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SCANDALがワールドツアーで得たものーーシングル『Sisters』で発揮された新たな“バンド力”とは?

2015年09月11日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

SCANDAL

 2015年前半を初のワールドツアーに費やしたSCANDALが、7月発売の『Stamp!』に続くニューシングル『Sisters』を9月9日にリリースした。「SCANDALの今年一番の勝負作!歌って踊れるガールズアンセム!」とのキャッチコピーが印象的なこの曲は、メンバーのRINA(Dr,Vo)が作詞、MAMI(G,Vo)が作曲を手掛けたミディアムテンポのロックナンバー。HARUNA(Vo,G)がかき鳴らすアコースティックギターとの相性も抜群で、世界各国を旅してきた今の彼女たちだからこそ作れる、大きなノリを持つ1曲だ。


(関連:SCANDALはなぜガールズバンドの頂点に? 音楽を楽しむ姿勢に徹した「ワールドツアー2015」レポ


 SCANDALは2014年4月発売の18thシングル『Departure』で初めて、メンバーが作詞・作曲を手掛けた楽曲のみで構成されたシングルを発表した。その後も20thシングル『Image』(同年11月発売)でMAMI、TOMOMI(B,Vo)がそれぞれ作詞・作曲した楽曲を提供しており、その流れを汲みリリースとなった6thアルバム、『HELLO WORLD』(同年12月発売)ではメンバーの自作曲が数多く収録され、新たな表現の境地にたどり着いた。


 作曲能力はデビュー時から数々の作家たちやアレンジャーたちが手掛ける楽曲をプレイしてきたことで、自然と磨かれていったはずだ。純粋に「いい曲」にたくさん触れているわけだから、ある意味英才教育と言えるだろう。その結果、作家の書き下ろし曲に引けを取らない4人4様のオリジナル曲が続々生まれ、シングルの表題曲として発表する機会も増えているのだ。


 またバンドとしての技術、実力もデビュー時から格段に成長していることは、古くから観ているファンならおわかりいただけるだろう。シングル『DOLL』でメジャーデビューした2008年当時、彼女たちのパフォーマンスを観る機会があったが、しっかり演奏しているもののまだたどたどしい箇所があったのも事実。しかしそれから数年後の2012年春、SCANDALは当時結成最速で日本武道館で単独ライブを行った。この日観た彼女たちのプレイは、もはや誰にも文句を言わせないほどしっかりとした、説得力のあるものだった。そして、この4人でなければ出せないであろう独特なノリ、グルーヴ感をちゃんと感じられたのも収穫だった。


 そしてSCANDALは今年5月末までワールドツアー『HELLO WORLD TOUR 2015』を行い、9カ国10都市で2万人を動員。この本格的な海外ツアーで受けた刺激や経験は計り知れないものがあり、プレイヤー、そしてバンドの一員としての成長はもちろんのこと、作詞作曲のスキルやライブパフォーマンスにも多大な影響を与えた。その結果、多くの個性を着々と身に付け、SCANDALは唯一無二のガールズバンドへと成長し、シーンのトップへと君臨した。そりゃそうだろう、こんなにも親しみやすいメロディを持つロックナンバーをカッコよく、かつキュートに演奏するバンド、今でこそ増えてきているものの、2010年前後のメジャーシーンにはほとんどいなかったのだから。


 さて、話題をニューシングルに移そう。表題曲の「Sisters」はいきなり冒頭のオートチューン+ラジオボイスでで時代を切り取りつつ、以降はSCANDALらしいノリと世界観が存分に発揮されている。キャッチーなメロディラインと耳に残る印象的なギターフレーズ、そしてこのバンドならではのグルーヴ感が絶妙に絡み合った表題曲は、来年2016年で結成10周年を迎えるという今だからこそ生まれたものではないだろうか。RINAによるで表現された「上手く生き抜くのだ」というフレーズも女性ならではの視点で書かれたもので、メンバーはもちろんのこと、同世代には強い共感を呼ぶのではないだろうか。


 そしてカップリングの「LIFE IS A JOURNEY」はTOMOMIの作詞・作曲によるナンバーで、ボーカルも彼女が担当している。SCANDALの面白いところは、力強い声を持つHARUNAとキュートでガーリーなTOMOMIという好対照なボーカリストを要するところ(曲によってはMAMI、RINAも歌うこともある)。大陸的なノリの「Sisters」はHARUNAのような声にピッタリの曲だが、さすが自分が書いた楽曲だけあって「LIFE IS A JOURNEY」でのTOMOMIのボーカルパフォーマンスは、キー設定含めて絶妙なバランス感だ。アレンジにしてもカップリングならではの遊び心満載で、ストレートなシングル表題曲とは異なる「一筋縄でいかない感じ」はさすがの一言。そう、今のSCANDALはリスナーとしても、プレイヤーとしてもこんなに楽しめる曲を生み出せるまでに成長しているのだ。


 10月17日からは今春のワールドツアーの模様を追ったドキュメンタリー映画「SCANDAL "Documentary film『HELLO WORLD』"」の公開も決まり、12月から来年1月にかけては計4万人を動員予定の初の東名阪アリーナツアー「SCANDAL ARENA TOUR 2015-2016『PERFECT WORLD』」も控えているSCANDAL。来年8月の結成10周年を目前に、彼女たちはより高みを目指してその個性を磨いていくことだろう。(西廣智一)