も経歴も忘れてごらん そこに未体験の大回転>という歌詞が新しいBONNIE PINKの境地を現しているのだろう。


 最後にBONNIE PINKは「私もいろいろな経験をさせて頂いていましたがまだ未経験なことがありました。今年、一つ叶ったことがあります。結婚しました。皆さんに直接、報告したかったので今日、発表させてもらいました」とサプライズ発表をすると会場は拍手喝采となった。続けてボニーは「この先も曲も書くし、ライブもするし、何も変わらない。恋愛の曲も書くし、失恋の曲も妄想で書く。書かせてよ。ストーリーテラーなんだもん。アルバムも来年には出したい。待っててよ、みんな! 今日は楽しかったです!」と高らかにファンに宣誓し、最後の曲「鐘を鳴らして」を歌唱した。


 “20th Anniversary Live”ということもあり、新旧幅広い楽曲が披露されたBONNIE PINKの20年の歴史を総括するライブであった。BONNIE PINKは11月7日の高松MONSTER公演を皮切りに『BONNIE PINK 20th Anniversary TOUR 2015』を開催する。20周年はまだ始まったばかりだ。ツアーでは、彼女の歌声と更なる楽曲群から20年の歴史と新たなるスタートを感じ取れるだろう。(渡辺彰浩)