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04 Limited Sazabys、赤坂BLITZワンマンレポ 多様な音楽ファンの心をつかむバンド性とは

2015年09月14日 14:21  リアルサウンド

リアルサウンド

04 Limited Sazabys【写真=Viola Kam(V'z Twinkle)】

 04 Limited Sazabysが9月8日、赤坂BLITZで『CAVU tour 2015~追加公演~』を行った。本公演は、4月1日にリリースしたメジャー1stフルアルバム『CAVU』を携えて行われた全国ツアー『CAVU tour 2015』の追加公演だ。


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 オープニングSEが鳴ると同時に前方に人が一斉に詰め寄り、満員のフロアの期待値は最高潮に達する。1曲目は、彼らの最大の強みともいえるGEN(Bass/Vocal)の歌声から始まる「Buster call」。ピンスポットがあてられたGENののびやかなボーカルがゆっくりとしたギターのアルペジオとともに空間全体に広がると、強烈なドラミングを合図にメロディック・パンク色の強いサウンドが鳴り響く。フロアでは、その瞬間を待ちかまえていたキッズたちによるリフトからのダイブやモッシュの渦が巻き起こり、開演とともに盛り上がりは絶頂をむかえた。


 会場をひとつにするハンドクラップの中で始まった「days」、ソリッドな照明がバンドの色気を引き立てたキラーチューン「fiction」と続く。「オイ! オイ!」というコールが沸き起こる間奏では、GENはもちろん、HIROKAZ(Guitar)、RYU-TA(Guitar/Chorus)、KOUHEI(Drum/Chorus)の思い思いのプレイが披露された。筆者が彼らのライブを以前観たのは、約1年半ほど前の横浜でのライブだった。メロコア的なやんちゃさの中にしっかりとバンドのグルーヴが意識されたプレイをその際に体感したが、今回のライブでもそのスタイルは健在だ。暴れても、エモーショナルになっても、演奏のぶれがない。会場の鳴りも相まって、今回は、サウンド面でもよりライブを楽しむことができたのではないだろうか。


 途中のMCでは「ライブハウス最高! 音最高じゃない? 女子は子宮で俺のLOWを受けとめて」とGENによるお約束の下ネタが飛び出したかと思いきや、赤坂BLITZへの思いを熱く語るシーンも。この会場は、彼らが尊敬するHi-STANDARDが『MAKING THE ROAD』リリースツアーのファイナルを行った場であり、また、彼らがTHE ORAL CIGARETTES、Brian the Sun、HAPPYらとともに全国をまわり、シーンに名を広めるきっかけにもなった『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2015』ファイナル公演を行った場でもある。憧れの人が立ち、そして仲間とともに立った舞台に、今自分たちのワンマンライブで立つということに素直に感動している姿がとても印象的だった。2008年に名古屋で結成した彼らのバンドとしてのキャリアは長く、きっとこの日の訪れを待ち望んでいたにちがいない。


 インディーズ時代の楽曲なども織りまぜながら、まさに“青春”という言葉がしっくりくるライブが展開されていく中、仮タイトル「残暑」と名付けられた新曲がサプライズで披露された。これは、10月28日にリリースするメジャー1stシングル『TOY』に収録予定の曲で、夏の終わりとともに会えなくなる寂しさを日本語詞で歌った、哀愁漂うナンバーだ。彼らの楽曲は、恋心をはじめとした“せつなさ”を表現するものが多い。今回のライブも「世界一甘い曲を歌わせてください」というMCから始まった「milk」や、<この時間が永遠に続けばいい>というロマンチックな歌詞世界による「hello」などが披露され、感謝と別れの思いが込められた「Terminal」から「midnight cruising」を経て、「一番かっこいい曲」として「monolith」で幕を閉じた。


 「本当に仲間やお客さんに恵まれている。パンクキッズもサブカル女子も……人種のサラダボウルみたいな客層」とGENがMCで表現したように、彼らはさまざまな音楽ファンの心をつかむことに成功している。ロックやパンクが持つ熱量が多くのライブキッズを魅了し、せつなさを内包した歌声で届けられる直球の歌詞とキャッチーな楽曲が、ロック好きなリスナーの心に響く。そんなロックファン全方位に刺さるバンド性を持ち合わせた稀有な存在なのだ。


 「(自分たちの音楽が)弱い人間が負けたとき、ダメなときの逃げ場になるといい。みなさんの未来に光が射しますように。言葉に力がありますように」ーーGENはアンコール「swim」の前にこう述べた。11月からは初となるワンマンでの全国ツアーがはじまる。ここから04 Limited Sazabysは、ジャンルの枠におさまることなく、その熱量と言葉の力をより多くの音楽ファンに届けていくことになるだろう。(久蔵千恵)