日本を訪れる外国人旅行者は急激に増えており、経済効果は2014年に2兆円を超えた。ただ一口に「外国人観光客」といっても、お国柄によって訪日目的は違ってくる。
中国人が買い物なら、ミャンマー人は鎌倉に大仏を拝みにやってくる。9月15日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、「外国人」をひとくくりにせず、国別のニーズをつかんでビジネスにつなげる動きを紹介した。
ツアー中の食事はインド料理店でカレー
訪日外国人を専門とした大阪の旅行会社「フリープラス」が急成長している。8年前に創業し、従業員100人のうち40人が9か国の外国人スタッフ。国ごとに違う細かい要望に応えているのが人気の秘密で、各国担当者からは目からウロコの答えが返ってくる。
「ベトナム人には、ざるそばなど冷たい料理を手配してはダメ」
「フィリピン人には寺や神社は1か所でいい。ワーワー騒ぐのが好きなので」
東京・大阪間のツアーといえば「京都」「名古屋」「富士山」などが定番。しかしこの会社がインド人を案内するのは、広島の「平和記念資料館」だ。インド人は中学の教科書で、広島のことを学んだ経験があるのだという。
資料館を真剣な面持ちで回ったインド人旅行者は、「日本人が経験した悲しい歴史を感じたい」と訪問の理由を語った。
ツアー中の食事は、日本食よりインド料理店でカレーを食べる。「旅先ではその土地のものを食べる」という認識も、万国共通ではないことに気付かされる。
一方、ミャンマー人のツアーで外せないのが「鎌倉の大仏」。鎌倉は、彼らにとって憧れの場所。大仏前に到着すると靴を脱いで裸足になり、正座してひれ伏すようにお参りをする。みやげ物屋では全員が、大仏の置物を大量に購入していた。
「外国人観光客に何を売ればいいか」市場調査も始まる
フリープラスの須田健太郎社長(30歳)は、もともとIT企業に勤めていた。2003年に政府が「観光立国」を掲げたことで訪日外国人が増えると考え、この事業を立ち上げた。「訪日観光市場は1つじゃない。1つひとつの国で、求められていることが違う」と断言する。
須田さんはツアーをつくる際、必ずターゲットとする国を訪れ、細かくリサーチを行う。街の人たちにも声をかけ、要望をすくい上げていく。中東向けのツアーを作る際にアラブ首長国連邦(UAE)の旅行会社を訪問すると、担当者が驚いていた。
「日本の旅行会社がここまで来て要望を聞いてくれるなんて、これまでなかったよ」
これまで20の国と地域、16万人以上の訪日客を受け入れてきた経験を生かし、須田さんは今年3月に訪日客のマーケットリサーチの代行業を始めた。「外国人観光客に何か売りたくても、どういうものを好んでいるか分からない」という企業の悩みに目を付けたのだ。
男性化粧品大手「マンダム」の依頼で、男性用汗ふきシートを中国人ツアー客3000人に使用してもらうと、中国向け商品開発に役立ちそうな生の声を集めることができた。
観光客のSNSから消費動向を分析する会社も
番組ではこのほか訪日外国人の国別ニーズをあぶり出すサービスを展開する企業2社を紹介。観光客がアップするSNSから訪日外国人の消費動向を分析する「ナイトレイ」。外国人に特化した人材派遣会社「グローバルパワー」は外国人の「覆面調査員」を店舗に派遣し、国別に適切な接客態度ができているか調査する新サービスを始めた。
こうしたベンチャー企業の矢継ぎ早の攻勢を見ると、「国別ニーズを捉えるニーズ」の急速な高まりを感じる。それと同時にUAE旅行社の担当者の言葉から「今まで現地に要望を聞きに行く日本企業がなかった」ということに驚いた。その旅行社に行かなかっただけかもしれないが、ちょっと遅すぎる対応ではないだろうか。(ライター:okei)
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