「期待されたパフォーマンスを発揮できていないんだから、僕たちはファンからの批判を甘んじて受けるべきだ」
ホンダのホームコースである鈴鹿でマクラーレン・ホンダの一員として初めて臨む日本GPにコメントを求められたフェルナンド・アロンソは、そう答えた。そして、こう続けた。
「鈴鹿ではQ3へ進出するどころか、Q1を突破するのも簡単ではない。でも、それはウインターテストが始まった2月からわかっていたこと。開幕戦でトップから5秒も離されていたマシンが、鈴鹿で表彰台を狙えるほど、F1は甘くない」
その言葉を示すように、マクラーレン・ホンダの初日のフリー走行の結果は、ジェンソン・バトンが12番手だったが、アロンソは17番手に終わった。しかも、アロンソはフリー走行1回目の終盤に、燃料系に関して不安なデータが発見されたために、アロンソをピットに戻して、パワーユニットの交換を決断した。
フリー走行2回目がスタートしても、アロンソがチームホスピタリティハウスに私服のままとどまっていたのは、そのためだった。そんな状況でも、しかし、ホンダのホームコースである鈴鹿での戦いをあきらめているわけではない。アロンソは言う。
「このような状況だけど、チームは全員がそれぞれの100%の力を振り絞って取り組んでいるからね。あらゆるエリアの状況を改善しようと皆が24時間働いている。それは、マシンを開発しているチームスタッフだけではない。時にはドライバーだってミスすることもあるから、僕たちだって、まだまだ改善しなければならないことはある」
雨が降る中、始まったフリー走行2回目。ガレージではマクラーレンとホンダのスタッフたちが懸命にアロンソのパワーユニットを交換していた。アロンソがチームホスピタリティハウスに退いていたのは、アロンソが午後の走行をあきらめていたからではなく、ガレージの中にとどまって、彼らに無用なプレッシャーを与えたくないからである。その証拠にアロンソのフィジオ(理学療法士)が、アロンソの代わりにチームホスピタリティハウスとガレージの間を何度も往復し、状況の確認を行っていた。
開始から48分。パワーユニットの交換を終えたアロンソは、インスタレーションラップを行った後にガレージに戻って16分間マシンをチェックした後、再びコースイン。チェッカーフラッグが振られる午後3時半まで、雨の中を走り続けた。それは単に雨の中、スタンドから声援を送ってくれるファンのためではなく、ホンダの未来のために少しでも多くの走行を行い、データを集めるためだった。
マクラーレン・ホンダのマシンがまきあげた水しぶきの後に、未来へと続く轍が見えたような気がした日本GP初日だった。
(尾張正博)