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三上博史主演の舞台を編集部がレポート

2015年09月21日 00:02  オズモール

オズモール

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今回編集部が注目する舞台『タンゴ・冬の終わりに』は、清水邦夫書下ろし、蜷川幸雄演出により、パルコ劇場で1984 年に初演された傑作。この渾身の名作を、映画監督である行定勲が新たに演出し、さらに三上博史が主演するというからどう生まれ変わっているのかとても気になる…。さっそく編集部員が劇場へ急いだ。

◆古びた映画館を舞台に交差する、さまざまな人間関係

スクリーンでいきなり映画の上映が始まったのでなんだ?と思ったら、どうやら舞台は古い映画館。三上博史演じる主人公・清村盛は舞台俳優だったが3年前に突然引退を宣言し、その妻のぎん(神野三鈴)とともに故郷に引きこもっている。隠棲先は盛の生家である、日本海に面した街にある古びた映画館・北国シネマ。そこで物語が進行する。巨大なシネコンが台頭している現在から鑑みると、この1980年代の匂いが漂う町のさびれた映画館は、とても雰囲気があって引き込まれる。これを映画監督が演出をしているのを考えるとなんだかとても感慨深い。その映画館に倉科カナ演じる女優・名和水尾と、その夫である俳優・連(ユースケ・サンタマリア)がやってくることで物語が進展する。

◆三上博史、倉科カナ、ユースケ・サンタマリアらの情熱的な演技に注目

三上博史は元舞台俳優という役柄なだけに、テレビとは違う、舞台の顔を思う存分見せてくれている。演技がとにかく情熱的で、体全体で何かを伝えようとしてくれているのを感じる。それは、役者としての怨念みたいなものに取りつかれているかのような気配すら感じる。それにテレビではふんわりとした印象のある倉科カナも、新進女優の役で強さのある女を演じきっている。声の出し方もしっかりしていて、今回の出演者の中で1番今までのイメージを打ち破っている感じがした。ユースケ・サンタマリアは時に真面目に、時にユーモラスに、舞台に観客を惹きつけていてまさに適役といった感じだった。

◆感情をぶつけ合うやりとりに、思わずつばを飲む

今作の見どころはなんと言っても、三上博史と倉科カナの激しいやりとり。それはかつての愛を再現するものであったり、罵倒するシーンであったり。お互いが感情を高ぶらせながら言い合いをしている様は、実に生々しく官能的にも感じる。この2人になにがあったのかを考えつつ、狂おしくタンゴを踊る2人のラストをぜひ劇場で目撃して!
(撮影/引地信彦)