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スーパーフォーミュラ第5戦決勝:中嶋一貴と石浦宏明が振り返る僅差のバトル

2015年09月14日 10:41  AUTOSPORT web

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レース終了後、ガッチリと手を握り合った中嶋一貴と石浦宏明
スーパーフォーミュラ第5戦オートポリスでは、予選で石浦宏明(P.MU/cerumo・INGING)が他を寄せ付けない圧倒的なタイムでポールポジションを獲得。2番手に小林可夢偉(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)、3番手に中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM’S)が続いた。予選は石浦がコンマ4秒弱の差でPPを奪ったが、決勝レースは最後まで僅差の戦いが続くこととなった。

 このレースの一番のキーポイントになったのは、スタートだった。表彰台に登った一貴、石浦、可夢偉の3人も、この点では口を揃えた。そのスタートで先行してレースの主導権を奪ったのが、優勝を果たした一貴だった。

 先行された石浦と可夢偉だったが、よりダメージが大きかったのは可夢偉の方だった。可夢偉はペースに勝る一貴と石浦を攻略して優勝するため、スタート時の燃料を少なめにしてペースを上げる戦略を採用していた。そのため、トップ3では最初に動く形で29周目にピットへ向かい、4輪交換を実施する。

 ただ、ピットストップを引っ張る作戦を採用していたアンドレ・ロッテラーの後方でレースに復帰することになり、4輪交換の威力を発揮しきれぬまま周回を重ねることに。最終的にはトップ2とは8秒離れてのチェッカーとなった。

 一方、先に動いた可夢偉のタイムも警戒していた一貴と石浦も、可夢偉が足止めされていることを確認してからは、それぞれの動きを注視して走り続ける展開となった。

「ちょっと石浦選手の方が速かったですが、近いペースでは走れていました。ただ、こっちが先に動いたら(ピット戦略で)逆のことをされるだろうなと分かっていたので、引っ張れるところまで引っ張るしかなかった」と一貴。

 また石浦も「(可夢偉がピットインして)前がクリアになった状態でプッシュしたらコンマ1~2秒詰められていたので、なるべく近づいてからピットへ入った方が、何か起きるかなという期待もあった。プッシュしてなるべく近づいて、ピットインのタイミングを待っていたという感じです」とこの状況を振り返る。

 この結果、ふたりは燃料の限界近くまでピットを引っ張ることになり、最終的には45周目に同時ピットイン。ただ、一貴がタイヤ無交換でピットアウトしたのに対し、石浦はあまり例のないフロント2輪交換を実施した。

 一貴は「(石浦が交換したタイヤが)フロントだけだったので、いけるかなと思ったのですが、意外と速かったのでびっくりしました」と印象を話したが、この決断は石浦自身が下したものだった。

「オートポリスの上りセクションでは(フロントタイヤに)荷重がない状態でハンドルを切っているので、アンダーステア次第でタイムが落ちていくんです。もちろん前後とも落ちているのですが、フロントを変えたらボトムスピードが上がって速くなるかなとちょっと安易に考えてしまった部分もあった」と石浦。「プッシュしたらかなりのオーバーステアで困りましたが、上りのセクションだけ曲がるところを頑張っていたら、だんだんとタイムが上がっていった」と追い上げを開始する。

「(一貴に)近づきはしたのですが、オーバーステアなので無理はできないんですよね。それでも、ミスしてくれたらと思い、オーバーテイクシステム(OTS)を使えるだけ使って少しでもプレッシャーをかけようかなという感覚でした」(石浦)

 こうして、ピットストップ後も4秒ほどあった差を、残り2周の段階でコンマ7秒まで詰めた石浦だったが、詰め寄られた一貴もペースアップを果たして逃げていく。

「(OTSを使ったので)コンマ3秒くらいは変わりますし、(ピット後)最初の3周くらいは来なかったので安全に走っていた部分もあったのですが、途中から急に(石浦が)ペースアップしてきたので、自分でもがんばりました」と一貴。

 これにより、最終的には一貴が再び1秒弱まで差を開いてトップでチェッカーを受けた。最後まで目の離せない勝負を繰り広げた一貴と石浦だったが、パルクフェルメとなったホームストレート上にマシンを止めたふたりは、ガッチリと手を握り合った。