新生マクラーレン・ホンダで臨む、初めての日本GP。フェルナンド・アロンソは入賞圏内となる10番手を走行していた。しかし、26周目にDRSを利用したマックス・フェルスタッペンにホームストレートでオーバーテイクされてしまう。その直後、アロンソは無線で、こう叫んだ。
「こんなのGP2エンジンだ! みじめだよ!」
この日、ホンダの八郷隆弘社長が鈴鹿サーキットを訪れており、ホンダにとって7年ぶりの母国グランプリは、同時に“御前試合”でもあった。その重要なレースで、自チームのドライバーに無線を介して厳しい言葉をぶつけられたのだ。マクラーレンのロン・デニスは、アロンソがフラストレーションを感じていることに理解を示しつつも、アロンソの言動をたしなめた。
「プロのドライバーが、あのような発言をするべきではない。あのような発言をしても事態は好転しないからだ。ドライバーたちから聞こえる声の根底に流れているのはフラストレーション、落胆、そして失望だ。でも、それは我々も同じだ」
そして、地元グランプリで期待はずれの結果に終わったホンダに対して次のようにコメントした。
「今日はホンダから社長をはじめ、多くの関係者が来てくれた。彼らはマクラーレンとともにF1を戦っていくことに対してコミットしている。彼らは何をすべきか理解しており、それに対処できるだけのリソースもあり、予算もある。したがって我々は必ず目標を達成できるはずだ」
バトンの引退報道が渦巻くなか開幕した日本GP。レースが終わると、今度はアロンソのチーム離脱報道へと発展した。だが、デニスはふたりの離脱を否定した。
「ジェンソンとは2年間、フェルナンドとは3年の契約がある。何も変更されていないし、これからも変わることはないだろう」と、来季ふたりのドライバーが残留することは既定路線だと強調した。
ホンダにとっての母国グランプリで、ポイント獲得を果たすことはできなかった。しかし、ドライバーもチームも、現時点で発揮できるパフォーマンスを出し切ったことは間違いない。マクラーレンもホンダも、来季へのスタートは、すでに切っている。
(尾張正博)