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ファブリーズの長男=高杉真宙の魅力は“品格”と“ちょいダサ”にあり!?

2015年09月20日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『高杉真宙 Photo Collection METAMORPHOSIS』

 あるときは何でもかんでも消臭スプレーぶっかける松岡修造一家の長男、またあるときは堀北真希の仲良すぎる弟、またあるときは親友に恋する合唱部員、またあるときは料理上手で優しい理想のお兄ちゃん……。今一番「名前は知らないけど顔は知ってる」男子、そして今一番おばちゃん界隈をアツくさせている「長男」、それが高杉真宙である。


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 彼の名、いや顔を全国に知らしめたのは、やはりファブリーズのCMだろう。やたらハイテンションな修造お父さんと、このお父さんとどこで知り合ったのか、全身にアングラ感を匂わす平岩紙お母さんの間に生まれし長男。黒髪をきれいな七三に整え、華奢な身体をトレードマークのチルデンセーターに包む。雄の成分をとことん抑えた仕上がりである。世の中にこんなにも「除菌」という言葉が似合う少年がいるのかと度肝を抜かれた方も多いのではないだろうか。


 もちろんこの逸材をアノ人たちが放っておくわけもない。そう、天下の東海テレビである。今年『明日もきっと、おいしいご飯~銀のスプーン~』で見事主演をゲット。昼ドラというおばちゃんたちの心のグルコサミンで、高杉真宙のそんな魅力は一気に開花した。容姿は淡麗、成績は優秀、そして優しいお兄ちゃん。母の入院に際し、きょうだいのために一生懸命料理を作るエプロン真宙に、昼ドラ視聴者は完全にノックダウンされた。


 昼ドラで求められるのはいわゆる「イケメン」ではない。LDH系の黒光り感もジャニーズのチャラっぽさもなぜかここではその役割を満たせない。昼ドラ男子に必要なのは絶対的な品と、そこに漂うちょいダサ感。「男前なのにいまだにお母さんが買ってきたしまむらの服着てるわ~」という甘酸っぱい残念さが、女たちの心を癒しすり減った膝軟骨を再生させる。東海ドラマ制作の名ドラマ『幸せの時間』をご存知だろうか。西村和彦と田中美奈子夫妻に神楽坂恵がバイ~ンと割って入るドロドロドラマだが、その西村と田中の長男役として輝いていたのが、上遠野太洸だった。この上遠野もまた高杉と同じく抜群のツラの良さにしまむら要素が合わさり、昼ドラツイッター界では圧倒的な人気を誇っていた。上遠野と高杉、この両エースがいれば昼ドラはしばし安泰のはずである。しかし悲しいかな、みんな活躍するとメジャーに行ってしまう……。


 さて話を戻して高杉くん。現在は『表参道高校合唱部!』で男子合唱部員として出演している。高杉の武器の一つであるナチュラルにビブラートがかかった声。それを合唱という形でストレートに堪能できるだけでもファンとしては嬉しい限りだが、宮崎祐という役柄がこれまた非常に高杉の「品」と「ちょいダサ」を引き立てている。『銀のスプーン』でも、品行方正・成績優秀・眉目秀麗なお兄ちゃんに「お母さんだと思っていた人と本当は血が繋がっていなかった」という過酷な運命が待ち受けていた。宮崎祐も、性格穏やかな隠れイケメンでありながら、クラスのリーダー各女子に窃盗の濡れ衣を着せられて登校拒否になってしまったり、親友男子を好きになり合唱部を辞めようとしたり、部員の中でも圧倒的に波乱万丈な物語を課せられている。これはもう「そういうことさせたくなる顔」としか言いようがない。人生の荒波にポンっと放り出したくなるような、そんなS心をくすぐられる男、それが高杉真宙なのかもしれない。しかし言い換えればどんな荒波にも揺るがない気高さが、彼にはあるということだ。人知れず親友に恋して「自分は異常なのではないか」と悩む宮崎。告白したものの「キモイ」と言われ、深く傷つくその姿に何人の視聴者が「キモくない! キモくない!」と絶叫したことだろう。ライトめな若手イケメン俳優では出せない(妙な)説得力が観る側の人間を宮崎祐に引きずり込む。ダメなのよ、志尊淳くんじゃおそらくダメなのよ!!


 初の写真集『METAMORPHOSIS』では妖艶な女装姿も披露した高杉。そういえば上遠野もニューヨーク女装バレエ団「グランディーバ」に武者修行に行ってたな……。品とダサさ、清潔感と倒錯性。一人称「僕」が誰よりも似合う高杉には、いつかまた昼ドラの世界に戻ってきて筆者の膝関節痛を癒して欲しいと願うばかりである。(西澤 千央)