2015年09月25日 12:11 弁護士ドットコム
婚約者の両親が建てた家の建築費を支払わなければいけないのか――。そんな相談がインターネットの掲示板に投稿されて話題になった。
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投稿したのは、22歳の女性で、来年に結婚予定だ。婚約者の両親(義父母)は「同居は嫌だろう」という気遣いから、今の家の近所に新しい家を建てて、移り住んだ。もとの家には女性と婚約者が住む予定だ。
ところ、義父母から、若い2人で新居の建築費4000万円のローンを支払うよう求められた。新居の設計について、女性の意見が聞かれることはなく、確定した建築費を教えられただけだった。女性は4000万円のローン返済を想像して「ぞっとした」「2000万円に下げてもらえないのか」と悩んでいる。
また、婚約者は親に逆らえない性格ということで、「結婚までこれだけ考え方が違うのはもうだめかも」「彼のことは好きですが、婚約破棄も考えて話し合いをしたい」と悩みを打ち明けている。女性の悩みにどう応えればいいのだろうか。石川和弘弁護士に聞いた。
「義父母の新居のローンを支払う義務はありません。義父母との間で、新居のローン相当額を支払う約束をしていないからです」
では、どう解決するのがいいのだろうか。
「話し合いによる解決策として妥当なのは、相談者の女性と婚約者が、古いほうの家について家賃相当額を義父母に支払うという方法だと思います。ただ、そもそも、古い家にも住まないという選択肢もあると思います」
今回の問題を理由に婚約破棄はできるのだろうか。
「婚約していても、結婚をすることが強制されるわけではないので、女性は婚約者に対して、結婚する意思がないことを伝えることで婚約を破棄できます。
ただ、婚約破棄に正当な事由がない場合、女性は婚約者に対して、損害賠償義務を負うことがありえます。すでに結婚式の準備をしている場合のキャンセル料といった財産的な損害のほか、婚約者の精神的苦痛に対する慰謝料も支払わなければなりません。
今回のケースが婚約破棄の正当事由にあたるかどうかは、義父母が無茶な要求をしているというだけでは足りず、婚約者の態度がポイントとなります。
婚姻生活の生活費に関することにもかかわらず、婚約者が女性の言い分を聞かず、義父母の要求をただ受け入れるだけというようなケースであれば、正当事由があると判断される可能性が高いでしょう」
石川弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石川 和弘(いしかわ・かずひろ)弁護士
平成9年弁護士登録。主たる取扱い分野は、建築、不動産、交通事故、相続。モットーは、「分かりやすい説明と迅速な対応」
事務所名:弁護士法人札幌・石川法律事務所
事務所URL:http://ishikawa-lo.com/