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tofubeatsが幅広い音楽ジャンルを横断する理由「自分が変化するのを見て、自分自身が楽しい」

2015年09月17日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

tofubeats

 tofubeatsが、9月16日にメジャー2ndアルバム『POSITIVE』をリリースした。Ami(Dream/E-girls)、岸田繁(くるり)、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)、小室哲哉、KREVA、Skylar Spence、玉城ティナら豪華ゲストを迎えて制作された同作は、全体を通してポップな仕上がりとなっている。今回リアルサウンドでは、tofubeats本人にインタビューを行い、アルバムの制作意図やゲスト陣のブッキング理由、音楽活動を続けるなかで様々なジャンルを作るワケについて、じっくり話を訊いた。


・「口に出すことで、実際にポジティブな方向に物事が転がっていく」


――アルバムの前段としてリリースされていた『STAKEHOLDER』は、前回の取材でも「いつものシングル表題曲とは違う形を、自分の作品として出した」(参考:http://realsound.jp/2015/03/post-2849.html)と話していたように、少し捻りを加えたアウトプットでした。ですが今作は『POSITIVE』というタイトルまで付いて、ど真ん中ストレートを投げ込んできている印象です。


tofubeats:そもそも『POSITIVE』というアルバムを出す前提で『STAKEHOLDER』があったのが大きいですね。あそこで毒や怨念のようなものがちゃんと抜けてくれたから、こういうアルバムが生まれたのかなと。あれを出したことで、自分でボーカルを取るような重めの曲は入れなくていいかという気分になったし、ほかに回そうと思えてきた。自分でも結構驚いているんですよ。


――制作のきっかけがレーベルスタッフさんからの「tofuくん、もっとポジティブになりなよ」という一言だったことも大きいのでしょうか?


tofubeats:それもありますし、言葉の力って本当にすごくて、何があっても「まぁ、ポジティブだからね」ってまとめることができてしまうし、口に出すことで実際にポジティブな方向に物事が転がっていくのか、という学びがありました。


――言霊みたいなものですね。そういえば、以前にtofubeatsさんがこの方向へ向かうことをtomadさんが予見していたみたいで。


tofubeats:そういえば書いてましたね。あの人本当怖いなぁ(笑)。


――今回のアルバムを語るにあたって、肝となるのがリードトラック「POSITIVE feat.Dream Ami」だと思うのですが、この曲はどういう経緯で作られたのでしょう?


tofubeats:トラック自体は3割完成くらいで放置していて、ゲストが決まっていないままだったのですが、Amiさんがラジオで僕の「ディスコの神様 feat.藤井隆」を聴いてくれていると言ってくれたという情報を人づてに伺って、チームtofubeatsは「もうAmiさん行くっきゃないっしょ!」というテンションになり、お願いした結果として客演いただくことになりました。


――また新たなファン層が開拓できそうな曲と客演アーティストだと感じました。


tofubeats:そうなればいいですけどね。昨日もLDHの前を歩きましたが、特にどうということはなかったです(笑)。まあ、Amiさんも前回の森高千里さんもそうですが、結果的に向こうに合わせもするけど、こちらにも歩み寄っていただいて、お互いのプラスになればいいよねって感じなので、いつもやっていることとそこまで変わらないですね。その人の中にあるけど、別のものを引き出したいと思っているので、ファンの方がAmiさんに期待していることをやってもらいつつ、E-girlsやソロ作とも違う顔を引き出せるように取り組みました。


――なるほど、それはどのゲストにも言える話ですね。あと、順序は違いますが、冒頭の「Dance Dance Dance」で使っているのは『天』(Martine Records10周年イベント)でのMCですか?


tofubeats:アルバム冒頭に関しては、マスタリング直前のライブ音源を使うのが恒例になっていますね。この曲は、そもそも関西ネットの音楽番組『音力-ONCHIKA【おんちか】』(読売テレビ)のオープニングとして作ったもので、番組タイトルが「音楽の力」を略したものなので、歌詞の内容はそのテーマに沿っています。番組でオンエアしているバージョンには、宇都宮マキさんがタイトルを言っている声ネタが入っているのですが、アルバムにはそれを外したものが収録されています。


――冒頭から<何でも出来るよな気がする MUSIC>と、超ポジティブな歌詞だったのでびっくりしました(笑)。


tofubeats:行き過ぎたかなーと思って、Aメロ、Bメロで整備しました。1曲目の歌詞はすごい上手くいったなと。あと、この曲は制作の終盤も終盤でできた曲なのですが、『lost decade』の「SO WHAT!?」にしろ、『First Album』の「20140803」にしろ、完成直前にできる曲って、程よく肩の力が抜けていて良いなって思うんですよね。前者はアルバム完成直前に「『lost decade』が暗すぎる」という幻想にとらわれて作った曲だし、後者は「アルバム宣伝のためにサンプリングで曲作りしよう」と思った曲だったりするので。


――「名曲は最後にできる説」ですね。あと、『T.D.M.(feat. okadada)』と『STAKEHOLDER』については前回のインタビューでも訊いていますが、シングルの時とアレンジが変わっていますね。


tofubeats:『STAKEHOLDER』は「身内で完結させる」というのがテーマでもあったので、マスタリングを大阪のYoriさんというエンジニアさんにお願いしていました。それが、今回はタイト目に、しっかりポップミュージックとしてスピードの揃った仕上がりにしたかったという意図もあり、全曲を田中龍一(MIXER'S LAB)さんにマスタリングしてもらいました。


――するとスピードが上がり、“ポジティブ”な感じになったと。


tofubeats:そうなんですよね。腰の位置が高くなったというか。


――KREVAさんを客演に迎えた「Too Many Girls(feat. KREVA)」は、本人と直接会わないまま、データのやり取りだけで作ったと聞きました。


tofubeats:KREVAさん、レスポンスが滅茶苦茶早かったんです。最初はトラックを聴いて、良ければご一緒していただけるということだったので、「こんな感じで作りました」とサビだけ入れたデモトラックを送ったら、1時間後には歌詞も乗せた声を録って返してくれて。しかも自宅スタジオで、自分でマイクを立てて録音したっぽいのですが、音もかなり綺麗で助かりました。ラップの部分も<FREE Wi-Fi>というワードなど、僕のことを汲み取ってくれてて(笑)。


――2ndヴァ―ス部分は、KREVAさんのtofubeats像だと思うとまた面白いですね。内容は2人でどこまで詰めたんですか?


tofubeats:内容についてのディスカッションはしていなくて、最初の段階で「“KREVAさんが良い感じでモテていて、僕はその画像をただ保存しているだけ”みたいな歌詞にしようと思います」とはお願いしました。


――日本語ラップの客演としてKREVAさんを呼ぶというのは今回のなかでも豪華な取り組みの一つですが、実際にアルバム13曲のうちの1曲として並べてみて、どうハマっていると考えますか。


tofubeats:自分のアルバムに嵌めてみるというより、KREVAさんに関しては「嵌まる力・技術がすごい」と感じました。トラックもそこまで簡単なものでもなかったですから、純粋にすごいなと。


・「近田春夫さんが『考えるヒット』で言ってたことが構造の面でできた」


――6曲目の「Throw Your Laptop On The Fire Feat. 小室哲哉」は、ガバ・トランス・テクノと様々な要素が合わさっていて、tofubeatsさんと小室さんの担当領域がなかなか分かりづらかったです。


tofubeats:実はこの曲、もともと僕がデモを作って返してもらうはずだったのですが、小室さんが先んじて「こんな感じが合うと思うんだよね」とデモを送ってくださって。それをこっちで弄って、okadadaさんのシャウトを入れたことで、さらに面白くなっていったし、僕自身もかなり好きな曲です。なんというか、EDMでもなければエクスペリメンタルでもない、かといってプロディジーみたいな音かと言われたら、それは部分でしかないという“聴いたことない感”がすごいんですよ。


――異形だと思いますよ。5曲のアイディアが1曲に凝縮されている感じというか。


tofubeats:近田春夫さんが『考えるヒット』(週刊文春/文藝春秋)で「後世に残るヒット曲の歌詞には、それまで使われてなかった単語が入っている」と言っているようなことが、構造の面でできたんじゃないかなと。デモはもちろん小室サウンドだったので、どうこちらのフィールドに寄せるかを考えたし、最初は自分が歌う心づもりでいたのですが、結果的にインストになったこと自体も面白かった。


――密度的にもここに歌がどう入るのか? という印象ですが……。


tofubeats:歌も載せられたと思うのですが、そこにokadadaさんのラガボイスが乗るわけですよ(笑)。okadadaさんからあの声素材を貰った時点で面白スイッチが入ってしまって、小室さんも笑ってくれたので良しとしました。小室さんは笑いつつも「緻密にやってくれてありがとう」とレスポンスをくれたので、「把握するスピードが異常に早いな、やっぱすごいな」と思いましたね。


――あと、今回の作品で特徴的だといえるのが、「I know you」のようなピアノ音源を多用する楽曲が増えたことだと思うのですが。


tofubeats:意図的に多くしたわけじゃないから、言われないとわからないんですよ(笑)。でも、その原因はわかっていて、宇多田ヒカルさんの仕事(『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-』に「Time Will Tell (feat. BONNIE PINK)」で参加)をしたとき、ファン目線で担当のディレクターさんに色々と質問攻めをしたんです(笑)。そのなかで「宇多田はこういう音源を使っていたよ」と、『Ivory』の存在を教えてもらって。速攻で『Ivory II Grand Piano』を買って、「これが宇多田ピアノかー!」と弾き倒していたら『別の人間 feat.中納良恵(EGO-WRAPPIN’)』ができた。重たい音ではあるので、あまり多用できないんですけど、その名残がアルバムに残っているのかもしれません。


――そこから地続きだったんですね。


tofubeats:やっぱりその時に興味あるものが音として残るんですよね。自分が曲をストックしないのもそういう理由で。後から聴いたりして、こうやって言われて初めてわかることもあるので。「20140803」みたいに年を言ったりするのもその流れですが、こっちはヒップホップの影響もあります。


――なるほど。「本物のピアノの音でもないのにピアノとされているその感じがなんかいいのかな」なんてツイートもありましたが、生ピアノと打ち込みピアノの差異に悩まされたりはしたのでしょうか。


tofubeats:僕はピアノが弾けないので、打ち込みで作っているうえ、ペダルワークも実際に踏んでいるわけではないんです。強さも後で調整したりして、“偽ピアノの良さ”みたいなものを出しているのですが、そもそも僕らの聴いている音楽のうち、半分以上は生ピアノじゃないと思うわけで。だから「どこからが音源で、どこまでが生音やねん」という面白さもあるし、実際に今回の楽曲では生のピアノに差し替えるという話もありましたけど、“偽ピアノとマジな歌”という組み合わせのほうが、テーマ性として合ってるかなという判断で。


――確かに、あれで生ピアノになってしまうと、tofubeatsらしさは消えてしまう気がします。もともとビートのあまり強い曲ではないですからね。


tofubeats:まあでも、そのうち生ピアノも使えるようになる未来が来るかもしれないですから。だからこそ今そういう組み合わせをやっといたほうが良いというか、この段階で生ピアノを使うのはもったいないかなと(笑)。あとはリズムボックスという“甘え”を排除したかったから。


――それを甘えと取るのはすごいですね。普通は得意な領分で勝負して、専門領域じゃないものに関しては避けてしまいがちですが。


tofubeats:まだ、自分にある伸びしろみたいなものを全く開拓できていないような気がして。メジャーのフィールドでやれているとはいえ、やっぱり自分が変化するのを見て、自分自身が楽しいんです。


――tofubeatsが生ピアノを使う未来は、ぜひどこかで見てみたいです(笑)。続く「Without U feat. Skylar Spence」は、彼が<Carpark Records>に移籍した以降の音に近い作りに聴こえました。


tofubeats:そこは何となく「こうしたいのかな」と思ってデモを送った部分もあります。でも、元々この曲で使っているトラックは『First Album』の時に作っていて、入れたかったけど日本語でサビが乗らないから寝かせていて。歌詞に関してはノーディレクションで通しました。彼からは全く重なってない男気一本のボーカルデータが届いたので、そのあたりはコーラスをこちらで作って、メロダインを掛けて…とリビルドしましたね。この曲は田中さんのマスタリングとすごく相性が良かった。あと、この曲でやりたかったのは、Breakbotの「Fantasy」みたいなことで。あれは本当にサンプリングを使っているけど、こっちはフレーズをしっかり作って、それをサンプリングして、“サンプリングっぽい質感”の曲ができた。手法だけは『STAKEHOLDER』で試していて、その元となった曲が今回成仏してくれたんです。


――毎度ではありますが、過去のデモをしっかり最新作で成仏させているのはなぜでしょう?


tofubeats:基本的にボツにはあまりしたくないタイプで。ワンフレーズだけでも活かしたいし、手間をかけたものはなるべく捨てたくないんですよね。


・「後世に残したいような曲は、ハウスみたいに長く聴けるものがいい」


――アルバム後半は異色のゲストが続きます。8曲目「すてきなメゾン feat.玉城ティナ」で彼女をボーカルに迎えたことについては、玉城さんがモデルとして掲載されている『Martine Book』と何か関係があるのでしょうか?


tofubeats:いや、ブッキングした段階では関連がなかったですね。単純にtomad社長がずっと「好き」って言ってるから興味はあったけど「いくら可愛くても歌が歌えなかったらダメですよ」みたいに生意気な考えだった。ただ、デモを取り寄せたら「上手い」と言うしかないクオリティで(笑)。テイさん(TEI TOWA)関係のエンジニアさんからも「もともと歌手志望で、勘はいいですよ」という話も聞いていたので、正式にオファーをしました。僕の曲にしては転調が多いのですが、それにもガンガンついてきてくれたんです。この人はもっと歌を続ければいいのに、と思いました。


――あと、この曲には大比良瑞希さんがコーラスで入っていますよね。彼女も天性の声を持つボーカリストだと思うのですが。


tofubeats:僕がデモを聴いてびっくりするくらい良いと思った方ですね。勘が良いというか、センスがあって、やりたいことの打点が定まっている、珍しい女性アーティストだと感じています。あと、学があっておしゃれだし、打ち込みも自分でできるという点ではG.RINAさんに似てる。声質も近いところがありますし、僕の中では勝手に“頭の良い女性の声”って分けてるんですけど(笑)。


――ちなみに転調が増えたのはなぜなのでしょう?


tofubeats:そもそもこの曲が難産で『POSITIVE』になったので……。で、スケールの本を買って転調を勉強したりして、3回も転調した結果、一番シンプルな曲になった、という皮肉な話なんです。


――「くりかえしのMUSIC fest.岸田繁(くるり)」は、くるりのシングル「ロックンロール・ハネムーン」でtofubeatsさんがリミックスを手掛けたことが縁となって制作されたのでしょうか。


tofubeats:あれに関しては、岸田さんから突然オファーをいただいて、会ったら会ったで「なんか、全然音楽性はちゃうねんけど、どっか(レイ・)ハラカミ君っぽいねんなぁ」と言われたりして。リミックスの仕事以外でも、『京都音博』にお誘いいただいたり、ダラダラ喋れば喋るほど、この人面白いなあとどんどん思うようになり、今度はご一緒させていただきたいとこちらからお願いしました。BONNIE PINKさんもそうなんですけど、関西の人とやると、異常なくらい朗らかにレコーディングが進むんですよね。岸田さんも「ええ曲や」って言いながら録ってくれたりして、肩の力が一番抜けた曲です。


――この曲は『THE WORLD IS MINE』あたりのくるりを意識しました?


tofubeats:そうですね。「ばらの花」みたいに、一つのモチーフでずっと進行する曲が作りたくて。でもループ自体はトリッキーにしました。面白かったのは、岸田さんが曲を聴いて「めっちゃ関西人っぽい符割りや」と言い出して、2番の歌いだしにある<ドラムマシーン>という歌いだしで爆笑したんです。気になって「何があったんですか?」って聞いたら「めちゃくちゃ関西人が書いた曲っぽいな」と。普通は「ドラムマシーン」ですけど、関西の音だと「ドラムマッシーン」となるんですよね。で、この話には続きがあって、岸田さんが「関西っぽい符割り」を意識するようになった原因って、矢野顕子さんに「ばらの花」の<雨振りの朝で>という歌いだしの「あめ(↑)」という部分を指摘されたかららしいんですよ。「そこが繋がるのかー」とニヤけるくらい面白かったです。


――奇妙な縁ですね(笑)。最後の「I Believe In You」は、<Maltine Records>の10周年本に合わせて書き下ろした曲です。多彩なゲストを招いている今回のアルバムですが、個人的にはこれが一番好きで。


tofubeats:僕もそうですね。断トツ優勝です。この曲に関しては、年に何回かある“使命感”に駆られて制作したもので。作ることは前から決まっていたので、そのために藤井美菜の劇を見にいったりして、自分を高めていました。あと、2015年はFuture Bass周りの盛り上がりがひと段落してたこともあり、よくわからないハウスのレコードーーとくにディスコネタの長尺なやつばかり買っていて。


――歌ナシで進行していくのも、それらのレコードの影響があったりするのでしょうか?


tofubeats:それもありますし、tomad社長が言うような“インストJ-POP”モノって、日本のゲームミュージックみたいな形に寄っていきつつも、「STAKEHOLDER」みたいに、音楽的なエッジが立っているものに収斂していってる気がするんです。あと、後世に残したいような曲は、ハウスみたいに長く聴けるものがいいなって思ったり。それに、Dream Amiさんから入った人が、この曲に着地するって考えただけで面白いです。


――Amiさんのファンが結果的には「I Believe In You」で一番踊っているって、すごく面白いですね。先ほど話してもらった“自分の流行り”でいうと、この曲にはどういうモードを取り入れたのでしょうか。


tofubeats:自分はやっぱりシカゴ・ハウスみたいに角が立ち過ぎていないのがいいし、そういうものだからこそ、輪郭がはっきりするみたいなところってあるじゃないですか。すごいわかりやすいモチーフじゃないからこそ、いいベースが1個増えたら嬉しいし、ハイハットが1個増えると嬉しい、みたいな。そういう気づきがあるテクノがやっぱり好きなので、自然と曲の展開には気を使ってしまいます。


――自分の流行をそうやって閉じ込め続けているわけですが、今のマイブームが次の作品につながることも大いにあると思います。現状を踏まえて、どういうものを作っていきそうでしょうか。


tofubeats:今回に関しては、多分サブスクリプションサービスのスタートも影響していて。これまではCDという枠の中でアルバムを作るときに、その容量いっぱいを使わないと嫌だったんですが、今に関しては、プレイリストや単曲ベースになっていくものが増えてきているし、そのなかでアルバム単体として価値のあるものがもっと生まれてくると思うんです。だからこそ無駄をなくそうと思ったし、迷ったら入れない選択肢を取ってきました。『Apple Music』が始まって、僕の身の回りにいる人間がこぞってブライアン・イーノを聴いているという面白いデータがあるのですが、その感覚って、何か僕はすごくわかるんですよ。BGMっぽいの掛けてしまいがちというか。


――また、初回限定盤のDisc2には、MVをすべて収録したDVDが封入されています。


tofubeats:良いビデオもいっぱいあるんですが、例えば「おしえて検索 feat.の子(神聖かまってちゃん)」は「店舗で流す映像だから、サクッと作って」と言われてiPhoneで撮ったやつなのに、いつの間にかMV扱いになってるんです。「Don't Stop The Music feat.森高千里」のあとにそれが来るから、F級感がすごくて(笑)。


――F級って(笑)。


tofubeats:「Her Favorite feat.okadada」も、D級香港映画ですから。いつもB面曲のMVは毎回予算を提示されて、僕がその範疇で作っているんですよ。だからA面曲とB面曲で予算のギャップ激しすぎるやろと(笑)。これまでは「おしえて検索 feat.の子(神聖かまってちゃん)」、「Her Favorite feat.okadada」、「20140803」「衣替え feat.BONNIE PINK」と来て、次は「I Believe In You」になる予定です。「20140803」くらいになると、田向潤(きゃりーぱみゅぱみゅなどのMVを手掛ける監督)さんから「君、これから映像やった方がいいよ」って褒められているという進化もあって。だから僕が映像の撮り方をどんどんわかってくるという過程を、このDVDでは楽しめると思います。


(取材・文=中村拓海)