フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンは、シンガポールGPのスタートを無難に決めた。ホンダの新井総責任者も「ふたりとも非常にいいペースで、特にアロンソは何の問題もなかったようで、無線でしゃべりかけてくることもなく、静かにレースをしていました」と前半は静かに見守っていた。
アロンソは10周目に1回目のピットストップを済ませたが、その直後、13周目にセーフティカーが導入される。
「あのセーフティカー導入は、その直前にピットストップを済ませていたアロンソにとっては厳しい展開となりました」(新井総責任者)
それでもアロンソはハンデを克服するかのように、履き替えたソフトタイヤで次のピットストップまでプッシュを続け、26周目からはポイント圏内を走行する。
ところが、その後ギヤボックスがオーバーヒートする問題を抱えて、33周目にピットイン。マシンをガレージに入れ、リタイアとなった。これで1台だけになったバトンは第2スティントで装着したソフトタイヤの感触が良く、徐々にポジションをアップ。アロンソがリタイアする前の29周目からポイント圏内に突入していた。
「スーパーソフトはフロントタイヤに熱を入れにくかったせいか、なかなかグリップを得られませんでしたが、ソフトのほうは非常にいいペースで走ることができた。そう考えると、レースへ向けたセットアップはうまくできていたんではないでしょうか」
ソフトタイヤでのペースが良かったマクラーレンは、2回目のセーフティカー時にバトンをピットに呼んだときも、再びソフトタイヤを装着してコースへ送り出す。レース再開後、10番手のバトンは前を走るパストール・マルドナドとテール・トゥ・ノーズの戦いを演じた。しかし、41周目に2台は接触。バトンはフロントウイングを破損して、緊急ピットインを強いられた。
「こちらのほうがペースが速かったし、行けると思ったんでしょう。仕方がない」と新井総責任者。さらにバトンはウイングを交換したあとも、あきらめずに再びポイントを目指して前との差を詰めていった。
ところが、そんなバトンのマシンにトラブルが発生する。アロンソと同じギヤボックスのオーバーヒートだった。
「ギヤボックスは完全に壊れたわけではないのですが、これ以上走らせてダメージを大きくすると今後に響いてしまうので、チーム側がリタイアを決断しました」
バトンも53周目にガレージにマシンを入れて、レースは終了した。
「一時は2台ともポイント圏内を走っていたので我々も期待していましたが、2台ともギヤボックスがオーバーヒートしてリタイアという結果に終わってしまった。バトンのほうは(逆転を狙い、レース終盤に向けて)エネルギーマネージメントしていただけに悔やまれます。不得意ではないコースで3日間チームが一丸となって、すごくいい仕事をしていたんですが……」
結果を残すことはできなかったが、デプロイの課題が問題にならないコースでは、2台そろって入賞できる手ごたえを感じ取ったホンダ。現状の課題を認識しつつ、胸を張って鈴鹿に帰ってきてほしい。
(尾張正博)