これまでの7月開催から9月開催へと変わったスーパーGTのSUGO戦。今年のSUGO戦は、昨年までとは戦い方が変わってきそうだ。というのも、ランキング上位を狙うチームと軽量組で、ターゲットがハッキリと二分しそうな雰囲気なのだ。
このSUGOの次の第7戦オートポリス戦は、ウエイトハンデ係数がこれまでの半分、つまり、獲得ポイント×1kgのウエイトハンデとなる。ランキング上位のチームは、高低差が大きいオートポリスで重いウエイトを積むことは避けたく、なんとか燃料リストリクター径(燃リス)の縮小のハンデ状態でオートポリスに臨みたい。つまり、このSUGOでなんとか獲得ポイントを50ポイント以上にしたいのが本音だ。
「前回の鈴鹿1000kmいもそうだったけど、中高速コーナーが多いサーキットでは燃リスの影響は少ない。オートポリスも全開区間が少ないので、ウエイトハンデが重いよりも燃リスで迎えられるよう、このSUGOでポイントを稼ぎたい」。GT500のあるエンジニアが語ったこの言葉は、搬入日に聞いたGT500上位チームの総意とも言えるコメントだった。
SUGOはコース幅が狭く、1周の距離が短く71周と周回数が多いため、GT300を抜く/引っかかるタイミングも多く、接触やコースオフ、アクシデントが起きやすい。そのため、ドライバーの経験やオーバーテイクのスキルの影響が大きいサーキットだ。レースではセーフティカーが導入されることも多く、展開が大きく変わりやすい。これまで何度も波乱が起きてきただけに、今週末も展開は読みづらい。
ホンダ陣営は、このSUGOでなんとか一矢報いたいところだ。ウエイトハンデが軽いチームが多く、ミッドシップのアドバンテージであるコーナリング速度を活かすのはこのSUGOが最大のチャンス。“SUGOマイスター”のひとりと言えるドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTの小暮卓史も、「コースもNSXに合っているし、僕自身も得意のSUGO。今シーズンで一番のチャンスだと思っています」と明言する。道上龍監督も「これまでNSXは結果が良くないですけど、このSUGOはチャンスですよね。期待して頂いても大丈夫だと思っています」と今週末への抱負を語る。ドラゴを始め、ARTA NSX CONCEPT-GT、RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、KEIHIN NSX CONCEPT-GTは今回の本命の一角と言っていいだろう。
対抗はレクサスか。前回の鈴鹿1000km、そしてこのSUGOでの7月の事前公式テストの様子から、レクサス陣営のウエイトハンデ軽めのクルマ、ENEOS SUSTINA RC F、DENSO KOBELCO SARD RC F、WedsSport ADVAN RC Fが上位の候補になる。
7月の事前テストでは1日目の総合でレクサスが1-2-3、2日目はトップ4を独占と、SUGOとの相性の良さ、パフォーマンスの良さを見せた。斜に構えた関係者からは「軽かっただけでしょ」、「リストリクター径が大きかったんじゃない?」との声も聞こえるが、鈴鹿1000kmで1位、2位、4位を獲得したように、エンジンパフォーマンス、そしてタイヤとのマッチングの良さは確実に上昇気配。その中でもWedsSportは前回の勢い+今回ウエイトハンデも軽く、大穴どころか有力候補の一角と言える可能性を秘める。そのWedsSportの坂東正敬監督が展望を語る。
「みんな(優勝を)狙っていると思いますけど、もちろん狙っていますよ。ウチのチームにとっても今回が一番のチャンスだと思っています。僕と関口(雄飛)がGT300で07年に勝ったのもこのSUGO。前回の鈴鹿の流れからもヨコハマタイヤのパフォーマンスも上がってきていますし、今回はそれを僕らがどうやって活かせるか。脇阪寿一も富士、鈴鹿のレースでのパフォーマンスがだいぶ上がってきているので、彼のモチベーション的にも期待できる。SUGOはRC Fが昨年のレースも勝っているし、事前のテストでもパフォーマンスが良かったし、今回はレクサス陣営内での戦いになると思います。ウチは今季はこれまで全戦でポイント稼いでいるし、順位もどんどん上がっている。ウエイトがそんなに重くないところでもあるので今回は表彰台とは言わず、勝ちを狙いに行くレースをしたいと思っています」
一方、ランキング上位で受けて立つ側のGT-Rは、今回はランク上位のカルソニック IMPUL GT-R、MOTUL AUTECH GT-Rはウエイトハンデ的に苦しい展開。その分、D'station ADVAN GT-R、S Road MOLA GT-Rが上位との差をどこまで縮めるかがポイントになる。小暮と並びSUGOマイスターと言える本山哲が述べる。
「テストの時は気温が暑すぎてタイヤとのマッチングがイマイチだったけど、今回は涼しいので、走って見てからだけど良い方向でマッチすると思う。燃リスで絞られているけどクルマは軽いので、ポテンシャルはある。SUGOは得意なサーキット。チャンピオンシップを考えると表彰台圏内ゴールしたい」
今回のGT-R、レクサスはチャンピオンシップを見据えて、メーカー同士内のポジション争いが重要になる。予選でそれそれの陣営内の順位がどうなるかが、まずは最初の目安となる。
GT300のSUGOは、今回はマザーシャシー勢が大本命と言って間違いないだろう。コーナリングスピードが高いマザーシャシー勢はこのSUGOとの相性はバッチリ。事前テストでもシンティアム・アップル・ロータスが連日トップで、初日の2番手はVivaC 86 MC。このSUGOでどのマザーシャシー勢が初優勝を飾るのかが見どころになる。VivaCの土屋武士も、「これまではサーキットに来るまでで消耗していた。今回はリラックスしてレースに臨める。鈴鹿までのトラブルの原因も対処してきたので、普通に走れば結果が出ると思っています」と今週末への期待を語る。
GT300のチャンピオンシップに目を移すと、GAINER TANAX GT-Rが31ポイント差で2番手のB-MAX NDDP GT-Rを引き離しており、その差は大きい。だが、B-MAX GT-Rの星野一樹が「崖っぷちです。本当にここが正念場。ここで大量得点して(GAINER GT-Rとの)差を詰めないとチャンピオンシップが終わってしまう。ウエイトが重いですけど優勝するつもりで来ていますし、それくらいの結果を出さないといけないと思っています」と、背水の陣で臨むように、今回のGT300はマザーシャシー勢、B-MAX GT-Rの動向がラスト2戦の流れを決めることになる。