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川島なお美、女優としての仕事とその人柄ーー岡田惠和作品ではコメディのセンスも

2015年09月26日 08:31  リアルサウンド

リアルサウンド

川島なお美オフィシャルブログ「『なおはん』のほっこり日和

 女優・川島なお美が胆管がんのため、24日に逝去した。享年54歳だった。昨年1月にがんが発覚し、摘出手術を受けたが、術後は抗がん剤や放射線治療を一切受けずに、免疫療法を向上させる食事療法や運動を実践してきたという。最後まで女優として生き、再び舞台に立つことを願ったうえでの選択だったとのことだ。


参考:浜辺美波は『あの花』めんま役にふさわしい? 女優としてのポテンシャルを検証


 川島なお美は1979年、青山学院大学文学部在学中に女子大生アイドルとして芸能界デビュー。ラジオ番組『ミスDJリクエストパレード』(1981年、文化放送)のDJや、テレビ番組『お笑いマンガ道場』(1982年、中京テレビ)などへの出演で人気を博した。90年代半ばには、テレビドラマ『イグアナの娘』(1996年、テレビ朝日)や『失楽園』(1997年、読売テレビ)といった作品で女優としても評価を高めていく。ドラマ評論家の成馬零一氏は、女優としての川島なお美を次のように評している。


「川島さんの一般的な代表作というと、やはり渡辺淳一さん原作の『失楽園』が挙げられますが、個人的にはその前後に出演した『イグアナの娘』や『可愛いだけじゃダメかしら?』など、岡田惠和さんが脚本を手がけた作品の演技が印象に残っています。『イグアナの娘』では、娘を愛することができない母親・青島ゆりこをシリアスに演じて評価されましたし、コメディタッチの青春ドラマ『可愛いだけじゃダメかしら?』では、地味な女性教師を演じ、上品でかわいらしい笑いを生み出していました。特に後者では、コメディ女優としての才覚が発揮されていて、個人的にも好きでしたね。また、『家なき子2』や任侠ものの映画では、冷酷なイメージの女性も演じ、女優としての幅広さを見せていました。色気のある大人の女性というイメージだけではなく、実は笑いのセンスも持っていて、様々な役柄に挑戦できる女優だったという印象です」


 また、タレントとしての振る舞いにも、独特のユーモアが感じられたという。


「当時、毒舌コラムで人気だったナンシー関さん(1962年~2002年)は、川島さんからある日突然、ワインが送られてきたというエピソードを披露しています。ナンシー関さんは川島なお美さんのこともたびたびネタにしていたのですが、川島さんはそれに対して怒るのではなく、大好きなワインで返答したんですね。ナンシー関さんが「このワインは挑戦状なのか? 懐柔策なのか?」とみんなで議論した。と、面白おかしく書いていたのをすごく覚えています。後に川島さんは『評伝ナンシー関』(著・横田増生)の中で、ナンシー関のコラムに対して「愛情の裏返しと解釈していた」、ワインを送った理由については「感謝をこめたラブレターに等しいものでした」とコメントしています。どこまで本音だったのかは、今となってはわかりませんが、彼女自身のキャラクターを踏まえた、とても気の利いた返答だなぁ。と、感じたものです。自分が世間から、どのように見られているのかに対し、とても自覚的で、しかもそれをプラスに転じることができるのも、川島さんの強みであり、表に立つひとならではの振る舞いだったのではないでしょうか」


 「私の血はワインが流れている」などの名言でも、世の中を楽しませてきた川島なお美。最後まで女優としての人生を全うした彼女の冥福を祈りたい。(リアルサウンド編集部)