アイドルファンの間では「おまいつ」という独特の用語がある。「おまえいつもいるな」の略で、どの公演にも参加する常連追っかけファンのことだ。コンサート会場では、そうした熱心なファンが集まり「おまいつ軍団」が形成されていることも珍しくない。
しかし、アイドルの応援にもお金がかかる。チケット代のほか、地方遠征の交通費も必要だ。「おまいつ」はどうやって費用を工面しているのだろうか。9月12日、2ちゃんねるのモー娘。板に立てられた「世の中は低賃金で疲弊してるのになんでお前らハロプロ追っかける余裕があるの?」というスレッドでは、アイドルファンが議論を交わしていた。
年収400万円でも「独身で恋人いなければ貴族」
目立つのが「ガチの現場ヲタは月10万くらい使ってる」という書き込みだ。やはり遠征費用がかさむようで、「札幌、福岡ならLCC(格安航空会社)のセール使っても1万はかかるからな。混んでる時期なら6万」という声もあった。
経済状況は人によってまちまちだが、月収20万円で生活費を10万円に抑えるという人や、親と同居しているので「家賃不要」という人もいる。共通しているのは、いずれも独身という点だ。
「例え年400万しか貰ってなくても、独身で恋人もいないとマジで貴族だからな」
中には、すでに「メンバーは扶養家族」という感覚に到達しており、「同級生は家族養っているけど俺はハロ養っているんで」という書き込みも寄せられていた。
アイドルに大量の資金を投入するのは、何も男性だけではない。都内IT企業に勤務するシズカさん(26歳 仮名)も2~3年前に秋葉原の地下アイドルにハマっていた時期がある。キャリコネニュースの取材に対し、当時の状況をこう語った。
「イベントやライブには、年60回は行っていました。土日はそれこそイベントをハシゴですよ。推しメンの生誕祭のときには、会場で配るサイリウムも買っていましたし、なんだかんだで年間で100万円は使っていましたね」
「私が応援しないと推しメンが出世できない!」
当時の年収は400万円ほど。自炊で食費を削り、ボーナスも活動費に充てることで100万円を捻出していた。会社から月3万円の家賃補助が出るのも助かったという。遠征時もヲタ仲間の車に同乗して交通費を節約。少しでも多くの現場に参加することに心血を注いでいた。
興味深いのが、シズカさんが応援していたグループの特殊なシステムだ。秋葉原のアイドルカフェが活動拠点となっており、ファンはそこで飲食やグッズ購入などでお金を使ってポイントを貯める。そして、そのポイントを推しメンに投票することができるという仕組みだ。
獲得票数に応じてメンバーのメディア露出回数が変わるので、ファンとしても「私が応援しないと推しメンが出世できない!」という気持ちになるのだという。かなりエグいシステムだが、シズカさんは、
「でも何度も通って握手すると、メンバーも私のことを覚えて認知してくれるんです。お金はかかりますが、この喜びはやっぱりプライスレスですね」
と語っていた。
ファンの消費が後押し! 依然拡大傾向にあるアイドル市場
ちなみに、アイドルファンは他のオタク趣味と比較しても、消費額が多い傾向がある。矢野経済研究所の調査によると、アニメやゲームといった分野ごとに見た場合、1人あたりの消費額が最も多いのがアイドルオタクで、年間平均約9万5000円。2位の鉄道模型(4万7000円)や3位のアダルトゲーム(4万2000円)の2倍以上となっている。
アイドルはコンサートのチケットだけでなくCD・DVDやグッズ、写真集など消費対象が多岐にわたる。生身の人間を対象とするために、メンバーに擬似恋愛的な感情を抱くファンもおり、それが一層消費に拍車をかけているのではないかと思われる。
同調査によると、2013年度のアイドル市場は前年度比19.9%増の863億円で、依然として拡大傾向にあるようだ。前出のモー娘。板のスレッドには「おまえらが使った金でアイドル文化を育てたんだ。もっと世界に広げていこうや」という投稿も寄せられていた。
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