2015年09月22日 11:31 弁護士ドットコム
自民党の受動喫煙防止に取り組む議員連盟が9月上旬、来年度の税制改正で「たばこ税」の引き上げを求める要望書をとりまとめた。現在は一箱430円ほどの価格だが、これを増税によって「一箱1000円」とするよう求めている。
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報道によると、9月2日に開かれた同議連の会合では、日本のたばこの価格がアメリカやイギリスなどに比べて低いことが指摘された。そのうえで、2016年の税制改正で増税をおこなって、一箱1000円に引き上げるよう求めていくことを決めたという。
こうした議論を受けて、ネット上では「禁煙するチャンス」「1000円とかまだ中途半端だ」「喫煙者はマジでデモ起こそうぜ」などさまざまな反応が起きている。はたして、議連が求めるように、たばこ税を増税すべきだろうか。李顕史税理士に聞いた。
「たばこ一箱1000円に増税するという意見に、私は賛成です」
李税理士はこのように、自身の立場を明らかにする。どんな理由があるのだろうか。
「諸外国とくらべても、日本のたばこ価格は低いと言われてます。外国に目を向けると、イギリスでは一箱1000円を超えています。
しかし、一気に1000円に値上げすると、喫煙者人口は確実に減少するでしょう。一箱あたりの税額が大幅に上昇する一方で、全体の売上が減って税収も減少する可能性があります。なので、値上げによって税収が増えるかどうかは、慎重に見極めなければなりません。
個人的には、税収が増えるかどうかは微妙なところだと思います。ちなみに、JTによると、一箱430円の場合、たばこ税は276円にもなるそうです」
李税理士はさらに別の理由を付け加える。
「喫煙は、喫煙者の健康を損なうといわれています。生命保険で、非喫煙者の保険料が安くなるのは、そのほうが健康であるという統計データがあるからでしょう。
また、喫煙者人口の減少は、医療費の削減にもつながるでしょう。以上から、私は、たばこ一箱1000円に賛成です」
たばこ税といえば、2010年10月に大幅な増税があったことが記憶にあたらしい。どうして、「たばこばかりヤリ玉にあがるのか」といった声も聞こえてきそうだ。
「これは私の意見ですが、喫煙者は高い税金を払ってでも、吸いたいのです。逆にいえば、国や地方自治体が税金を取りやすい分野といえます。お酒にかかる酒税も同様のことがいえます。
消費税が初めて導入されたときや、増税があったときを思い出してください。当時の政権はその後の選挙で敗北したり、退陣に追い込まれたりしました。この点、たばこ税は利害関係者が少ないので、増税しやすい税金ともいえます」
最近、たばこが吸える場所が少なくなり、喫煙者は肩身の狭い思いをしているわけだが・・・。
「たしかに、公共の喫煙スペースは、たばこの煙でモクモクしていますね。
私はたばこを吸わないのですが、たばこはビジネス上良い面もあります。非公式なコミュニケーションや情報交換の場となっているからです。
ビジネスでは、そんなコミュニケーションが思わぬところで役立つことがあります。また、喫煙者が減ると、世代を超えたコミュニケーションの場も減ります。それは寂しいでしょう」
李税理士はこのように述べていた。
【取材協力税理士】
李 顕史(り・けんじ)税理士
李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、困っている経営者の役に直接立ちたいとの想いから2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、銀行等にもアドバイスを行っている。
事務所名 : 李総合会計事務所
事務所URL:http://lee-kaikei.jp/
(弁護士ドットコムニュース)