いまインドネシアでは緑茶のペットボトルが流行し、タイでは抹茶チキンライスが売り上げを伸ばすなど、世界的に緑茶の認知度と人気は上がっている。9月7日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、これに乗じて緑茶市場を開拓しようと海外に乗り込んだ日本人たちの奮闘を紹介した。
アサヒグループホールディングスは2013年から、インドネシアの緑茶ペットボトル市場を狙ってインドネシアに進出したが、営業の入部さんは「本音で言うと、全然ダメですね」と残念顔。地元メーカーが9割のシェアを占め、せっかく入荷させてもらっても店の隅に押しやられて売り場にも出してもらえない状況だった。
抹茶アイスはアメリカからの逆輸入だった
そこで入部さんが行ったのは、「ラマダン」(断食月)に街路で車やバイクの人に直接売る方法だ。日没後の最初に甘いものを食べるのが一般的で、インドネシア人の味覚に合わせた甘い緑茶を、帰宅途中の人たちに売る作戦だ。
少し価格を下げたこともあり狙いは当たり、用意した緑茶は飛ぶように売れていた。断食明けを祝う「レバラン」の帰省バスの中でも好調な売れ行き。入部さんは完売を喜び「予想以上に売れました」と笑顔をみせた。
緑茶ブームは、健康志向のアメリカ人の間でも起きている。日本からの茶葉の輸出も増えており、15年間で6.5倍、78億円にもなる。ブームの仕掛け人として紹介されたのが、長崎の老舗茶屋に生まれた前田拓さんだ。
1984年にアメリカで「前田園」を開いたが当初はまったく売れなかったが、1993年にアイスクリームに入れて売り出したところ大ヒット。日本でも大手メーカーがこぞって抹茶アイスを販売しているが、それはアメリカからの逆輸入だったそうだ。
今後はアメリカに抹茶カフェのチェーンを展開する予定で、国と民間が出資するファンドである「クールジャパン機構」の後押しもあり、さらに抹茶ビジネスを広めていく。
タイでは茶道教室も盛況「日本より反応がいい」
抹茶ブームは、タイでも起きていた。緑色のごはんも鮮やかな「抹茶チキンライス」や「抹茶カレー」など不思議メニューが流行。オリジナルで「抹茶カルボラナーラ」を作る一般家庭の主婦は「脂っこい料理は嫌いだけど、抹茶が軽減してくれるわ」と話す。どうやらタイでも健康ブームらしい。
タイの抹茶ブームに一役買っているのが、島根県松江のお茶屋「中村茶舗」の4代目・中村寿男さんだ。厳しい国内市場から飛び出して海外に活路を見出すべく、2007年に日本茶カフェ「チャホ」をオープンした。
本格的な抹茶をたてながら作法まで教えてくれるため、「日本文化に触れられる」と若者たちに大人気。定期的に茶道教室も開いており、中村さんは「日本より反応がいい。他の国でもまだ伸ばしていけるのではないか」と展望を語った。
こうした努力の成果はあるものの、アメリカの緑茶輸入量は中国が70%、日本は7%ほどと大きく水を開けられている。理由は価格の違いだ。キロ当りの単価は日本が約22ドルのところ、中国は約3ドルしかない。
価格で負けても「中国の富裕層向け」なら勝てるかも
それでも、日本経済新聞社・編集委員の鈴木亮氏は「中国は抹茶をほとんど作っていないため、日本の可能性は高い」と力説した。さらに、日本茶の品質を一番評価しているのは意外にも中国、という調査結果もあった。番組ゲストのパックンも、こう指摘した。
「富裕層が増えている中国。安全性の高い本物の緑茶・抹茶が飲みたいなら日本産になる」
草の根的な活動に、国の支援も加わり抹茶市場は海外でまだまだこれから伸びるとみられている。商機を活かして高品質の茶葉で勝負できるよう、生産者・販売者ともここが正念場といったところだろうか。(ライター:okei)
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