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F速分析:タイヤを上手く使えているメルセデスともう1人の男

2015年09月27日 07:31  AUTOSPORT web

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ニコ・ロズベルグ
前日までとは打って変わり、好天に恵まれた今年の日本GP2日目。予選ではQ3終了間際にレッドブルのダニール・クビアトがヘアピンで大クラッシュを起こし、赤旗中断。そのままセッションは終了となり、ニコ・ロズベルグが実にスペインGP以来9戦ぶりのポールポジションを獲得しました。予選2番手には、もちろんチームメイトのルイス・ハミルトンがつけ、メルセデスAMG勢がフロントロウを独占。先週行われたシンガポールGPでの失速を忘れてしまいそうな、イタリアGPまでの速さと強さを感じさせる結果となりました。以下、中高速コーナーを得意とするウイリアムズのバルテリ・ボッタスが3番手、シンガポールで神業とも言える完勝劇を見せつけたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が4番手に入っています。

 さて、次はいよいよ決勝レース。2015年の鈴鹿を制するのは一体誰なのか? 金曜日2回のフリー走行はいずれもウエットコンディションだったために、ドライと目される決勝レースの参考にはなりません。そのため土曜日のフリー走行3回目では、アタックラップの練習を捨ててまで、序盤からロングランに徹するチームが多数ありました。

 フリー走行3回目の連続走行で、圧倒的な速さを見せたのは、ウイリアムズの2台です。彼らはハードタイヤを履いても、ミディアムタイヤを履いても、1分36秒台後半~1分37秒台で走行しました。しかし、同じタイミングでの他チームの連続走行時のペースは、1分38秒台後半~1分39秒台。ここから判断するに、ウイリアムズのペースは明らかに速すぎるため、彼らの燃料搭載量は非常に軽かったということが想像できると思います。なのでここでは、デグラデーション(タイヤの性能劣化による、ペースへの影響)についてのみ、考察してみることにします。

 まずバルテリ・ボッタスはハードタイヤを履いてコースイン。1分37秒台前半のタイムを5周にわたって計測しています。この時のデグラデーション値は0.092秒/周でありました。一方、ボッタスがミディアムを履いた時は1分36秒台後半で走りはじめ、5周目にもほぼ同じタイムを計測しています。つまり、ボッタスのデグラデーション値はほぼゼロに等しいということになります。いずれも5周程度の連続走行なので、ロングランとは言えない内容ではありますが、チームメイトのフェリペ・マッサに比べると、非常に上手くタイヤを使えていることが分かります。

 マッサはミディアムタイヤを履き6周の連続走行を行いました。彼はボッタス同様1分36秒5で走り始めるのですが、1周ごとにペースを落とし、6周目には1分38秒0を記録しています。ここから計算すると、マッサのミディアム時のデグラデーションは0.253秒/周と非常に大きいもの。ボッタスは決勝でも上位進出を狙えるかもしれませんが、マッサはミディアム装着時に苦しむことになる……そう読むことができると思います。

 前回優勝のフェラーリは、セバスチャン・ベッテル、キミ・ライコネン共にミディアムタイヤを履いてロングランを実施しました。このロングランから、ベッテルは0.156秒/周、ライコネンは0.095秒/周と、若干大きめという印象です。

 逆に前戦2位表彰台だったレッドブルのダニエル・リカルドは、実に素晴らしいロングランを行いました。ペース自体はそれほど速くないものの、ミディアムタイヤを履いて8周の連続走行を行い、デグラデーションはほぼゼロ。予選では7番手に終わってしまいましたが、このタイヤへの優しさを活かし、戦略の自由度を活かして上位進出を狙える可能性を感じさせます。そういう意味ではトロロッソのカルロス・サインツJr.のペースも秀逸。デグラデーションは0.136秒/周と、ミディアムタイヤとしてはまずまずの数値を残しています(一方、チームメイトのマックス・フェルスタッペンは、0.164秒/周と若干高めでした)。

 さて、今季最強ながらも、シンガポールでまさかの失速を演じてしまったメルセデスAMGの2台のペースはどうでしょうか? ハミルトンは3周の連続走行しか行っていないので算出は難しいですが、ロズベルグの方は6周のロングランをハードタイヤで行いました。この時のペース自体は前出のフェラーリなどとほぼ一緒でしたが、デグラデーションはなく、走るごとにペースを上げていく……という状態。つまり、タイヤを路面にしっかりとグリップさせ、マシンを滑らせずに走らせているということ……であろうと思われます。シンガポールでは「タイヤを上手く使えていない」と訴えていたメルセデス陣営ですが、ここ鈴鹿ではしっかりとタイヤを使えている印象。鈴鹿サーキットのレイアウトがもたらしたものなのか、持ち込まれたタイヤが前戦とは違う(シンガポールはソフトとスーパーソフトだったのに対し、鈴鹿にはハードとミディアムという、もっとも硬いコンパウンドのタイヤ2種類が持ち込まれている)からなのか、それとも気温なのか、それとも対策が間に合ったのか……どれが正解なのかは分かりませんが、いずれにしてもメルセデスAMGが、前回のような状況に陥ることはなさそうです。

 となると、オーバーテイクが難しい鈴鹿では、フロントロウからスタートするメルセデスAMGの2台が、優勝に最も近いのは間違いありません。ただ、予選で2列目につけたボッタスとベッテル、特にタイヤを上手く使うことができていると想像されるボッタスがスタートで先頭に立つようなことがあれば、繰り返しになりますがオーバーテイクが難しい鈴鹿では、レースの最後まで逃げ切ってしまう可能性もなくはないと思われます。ただ、この対策なのかどうかは分かりませんが、今回のメルセデスAMGは、最高速を非常に重視したセッティングを採用しているようです。予選でのスピードトラップ最高速度は、ロズベルグ315.5km/h、ハミルトン315.1km/hと圧倒的なもの。ベッテルやボッタスよりも7km/hも速いのです。この武器を使い、たとえスタートに失敗しても、早々にライバルを交わすことを狙っている……のでしょうか?

 さて今年の日本GPは、いったいどんなレースになるのか? 決勝スタート時には晴れの予報となっていますが、夜のうちは雨とのこと……。とにもかくにも、世界最高のコース、鈴鹿サーキットでの1戦、ぜひお見逃しなく。

(F1速報)